

政治家から、急増する外国人に対して「日本文化を守らなければならない」という発言が出ている。外国人労働者が多くなるにつれ、地域の日本人との関係が問題となる。これは、移民を受け入れたすべての国で生じる問題でもある。その上、日本では人口減少が強いので、短期間に多くの外国人労働者を受け入れる必要が生じている。しかし、欧州の国と違って、日本は周辺国からの「難民」の圧力を受けているわけではない。日本が必要として労働力を求めているのだ。従って、外国人労働者との文化的な融合は、日本側から積極的に行わなければならない。それは、他文化の日本文化への「同化」か、あるいは、他文化と日本文化の「統合(融合)」かの問題である。
日本文化の特徴はどのようなものだろう。ただし、注意すべきは、個別の習慣は個別の問題であることだ。例えば、大相撲のいろいろの習慣や規則は、外国から来日する力士と相撲協会の問題である。双方の関係がうまくいくようならそれでよい。しかし、自民党の言うように「移民政策」は存在しないし、「日本文化を守らなければならない」では、外国からの移住者に対して、日本の習慣を強制すべきか、他国の習慣を尊重すべきか分からず、戸惑ってしまう。そこでまず、細かい点は別にして、日本社会の特徴を考えてみよう。日本社会の特徴は以下のようなものである。いずれも世界においての一般的なことに対して少し異なる点だ。
第一に、集団志向であり、同時に和の重視を考える。個人よりも全体の調和を優先し、対立を避ける傾向が強いこと。その結果、同調圧力が生じ、他人と違う行動を取ることへの心理的な抵抗が強いこと。第二に、上下関係の明確さを求め、年齢や役職に応じた序列を尊重すること。これは中国文明の影響(儒教)かもしれない。第三に、曖昧さの容認である。白黒をはっきりさせず、文脈や空気で理解することが多い。空気を読むことが求められる。第四に、高い公共意識があること。秩序を守り、公共の場でのマナーに敏感。
このような社会に参入した外国からの移住者に対して、すべて日本の文化習慣を守らせることが良いわけではない。第一の集団の中での行動においては、日本的同調圧力は不適当だ。第二の上下関係は、最近ではあまり強くはないが、命令系統は別にして、あまり強くならないようにしなければならない。第三の曖昧さの容認は捨てるべきである。曖昧な日本的習慣は外国からの移住者にとっては使いにくく、日本人の間でもあまり褒められたことではない。第四の高い公共意識はそのまま保存すべきである。日本の良い部分の典型である。
この様に、外国人移住者を日本社会に取り込むためには、たとえ、日本の習慣であっても不適当なものは改めなければならない。自民党の言う、ひらすら「日本文化を守る」ことは、日本文化に「同化」することを求めるものである。「同化」を強制すると、その結果、独自の文化を守るためには、自分たちだけで日本の中に「エスニックコミュニティ」を作るようになる。これは、「周辺化」と呼ばれる状態だ。つまり、「同化」政策を強くするとその代償として必ず、「周辺化」が起こることは、ジョン・ベリーの文化適応モデル(*1)のように明らかだ。
今後外国人移住者が激しく増加する日本では、日本独自の文化の変容も許さなければならない。どのような文化を残し、どのような文化を変えていくかが、異種民族との「統合」を考える際に最も必要なことである。
今までの日本は、変化を恐れ、現状維持することによって、リスクを回避しようとする姿勢が強かった。世界で生きていく際に、現在のようなリスク回避を最優先する姿勢ではやっていけない。異種の民族を、日本の都合で招き入れる以上、日本文化を見直し、異文化の良いところを取り入れ、かつ、日本文化の良いところを残す勇気ある「統合」政策が大切になる。
(*1)ジョン・ベリーの文化適応モデル:異文化環境に置かれた個人が、自身の文化と異文化との関係をどう捉えるかによって、「統合」「同化」「分離」「周辺化」の4つのタイプに分類される。







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