岡山高等学院では、2018年から橋本財団の助成を受け、不登校・ひきこもり、発達障害等で生活や進路に悩みを抱えている本人や家族が、スタッフと一緒に解決のヒントを見つける相談会、「百色の未来」相談事業を行ってきました。
2020年も、昨年度、一昨年度と同様に、相談活動が実施できるものと思っていましたが、コロナの影響で、対面での相談活動を制限せざるをえませんでした。まずは、出来るだけ密を避けるため、参加人数の多くなる講演活動と同時開催の相談会を中止としました。相談の依頼そのものは、電話やメールによる申し込みがあり、個別相談を継続して行うことにしました。また、外部の会場使用の制限もあったため、岡山高等学院を主会場に開催し、開催日数を減らしたり、広報活動も縮小したりしました。
相談を必要としている家族や当事者に少しでも寄り添えることはないかと、知恵をしぼっていたところ、ありがたいことに二寺の住職から、場所の提供の申し出をいただきました。うれしい限りでした。実際に、お寺での相談は、普段より落ち着いてお話ができているように感じていて、今後も利用させてもらえることを願っています。
このように、厳しい条件の中での開催となった2020年。新規の相談件数はこれまでの年とほぼ変わりませんが、相談の内容は、昨年度までと比べ、変化が認められます。その一つ目が、継続相談の増加です。もともと百色の未来相談事業は、小・中・高校生年代を中心に気軽に話せ、次へのステップを見つけることを目的とした初期相談という主旨で始まったものでした。それが、だんだんと相談活動を継続していくうちに、20代以降の相談も増えてきたのです。いわゆる「ひきこもり」と言われる人たちや、その周辺に属すると考えられる若者の相談が増えてきたことによると考えられます。彼らや家族の願いは社会的自立にありますが、その実現までには相当の時間が必要となります。そして、相談に来てくださる家族は、他の機関での相談経験もある人たちです。継続した支援を行ってくれる相談機関が見つからないということで、ベストではないものの、ベターな選択肢として百色の相談会が選ばれています。ただし、百色の相談会で長期のひきこもりの支援がどこまでできるのかは分かりません。本人・保護者に安心してつなげる場所(相談機関)が確保されるまでは、できる限りのことは行っていきたいと考えています。ひきこもり家族会の調査によると、3割以上の家族が、相談の中断から、長期の閉じこもり状態に陥っているという報告がなされています。今後の日本の状況を考えると、働きたくても働けない若者の未来に少しでも光を当て、担い手として活躍してもらえるようになってもらわなければなりません。
二つ目は、高等学校に入学してから、不登校になって進路変更を考える事例が増えていることです。中学校までは、何とか登校出来ていたので、このまま進んでくれるのではないかと思っていた矢先に高校を休み始めて、単位が取れず、退学や転入学など、今後のことについて相談を申し込まれる事例です。会って、お話をお聞きしていると、小学校や、中学校の時から、人間関係や学習面で、本人なりに程度の差はあれ、なんらかの困り感を感じていた事実が見つかることは少なくありません。必死で周囲に合わせる努力をし、頑張ってきた結果、とうとうエネルギーが尽きかけている子ども・若者、困り感を感じて何らかの支援を必要としながら、一人で悩み続けている子ども・若者がいることを忘れないようにしなければいけません。早い段階で、相談につながることができる仕組みを整える必要性を感じています。
三つ目が、専門とする関係機関や相談支援者にかかっているにも関わらず、相談に来る家族が増えていることです。実は、当学院だけでなく、保護者が経験を活かして、当事者家族の支援をしているNPO法人でも、専門機関からの相談が多いそうです。それだけでなく、専門機関から担当者の研修や視察の依頼がよく来ているとのこと。行政や民間を問わず、相談支援機関が増えてきていることは間違いないのですが、資格や専門性が担保されていない状況があるのではないでしょうか。このあたりの実状も踏まえながら、相談機関と二人三脚で支援を進めていくことができるように努力していきたいと思います。
四つ目は、自宅訪問を取り入れたことです。なかなか外に出ることができない当事者のところには、こちらが出向くことも考えなければなりません。しかし、これには時間と人の制約が厳しく、求めに応じて、すべて自宅訪問するというわけにはいきません。ただ、現在の社会状況や経済状況など考えると、今後は必要性が高まることが予想されます。一度、家に閉じこもると、容易には外に出ることはできません。そして、その人の気持ちを変えることが出来るのは、本人だけです。彼らは、自分に強い影響を及ぼそうとする人には敏感で、そういう人とは接しようとしません。さらに、一人ひとり持って生まれてきたもの、育った環境が違うので、その人への関わり方も、相手に応じて変えていかなければなりません。そこで、社会的にも、財政的にも、組織的にも様々な課題が出てくることは十分予想されることです。しかし、その都度できることは何なのか、その時々の自分たちのキャパシティの中で考えながら、自宅訪問の継続も視野にいれていきたいと考えています。我々に求められているものがある限りは、今後も、不登校・ひきこもりの人たちやその家族と共に歩んでいけることを目指し、活動を継続できればと考えています。
今後も、相談に携わる人数、時間の制約はありますが、それぞれの家族に寄り添いながら与えられた条件の中で、可能な支援を継続できるよう努力していきたいと思います。
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