人口問題を取り上げる(2)-出生率(合計特殊出生率)向上の取組について

前述の出生率(合計特殊出生率)を改善しようとした国々の中で、フランス、スウェーデンの対策は、日本でよく紹介されている。いずれも、現状の日本よりも幅広く、深い対策が取られている。

少子化対策で成功しているフランスやスウェーデンで、少子化対策が有効だった理由は次のようなものである。
1.子は成人したら親から独立して生活すると言う習慣があること
2.仕事は女性の自己実現であると言う意識
3.恋愛感情を重視する意識を持っている
4.子育ては成人したら完了と言う認識
5.婚外子の増加

この中で、婚外子の増加の現状を見てみよう。グラフ上で、フランスは子供全体に対する婚外子の割合は59.7%、スウェーデンは54.9%である。日本は2.3%だ。日本では子供を作ることは結婚を前提としていることがわかる。多くの国で、1970年時点では、婚外子は少なかったが、1995年、2016年と大幅に割合が上がっている。

さらに、日米の比較においても、太平洋戦争以前、婚外子割合は日米ともに同じ様に低かったが、その後次第にアメリカの婚外子割合は増加し、40%程度になったのに対して、日本では変化はない。この様な婚外子割合は、善悪の問題ではなく、国ごとの文化的な問題であるが、少子化に対して大きな影響を与えていることは確かである。

山崎史郎※は、出生率改善の3つの柱として、こども保険、結婚紹介、不妊治療をあげているが、その中で、野心的なこども保険の創設を提案している。特に育児休業、児童手当などの大幅な拡充を主張する。例えば、育児休業を1年以内ではなく、小学校を卒業するまで断続的に取得できること、就業していない親にも、最低保証として200万円の手当を出すこと、短時間勤務に対して賃金が支払われることなどだ。さらには、こどもが病気の場合は育休手当が支払われる。児童手当は現状の中学校まででなく、高校卒業までとして、その額も、第一子1万円、第二子3万円、第三子6万円と大幅に引き上げる。これらの政策のために、現状でのこども関連支出3.4兆円を10.2兆円に大幅に増額することを提案している。財源を消費税で賄うとすれば、2~3%の引き上げが必要となる。

確かに、慣習が異なる日本で(婚外子が少ないこと)、フランスやスウェーデンと同じように成功するためには、このような思い切った対策が必要かもしれない。しかし、この様な試みが成功することは難しいだろう。少子化対策の残された方法は移民政策になる。

※山崎史郎;『人口戦略法案』

公益財団法人橋本財団 理事長、医学博士橋本 俊明
1973年岡山大学医学部卒業。公益財団法人橋本財団 理事長。社会福祉法人敬友会 理事長。特定医療法人自由会 理事長。専門は、高齢者の住まい、高齢者ケア、老年医療問題など。その他、独自の視点で幅広く社会問題を探る。
1973年岡山大学医学部卒業。公益財団法人橋本財団 理事長。社会福祉法人敬友会 理事長。特定医療法人自由会 理事長。専門は、高齢者の住まい、高齢者ケア、老年医療問題など。その他、独自の視点で幅広く社会問題を探る。
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