待機待ちの施設入所~安定より幸福を~

入所施設の利用を希望しながら待機している人は、2024年時点で少なくとも約2万人と指摘されています。さらに、グループホームの利用を希望しながら待機している人も延べ1910人います。2025年の調査はまだ公表されていませんが、相当数いることは確かです。

背景には、高齢の親が障害のある子どもを介護するいわゆる「老障介護」が広がり、将来への不安を抱える家庭が増えていることがあります。しかし国は待機者の実態調査を行っておらず、専門家は「国は現状をしっかりと把握したうえで必要な対策をとるべきだ」と指摘しています。

障害者の生活拠点をめぐって、国は「地域で暮らす」ことを重視し、数人で生活するグループホームの整備を進める一方、入所施設の人数は段階的に減らす方針を示しています。私には、グループホームがなぜ地域で暮らすことになるか理解できません。グループホームの多くは地域との接点がほとんどなく、実際には「地域で暮らす」というより、大きな施設を小さく分けただけのようにも見えるからです。

私の友達にも、「老障介護」の不安から施設入所を選んだ人が三人います。三重県では、待機登録をしてから入所まで約二年待つことが一般的です。そのため多くの人が早めに登録し、順番が回ってくると、まだ在宅生活が可能でも入所せざるを得ない状況になります。一度断れば、また最初から二年待たなければならないからです。

もし介助者が確保できる保証があれば、在宅でも暮らしたいという人は多いと思います。しかし現実には、ヘルパー不足が深刻で、介助者が見つかるかどうかは運次第です。だから、生き延びるために入所を希望してしまいます。

もちろん、集団生活が合う人もいますし、自傷行為や他害行為がある場合には施設が必要な事もあります。しかし、2013年に障害者権利条約を批准して以降、日本は新たに大規模施設を作らず、グループホーム中心の政策を進めています。本当に、現状やニーズに応じた政策なのでしょうか。

理想は地域で暮らす事です。しかしその前に、在宅でも施設でも安心して生活できる環境が大切です。親に何かあっても大丈夫だと思える安心感がなければ、当事者や家族は不安を抱えたままになります。

 

世界的には地域移行の流れは間違っていません。ただ日本では福祉資源がまだ不足しています。まずは待機している施設入所希望者を減らすこと、そして大規模施設でも訪問系サービスなどを柔軟に利用できるよう制度を見直すことが、現実的な改善ではないかと思います。

もう一つ感じているのは、「安定した生活」を求めすぎているのではないかということです。障害があると人の力を借りて生きる必要があるため、親はどうしても「早く安定した生活を」と願います。しかし、安定した生活が必ずしも幸福とは限りません。三食きちんと食べられて、入浴やトイレも支援があり、人の目が行き届いた環境で過ごす。それは確かに安定です。でも、夢や人とのつながり、生きがいを失ってしまうなら、それは本当に幸せでしょうか。

健常者でも、公務員や医者は安定した職業だと言われますが、それが必ずしも幸福とは限りません。障害者も同じです。生活の安定だけでなく、今の幸せを大切にする生き方もあるはずです。知的障害者は親が人生を左右する事が多く、どうしても安定を求めてしまって幸せを優先しない傾向があると感じています。

待機待ちの施設入所の問題も、安定だけでなく「幸福」という視点から考え直す時代に来ているのではないでしょうか。私は一度きりの人生なら、安定よりも自分や周りの人の幸せを選びたいです。

「夢を叶える145」ライター宮村孝博
1974年10月22日 誕生
1980年 城山養護学校小学部(現在城山特別支援学校)に入学(丁度その前年に、障害者の義務教育が開始)
1992年 城山養護学校高等部商業科卒業。と同時に、父が運営する関金型に就職。母の手を借りながら、部品加工のプログラムを作成。
2003年 父が亡くなり失業。母も足の難病に罹り、障害者二人暮らしが始まる。
2006年 「伝の心」と出会う。
2017年 「夢を叶える145」ライターデビュー 「チャレンジド145」プロデュース
趣味、囲碁、高校野球観戦
春と夏の甲子園の時期はテレビ観戦のため部屋に引き篭もる
1974年10月22日 誕生
1980年 城山養護学校小学部(現在城山特別支援学校)に入学(丁度その前年に、障害者の義務教育が開始)
1992年 城山養護学校高等部商業科卒業。と同時に、父が運営する関金型に就職。母の手を借りながら、部品加工のプログラムを作成。
2003年 父が亡くなり失業。母も足の難病に罹り、障害者二人暮らしが始まる。
2006年 「伝の心」と出会う。
2017年 「夢を叶える145」ライターデビュー 「チャレンジド145」プロデュース
趣味、囲碁、高校野球観戦
春と夏の甲子園の時期はテレビ観戦のため部屋に引き篭もる
  • 社会福祉法人敬友会 理事長、医学博士 橋本 俊明の記事一覧
  • ゲストライターの記事一覧
  • インタビューの記事一覧

Recently Popular最近よく読まれている記事

もっと記事を見る

Writer ライター