岡山高等学院では、2018年、橋本財団の助成により「百色の未来」相談事業を始めました。百色の未来相談事業は、不登校・引きこもり、発達障害等で生活や進路について悩みを抱えている本人や家族が、スタッフと一緒に解決のヒントを見つけるところです。相談スタッフは、岡山高等学院だけでなく、実際に相談・支援に直接携わっている4法人の方々にもお願いしています。それぞれの特徴を生かし連携をとりながら相談活動を進めてきました。
2020年度は、コロナの影響で先の見えない状況の中、対面での相談活動が実施できるのか不安なスタートとなりました。まずは、参加人数の多くなる講演活動との同時開催となる相談会は中止としました。相談そのものに関しては、過去の活動の浸透やホームページの開設により、電話やメールによる申し込みがあったため、個別の相談は継続して行うことにしました。また、コロナの影響で、外部の会場使用の制限もあり、岡山高等学院を会場に開催することにしました。開催日の減少や、コロナ対策のため、広報活動も縮小することとなりました。
こういった状況ではありますが、何とか安定的に継続して相談ができないかと、知恵をしぼっていたところ、2つの寺院が、場所を提供してくださることになりました。寺院は、古代や中世には、飢饉や伝染病の流行などの際に、地域の救済センターの役割を果たしてきた歴史があります。また、近くにお住いの方々にとっては、馴染みもあり、敷居も低いのかもしれません。実際に、寺院での相談はとても趣があり、支援者もご家族も普段より落ち着いてゆったりと相談ができているように感じていて、寺院が本来持っている価値にも気づかされたように思います。コロナ後もこのまま利用させてもらう方向で考えています。
この相談活動を通して強く感じていることがあります。それは、教育委員会など行政サイドが取り組んできた不登校・引きこもり等に対しての施策に問題があるのではないかということです。岡山県ならびに岡山県教育委員会では、不登校対策を最重点課題の一つとして掲げ、不登校支援員やスクールカウンセラー(SC)、スクールソーシャルワーカー(SSW)の配置や対応マニュアルの作成による支援体制の充実などを推し進めてきました。それにもかかわらず、不登校の児童・生徒数は増加傾向が続いていますが、なぜ増え続けるのかを、客観的に分析する姿勢は見られません。現場で携わっているSCやSSWの人たちから話を聞くと、本来の配置の目的が十分に理解されていなくて、実際には果たすべき役割を担えていないと考えている人が少なくありません。異業種ということで、配置当初は教員とは違った立場での関りが強調されていたはずが、次第に、校長の管理下で活動することが強調され、教員とさほど違わない存在にならざるをえない状況になっているのではないでしょうか。
そもそも、当事者中心の施策を実施すべき国や県が実態把握として行っているのが、いまだに、教員の主観による問題行動調査と言われるものだけです。直接に、当事者や家族の意見を聞く機会は持たれないままで、施策を立案し、行っているのが実情です。本当に必要な不登校の要因に関わる情報を把握しないまま、そして、教育委員会、学校サイドを中心とした取り組みに対する検証や反省はなされることのないまま、国の方針に準拠した施策が進められています。大切なことは、相手の気持ちを知り、辛いこと、嫌だったことなどを理解し、共感的態度で接することだと思います。
心理学者のアドラーは、共感とは、相手の目で見、相手の耳で聞き、相手の心で感じることであると述べています。ある県立中学校の生徒が、1年生で不登校になりました。2年生の夏に相談に来られ、居場所を紹介しました。半年ほど居場所を利用し、家から外にも出られるようになり、学習への意欲も取りもどしてきたので、近くの教育支援センター(適応指導教室)に通って勉強したいと相談に行ったところ、市立の小中学校の児童生徒でないと受け入れできないと言われたそうです。家から自転車で通えるところを希望されているので、重ねて、市の教育委員会にも問い合わせたところ、同様のことを言われました。どうすることもできないような決まりなのでしょうか?今なお、これが現実でいいのでしょうか?相談支援者も悩み多い日々を過ごしています。
また、発達障害への対応でも支援学級の急増に追われ、教員の確保や適切な配置が遅れている状況が、相談ケースからもうかがえます。発達障害への取り組みとして国の施策で始まった高等学校の通級指導教室も、岡山県では来年度、縮小されるという情報も得ています。
学校の体制そのものが変わっていかない中で、本当に当事者たちに届く支援とは何か。広がってほしいことが、広がっていかないのはなぜか。百色の未来相談会事業を通して、当事者や家族の意見を吸い上げていく必要もありそうです。
この事業は、橋本財団の支援を受けて行っています。近年、企業の社会貢献活動の一環として、行政の支援等が行き渡らない活動分野で、NPOなどの社会支援活動に対して、財政補助支援が広く行われています。活動の到達点の一つとして、数年後には、自力、もしくは行政と連携を進め、財政面の強化をはかることが求められています。そのこと自体は正しいことであるし、我々も目指すところではあります。しかし、事実を直視し、当事者にとって本当に必要な取り組みを探り、実現に移していくという本来のねらいから遠いところにある行政サイドとの連携が、果たして望ましいことなのか、自問自答しているところです。
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