10連休という不条理

社会は放置すべきものではなく一定の規律を必要とするが、あいにく規制を行う側の政府が、あまり賢いとは言えない。過去の歴史を見ても、政府が社会に対して行った介入が成功した例は少なく、失敗に終わったことの方が多い。

今回2019年の天皇譲位に合わせて、10連休が企画された。日本の特徴は一斉に休みを取ることなので一斉に休むや、交通の混雑、様々なレジャー施設料金が上がること等が起こるだろう。その一方で有給休暇の消化率は未だに半分以下である。この様な時期に、政府は連休を延長し10連休を企画した。休み中は、みんなが家で寛いだり、教会に行ってお祈りをしたりするのであれば社会的に問題は少ないが、多くの人は10連休ともなれば、行楽地に行ったり、海外旅行に行くようだ。そして政府も消費行動を期待している(毎度の様に経済効果は○○億円などの試算が登場する)。

企業が社員に対しての休暇をどの様に考えているかはそれぞれ異なるが、一般的には、年間休日を決めている場合が多い。国民の祝日がどんどん増加していることに合わせて、休みを増やす企業は少ないはずだ。また、休日が増えたとしても、サービス業はその期間働いていることが多いので、むしろ仕事が増えるかもしれない。そうすると、国民の祝日に合わせて休日が増えるのは、官公庁、公立学校、製造業の一部、金融機関等となる。いずれも生産性とは無縁と思われる業種である。

国から言われて休日を決める必要は無い。なぜなら一般に労働時間は、仕事の量に応じて決められるものだからだ。最初に労働時間が決まっていて、その労働時間に業務を当てはめているのではなく、必要な労働業務が有ってその為の労働時間が決まり、結果的に労働日が決まるのである(法定労働時間を守ることは当然)。上記に挙げた生産性と関係が無いと思われる官公庁、公立学校、製造業の一部、金融機関業種は、仕事の量に応じて労働があるのではない業種である。だから、国が決めた休日を取ることが出来るのだ。 

休日が増えることとは関係無く仕事が存在し、その仕事は年間スケジュールを決めてその通りに行うことが最も重要となるだろう。さらに、今や就業者の内で70%程度がサービス業に従事している状態なので、国民の祝日はなおさら意味が乏しい。

以前の本欄で示した通り(「一斉に休む日本人」)、国民の祝日は真に祝うべきものに限定すべきだろう。そして、企業はその他の日を含め年間休日を定め、それを公表し、優劣を競うべきである。例えば年間休日120日、これは政府が決める国民の祝日とは無関係に決められる。そして、企業は年間休日を月ごとの休日に分配し、仕事量を決定する。
さらには、有給休暇を20日とすれば、その休暇の年間取得計画もあらかじめ決めてスケジュール化した方が良いだろう(それは当然個人ごとに自主的に決めるべきである)。スケジュール化した計画は、有給休暇の完全消化が目的だ。もちろん、20日の有給休暇はすべてをスケジュール化する必要はない。有給休暇の内半分か三分の二程度がスケジュール化され、残りは臨時の休みに充てられるべきだろう。

この様に、仕事と労働時間の関係は密接な関係にあって、政府が突然に休日と言い出しても、そうはいかない。政府の言う通りに休日にする企業は、仕事量の把握が不十分な企業と考えられる。政府は、これ以上国民の休日を増やしても意味がないことを悟らなければならない。むしろ、一斉に休むような休日を減らし、その分、有給休暇の増加を図るべきである。ついでに言えば学校の生徒も同様に、年間休日を5日間程度定め、その休日は欠席扱いとはせず、家族と共に自由に過ぎす日にすべきだろう。

公益財団法人橋本財団 理事長、医学博士橋本 俊明
1973年岡山大学医学部卒業。公益財団法人橋本財団 理事長。社会福祉法人敬友会 理事長。特定医療法人自由会 理事長。専門は、高齢者の住まい、高齢者ケア、老年医療問題など。その他、独自の視点で幅広く社会問題を探る。
1973年岡山大学医学部卒業。公益財団法人橋本財団 理事長。社会福祉法人敬友会 理事長。特定医療法人自由会 理事長。専門は、高齢者の住まい、高齢者ケア、老年医療問題など。その他、独自の視点で幅広く社会問題を探る。
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