

高市内閣の支持率は、若年層で高いようだ。参政党や国民民主党などの右寄りの政党も若者を中心とした支持層でこれらの政党支持率は伸びている。この調査で示されるように、現代日本において、30歳以下の若者層に右傾的傾向が見られる現象は、1960〜70年代の学生運動に代表される同年齢層の左翼化との対比において際立った変化として捉えられる。今までの認識では、若者は現状を変えたいと思い、成人層は現状維持が相場であった。しかし、最近ではこの傾向が変化している。その理由はどこにあるのだろうか?この傾向は日本の成長を妨げ、アニマルスピリッツを低下させる要因になるかもしれない。
まず、社会経済構造の相違が両者の思想傾向を左右している可能性がある。1960年代の高度経済成長期では、社会構造は流動的で、何らかの変化を求めていた。そして、社会全体が上昇志向と拡張的未来像を共有していた。そのため、若者は自分たちを社会の変革の主体として自覚し、体制批判や社会改革を追求した。一般的に、歴史上、社会経済が拡大している時には左翼的思想が広まり、社会経済が縮小している時代には右翼的思想が広まる傾向がある。
一方で、日本での1990年代からの30年間は、長期的な経済停滞と格差固定化の中にあり、将来への不安が蔓延している。人口は減少し、仕事はあるが給与はさほど上がらない。日本は、主要国から後退している。世の中は、バブルの後遺症もあり、ひたすらリスクを避けて、安全重視の傾向にある。このような社会情勢の中で、若者は「変革」よりも「安定」を求め、国家や伝統に自己の安全保障を見出す傾向を強めている。右寄りの思想は、保守主義と新自由主義で構成されているが、日本の場合の若者の傾向は、保守主義が優位なようだ。すなわち、左翼化が理想主義的エネルギーの発露であったのに対し、右傾化は防衛的心理の表出といえる。
次に、思想的構図の変化である。1960年代の若者は国家権力や資本主義体制に対する抵抗を通じて普遍的自由や平等を追求したのに対し、現代の若者は、移民・リベラル・外国勢力など外的存在を同胞と考えず、自国のアイデンティティと秩序維持を重視する。前者が「体制への反抗」なら、後者は「体制への帰依」である。この転換は、社会的孤立の進行とコミュニティの消失に起因しており、コミュニティを失った不安は、国家への帰属によって自己を安心させる要因となっている。
さらに、情報環境の変化も看過できない。かつての学生運動は、討論・講義・書籍といった知的媒体を通じて形成された集団的思考の産物であった。しかし現代の右傾化は、SNSや動画メディアによる断片的・感情的情報に基づく共感的拡散によって支えられている。理論的構築よりも情動的同調が主導する点で、思想運動としての質的差異は顕著である。
総じて、1960年代の左翼化は拡大する社会経済に伴う「国家を超える理想」への希求であり、現代の右傾化は縮小する社会経済から生じる「国家に守られる安心」への欲求である。前者が過剰な国家権力への反発から生じた「変革の思想」であったのに対し、後者は国家への依存から生じた「防衛の思想」である。社会が拡張的であった時代には左翼的理想が生まれ、縮小的で不安な時代には右傾的保守が強まるという歴史的循環が、両者の差異を最も的確に説明する枠組みだろう。







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