SDGs、待ったなし!

■SDGsとは?

2017年10月4日、南米コロンビア首都ボゴタ市で開催された196ヶ国の代表ユース(18-30歳)が集まる世界ユースサミット「One Young World」に学生代表と共に参加してきました。そこで例年恒例のフラッグセレモニーにおいて、異色な?「カラフル」な旗が初めに登場してきました。

 

「国連持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」フラッグです。
最近あちこちで、この鮮やかな17色のアイコンを見かける方も少なくないと思います。各国政府のみならず、金融業界から経済界、大学、地方自治体、NPOまであらゆるレベルで急速に広がり始めているSDGsですが、一体全体どのようなものなのでしょうか。

国連広報センターの公式ホームページで分かりやすく解説されていますので、皆さまにも是非ご一読して頂ければと思います。一言で申せば、2015年9月の国連総会において、193加盟国の全会一致で採択されたもので「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際社会の共通目標がSDGsです。

17の目標と169のターゲットから成っていて「地球上の誰一人として残さないこと(leave no one behind)」を宣誓しています。国連全加盟国が採択したアジェンダなので、「国際社会の共通言語」とも言われていますが、何故SDGsがこれ程までにそのうねりを大きくしているのでしょうか。


日経エコロジーの2018年1月号でも、『経営との統合で商機をつかむ「SDGs」の真価』と題してSDGsを特集し、その中で、「SDGsが掲げる社会課題の解決によって、年間12兆ドルの新市場が開ける」と指摘しています。各国政府のみならず、経済界も巻き込みながら世界的な潮流になっていると言えそうです。


本稿ではSDGsを理解するために、SDGsが生まれた主な背景とその特徴、そしてSDGsを巡る現在の国際社会の動向、及び国内の動向を順次見ていきながら、今後の展開についても触れたいと思います。

■SDGsが生まれた主な背景

背景を知る上で二つの系があります。環境系と開発系です。環境系として最も重要なキーワード、それは「地球」です。人類と地球。バックミンスター・フラ-氏の「宇宙船地球号」といったコスモポリタン的なものを思う方もいらっしゃるかもしれませんね。その時代の1972年に開催された国連人間環境会議(ストックホルム会議)に端を発し、1992年には「国連地球サミット(リオ)」を開催してから継続して、2002年のヨハネスブルク、そして2012年の「リオ+20」まで、地球システムの保全について議論されてきました。


最近ではその地球システムと人類の関係を示唆する言葉として、「人新世(ひとしんせい)」というものがあります。少し難解な?響きを持つこの言語は地質学の用語ですが、人類の活動が地球に影響を及ぼし始める新たな地質年代に突入したことを意味する言葉で、SDGsの時代背景としてよく語られています。つまり、我々が生きている現代、それは「人類の時代」であるということです。今後人口爆発が続き、人類の多くが中産階級となり、現代と同様のレベルで消費生活を営むとすると、あらゆるレベルで地球システムに甚大な影響を及ぼすと考えられています。スウェーデンのヨハン・ロックストローム博士が提唱した「プラネタリー・バウンダリー」は、人類が生存し続けられるその地球システムの危機的な限界性を示しており、SDGsの主な理論背景として知られています。

スウェーデンのヨハン・ロックストローム博士が提唱した「プラネタリー・バウンダリー」
(参照:Rockström, J. et al. 2009. A safe operating space for humanity. Nature, Vol. 461, pp. 472-475)

 

もう一つの開発系の流れとして「ポストMDGs」があります。MDGsとは、ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)の略で、SDGsの前の国際社会の共通目標とされていました。2015年がそのMDGsの終了年でしたが、積み残した課題が多く「ポスト2015年」として言われています。この開発系では、長期的な環境課題に対して、途上国の貧困を初めとする社会経済課題の解決が最優先であるという流れですが、2012年に開催した「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」において、先の環境系の流れと統合されて2030年アジェンダが生まれました。

したがって、この二つの系である環境系と開発系が一つとなり、新たな持続可能な開発の概念となるSDGsが誕生しました。環境系のアプローチを踏まえながら、持続可能な開発を考えていくこと。つまり、世界の共通アジェンダとして、「地球のシステムの許容範囲内で」人類が開発・成長を持続することが提唱されました。その実現を目指すための目標、それこそがSDGsなのです。

■SDGsの主な特徴

主な特徴を見るには、前述したMDGsと比較して話すと分かりやすいでしょう。

第一に、途上国から先進国まで全ての国と地域が対象となっていることです。MDGsでは主に途上国の貧困が対象でしたが、全世界の経済・社会のあり方を対象としており、「誰一人取り残さない(leave no one behind)」がSDGsの大きな特徴です。ここには、「人間の安全保障」といった人間を中心とする包摂的なアプローチも含まれています。

 

第二に、冒頭でも触れましたが、持続可能な開発の考え方において、「地球システムの許容範囲内で」が加えられたことです。MDGsでは経済、社会、環境の3本の柱で構成されていました。SDGs時代においては地球資源を最大限に考慮しながら、社会・経済の持続可能な発展を推し進めるといった「環境の持続性が全ての持続性の大前提である」ことがMDGsと大きく異なる点です。

 

第三に、SDGs策定の際に、多くの国と地域からあらゆるセクターが参画したことです。これは国連専門家主導といった一部の関係者で策定したMDGsと大きく異なるアプローチです。国連加盟国の全会一致の採択となったことのみならず、企業や大学、NPOなど様々なセクターが関わりやすい内容となっています。そして、その取り組みにおいてマルチステークホルダーの「パートナーシップ」を強調していることが特徴です。つまり、SDGsのためのガバナンスが重要となります。

SDGsのウェディングケーキ
(参照:SDGs “wedding cake” illustration presented by Johan Rockström and Pavan Sukhdev (http://www.stockholmresilience.org/research/research-news/2016-06-14-how-food-
connects-all-the-sdgs.html)

■SDGsを巡る国際社会の動向

上記のSDGsの特徴もあり、官民が先駆けてその達成に向けた動きを見せています。毎年、国連ニューヨークにてSDGsの進捗を各国が報告する「国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)」が開催されています。例えばSDGs先進国とも呼ばれているフィンランドでは、政策の一貫性を強化するために総理府の下にAgenda 2030 Coordination Secretariatを設置し、首相が議長となって省庁間の横断的な協業を推進しています。ドイツも同様な体制を整えるなど、欧州を中心としたSDGs先進国のみならず、他国においても政策の統合実施や省庁間調整プロセス、およびマルチステークホルダーとの協働体制が急速に進んでいます。

金融経済界も異例の?早い動きを見せています。2017年3月、世界銀行はSDGs実現を推進する企業の株価に連動する世銀債債権を初めて発行すると、発表しました。また同年7月には、世界最大の年金基金、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)もESG(環境・社会・ガバナンス)指数に連動した日本株のパッシブ運用を1兆円規模で開始すると公表しました。これは、世界の民間公共投資がSDGsへ本格参入を始めたと言える出来事です。つまり、企業は主要な実施主体の一つになったことを意味しています。ハーバード大学マイケル・ポーター教授が提唱する企業価値と社会価値を両立する経営戦略が主流となる時代が到来したとも言えるでしょう。これまでの社会貢献事業やCSRとは格段に異なるレベルの流れです。既に先行している世界企業はこの動きを推し進めており、バリューチェーン全体における自社活動のインパクト評価を総点検し、経営戦略の中枢としてSDGsを捉え始めています。つまり、中小企業も巻き込んだ動きになるということです。

こうした官民が一体となった世界の大きな潮流の中、私たち日本はどのような動きを始めているのか次に見てみましょう。

■SDGsを巡る日本国内の動向

本題に入る前に、日本がSDGsにおいて世界からどのくらいの評価を受けているか、皆さんご存知でしょうか。2017年7月に国連のシンクタンクである持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)などが、世界各国のSDGsに対する取り組みの進捗度を比較したランキングを発表し、日本は157ヵ国中11位、アジア諸国において第1位にランクされました。ちなみにスウェーデンやデンマーク等の北欧諸国や欧州諸国が上位を占める一方で、米国は42位、英国は16位です。皆さんの中には、日本は高い評価と捉える方もいるかと思いますが、ジェンダー平等や持続可能な生産と消費に関する目標など、遅れを取っている課題も多々あります。

 

そこで日本でも世界と同様に、官民一体となった動きが急速に広がっています。日本政府は、2016年5月に安倍首相を長とする「SDGs推進本部」を全閣僚で設置しました。同年9月にSDGs推進本部の下に設置された「SDGs推進本部円卓会議」の第一回会合が開催され、行政、NGO、NPO、有識者、民間セクター、国際機関、各種団体等の関係者が集まり、意見交換を行いました。これは先に述べた世界各国の動きと似た政府レベルの取り組みと言えます。さらに同年12月には「SDGs実施指針」が決定となり、経済、社会、環境の分野における8つの優先課題と140の施策が盛り込まれました。主な8つの課題は次の通りです。

 

1. あらゆる人々の活躍の推進
2. 国内外における健康・長寿の達成
3. 成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
4. 質の高いインフラ、強靱な国土の整備
5. 省・再生エネルギー、気候変動対策、循環型社会
6. 生物多様性、森林、海洋等、環境の保全
7. 平和・安全・ガバナンス
8. SDGs実施推進の体制・手段

 

また政府の動きと併せて、日本経済団体連合会(経団連)も対応を進めています。
2017年11月にはIoTやAI、ロボットなどの革新技術を最大限活用して、人々の暮らしや社会全体を最適化した未来社会「Society5.0」の実現を柱としてSDGsを達成するために、企業行動憲章を7年ぶりに改定しました。企業行動憲章は、経団連や会員企業にとっては最高法規にも位置づけられるものです。SDGsをSociety5.0に紐付けることで、国内の民間セクターのあらゆる領域とレベルで企業価値と社会価値を両立する経営戦略と、マルチステークホルダーとの協働が求められています。さらに、自治体の動きもここにきて活発となっています。
同年12月16日には日本で初めてとなる官民プラットフォームが関西で設立されました。大阪府は2025年国際博覧会(万博)誘致を目指すため、141団体のマルチステークホルダーと共に、SDGs達成へ貢献する構想を掲げています。

 

以上から、国際社会と同様に、日本も官民がSDGsの推進を牽引していく形を見せており、従ってこの大きなうねりは日本全体を巻き込みながら、今後のさらなる展開が予想されています。

■今後の展開

2017年12月、内閣府に設置した持続可能な開発目標(SDGs)推進本部が「第一回ジャパンSDGsアワード」を発表しました。SDGsの取り組みにおける先進事例に対して本アワードを授与することで、あらゆるセクターにおいてその啓蒙と周知、及び取り組みの更なる推進を後押しすることを狙いとしています。
我々の岡山大学も国立大学では初となる特別賞(SDGsパートナーシップ賞)を受賞したところですが、受賞機関を見渡すと、「アクション・ベース」と「地方創生」のキーワードが見えてきた思いがしました。

 

今後は政府や経済界のみならず、大学や地方自治体など、あらゆるレベルで「先ずは出来るところから」取り組むような更なる展開の広がりが予想されます。そのため国連や国際機関等からSDGsに取り組むためのガイドラインが公開されています。例えば企業においては、SDGsの3大ガイドラインともいうべき企業行動指針となるガイドライン「SDGコンパス」、業種別取り組みガイドラインと事例集「SDGインダストリーマトリクス」、CEO向け解説書「SDG CEOガイド」がいずれも日本語版で利用できます。また大学や自治体においても同様のガイドラインが公開されています。

 

こうしたガイドラインに沿って、各々の既存事業をSDGsのどれに関連しているかを示す「マッピング(紐付け・棚卸し)」作業は第一ステップとして重要ですが、先行している企業や団体等は、既にマッピングから第二ステップとしての経営との統合、さらには各自の目標やその達成のための独自のKPIを設定し、ステークホルダーへアピールする第三ステップまで推し進めようとしています。

 

SDGsが生み出す新たな世界と市場。そこで日本がいかにリードしていくのか。それには官民のみならずマルチステークホルダーでガバナンスを確立しながら、各機関や企業等が速やかに経営との統合を行い、その取り組みを如何に進めていくかが鍵となります。


「SDGs、待ったなし!」
新時代の幕開けと言えそうです。

国立大学法人岡山大学 副理事(国際担当)横井 篤文
1971年生まれ。日本、米国、オランダ、南アフリカの4カ国に在住し、建築・都市計画・環境・サスティナビリティを学ぶ。大手建設会社勤務、海外留学および在外研究などを経て、双子の兄と共に一般社団法人あきら基金(Akira Foundation)を創設。共同代表理事として、多くの国と地域でグローバルな産学官連携を構築しながら、日本におけるグローバル人材育成と社会イノベーション事業、および東日本大震災復興事業などに従事する。現在は、国立大学法人岡山大学副理事(国際担当)としてスーパーグローバル大学創成支援事業のもと、全学レベルの国際戦略および国際連携事業に従事しながら、SDGsを全学レベルで推進する事業にも携わっている。国立六大学欧州事務所(在、オランダ)所長代理、オールジャパン体制による「ミャンマー人材育成支援産学官連携ぷらっとフォーム」共同事務局長、世界経済フォーラムにて開催宣言された196ヶ国が参加する世界ユースサミット「One Young World」日本委員などを務める。
1971年生まれ。日本、米国、オランダ、南アフリカの4カ国に在住し、建築・都市計画・環境・サスティナビリティを学ぶ。大手建設会社勤務、海外留学および在外研究などを経て、双子の兄と共に一般社団法人あきら基金(Akira Foundation)を創設。共同代表理事として、多くの国と地域でグローバルな産学官連携を構築しながら、日本におけるグローバル人材育成と社会イノベーション事業、および東日本大震災復興事業などに従事する。現在は、国立大学法人岡山大学副理事(国際担当)としてスーパーグローバル大学創成支援事業のもと、全学レベルの国際戦略および国際連携事業に従事しながら、SDGsを全学レベルで推進する事業にも携わっている。国立六大学欧州事務所(在、オランダ)所長代理、オールジャパン体制による「ミャンマー人材育成支援産学官連携ぷらっとフォーム」共同事務局長、世界経済フォーラムにて開催宣言された196ヶ国が参加する世界ユースサミット「One Young World」日本委員などを務める。

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