日本の人口減少は、歴史的にもまれな現象だ

2024年に生まれた「日本人」の赤ちゃんの数を示す出生数は68万6,061人だった。一方、2024年に死亡した人は160万5,298人と4年連続で増加し、過去最多に。差し引きの人口減少は、91万9237人となった。約92万人の人口減少は、日本人人口の0.8%減少に相当する。今後日本人の人口減少は加速し、毎年日本人人口の1%に達する人口減少が訪れる。このような人口減少は経済にも文化にも大きな影響を及ぼす。世界史上、過去にこのような人口減少があったのだろうか?調査すると、人口減少の多くは、災害や戦争、あるいは政策の大きな間違いなどによるものが大半であり、平時の人口減少はあまり見られない。

人口減少で最も有名な事件は、1347年〜1351年、黒死病(ペスト)の蔓延である。黒死病による減少率は、ヨーロッパ全体で人口の約30〜50%が数年間で死亡したと言われる。年間換算では地域によるが、人口が数%〜10%以上減少した年もあったようだ。ただしこの惨禍は数年で治まっている。その後の復興は著しく、復興に伴う労働環境の改善は、労働者の生活を大いに引き上げたと言われる。

第二次世界大戦期の人口減はドイツ(1944〜46年)に起こり、戦死・空襲・ソ連への強制移住などで数百万人規模の人口減が生じている。年率1〜2%程度減少した年もあったらしい。同時期(1939〜1945年)には、ポーランドでも、ホロコースト、戦闘、強制移送により人口が約30%減少したようだ。この場合もその後の復興によって、社会は活気を取り戻す。

中国の「大躍進政策」の失敗による飢饉は、人口が多い中国ならではの規模で、1959〜1961年での死亡者数は推定2,000〜3,000万人。減少率は一部地域で人口が数年間で5〜10%減少した。中国はその後も「文化大革命」などの試練を経ているが、その後は順調な経済成長を遂げている。

これらの騒乱や災害に対して、平時の人口減では、イタリアで近年、年間0.3〜0.4%の人口減が起こっている。ドイツも、移民を受け入れなければ日本と同様に減少傾向が強い。韓国でも、出生率が世界最低(0.7前後)、将来的に日本以上の人口減少ペースになると予測される。

また、ソ連崩壊後の東欧・ロシアでの人口減少では、ロシアで1992年から2008年まで、ほぼ毎年人口0.3〜0.6%の人口減少が起こっている。原因は、出生率低下+死亡率増加(アルコール依存・医療水準の低下など)だった。

以上の事例から見ると、日本の現在毎年の人口減少0.8%(92万人/日本人人口12000万人)と、今後さらに割合が増えて、1%(年間100万人以上の減少)を超えるまでに達することは、平時においての世界史上最も大きな人口減少である。このような人口減少を前にして、日本政府及び政治家が為す術を欠き、せいぜい少子化対策を競っている状態だ。中世の黒死病の例では、賃金が大幅に上がり、労働環境が良くなったらしい。しかし、現代がもっと深刻なことは、人口減少が現在よりも将来拡大することが確実なことである。

日本人という民族を考えるのか、あるいは日本という国家を考えるのかによって、対策は違ってくる。日本民族を考えると、このままでは、西暦2250年~2300年(200年から300年後)には、日本人は滅亡することもある(図1)。日本人が大幅に自律性を高め、依存性を無くすことによって、新しい社会を作り、滅亡を回避することが出来るだろうか?一方で、日本という国家を存続させるには、移民の大量導入が必要であり、移民の導入がうまく行けば、国家は当分存続出来るだろう。



図1:日本と韓国の人口減少

公益財団法人橋本財団 理事長、医学博士橋本 俊明
1973年岡山大学医学部卒業。公益財団法人橋本財団 理事長。社会福祉法人敬友会 理事長。特定医療法人自由会 理事長。専門は、高齢者の住まい、高齢者ケア、老年医療問題など。その他、独自の視点で幅広く社会問題を探る。
1973年岡山大学医学部卒業。公益財団法人橋本財団 理事長。社会福祉法人敬友会 理事長。特定医療法人自由会 理事長。専門は、高齢者の住まい、高齢者ケア、老年医療問題など。その他、独自の視点で幅広く社会問題を探る。
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