貧困と児童虐待について2

児童虐待の相談対応件数は、2015年には10万件を超えました。この相談対応件数というのは、児童相談所が虐待通報に対して、対応し書類が残ったものが一件とカウントされます(よってイタズラ電話などは含まれません)。すなわち、毎年10万件の虐待相談に関連する書類が児童相談所内で作成されているということになります。

ただし、虐待が本当に増えているのかどうかについては注意が必要です。というのも、次の図にあるように、虐待によって亡くなってしまった子どもの数は2006〜2008年頃から下落しているからです。


よって、この虐待相談対応件数の増加は、私たちが児童虐待により多くの関心を割くようになった結果、通報件数が増え、子どもが最悪のケース(死亡)から免れることできたことが、数の下落につながったのかもしれません。

また、児童虐待について話をする際に、私たちは往々にして虐待をする親を非難してしまいがちです。確かに子どもを虐待するのは悪いことなのですが、現場に行く機会が増えて私が感じるようになったことは、何らかの事情で辛い思いを抱えている親が多いということです。

次の表は、虐待等から逃れるために児童相談所で一時保護された子どもの親の状況をまとめたものです。親御さん達も何らかの生きにくさを抱えているケースが多い現実を鑑みると、虐待を受けている子どもの支援とは、子ども本人を親から守るだけではなく、親も含めた子どもの家庭を支援することに他ならないと、私は感じています。

五常・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役社長慎 泰俊
1981年東京生まれ。 朝鮮大学校政治経済学部法律学科卒業。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。モルガン・スタンレー・キャピタル、ユニゾン・キャピタルを経て、2014年7月に五常・アンド・カンパニー設立。仕事の傍ら、2007年にNPO法人Living in Peaceを設立し、代表理事を務める。著書に「働きながら、社会を変える。~ビジネスパーソン『子どもの貧困』に 挑む」(英治出版)、「ソーシャルファイナンス革命 ~世界を変えるお金の集め方」(技術評論社)など。
1981年東京生まれ。 朝鮮大学校政治経済学部法律学科卒業。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。モルガン・スタンレー・キャピタル、ユニゾン・キャピタルを経て、2014年7月に五常・アンド・カンパニー設立。仕事の傍ら、2007年にNPO法人Living in Peaceを設立し、代表理事を務める。著書に「働きながら、社会を変える。~ビジネスパーソン『子どもの貧困』に 挑む」(英治出版)、「ソーシャルファイナンス革命 ~世界を変えるお金の集め方」(技術評論社)など。
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