

スイスのマックス・フリッシュが50年以上前に、移民を表す有名な言葉を述べている。それは「我々は労働力を呼んだが、やってきたのは人間だった」。すべての国にとって、外国人を雇用するのは、国内で不足している労働力を得るためである。しかし、移ってきた人間は、生活をする。食事をして、住まいに暮らし、遊ぶこともある。そして、それぞれの人間は文化を持っている。生まれ育った地域や国に特有の文化があり、すべての人間はその文化を吸収している。移住者がその国の人達と接する文化的な差異は、異なる国の人が暮らすための大きな問題となる。
自民党の政治家はやっと最近外国人問題を述べるようになった。しかし、そのコメントの多くは、「移民政策は取らない」だけである。その意味は、永住を目的としている「移民」はとらない、と言うことだろう。「移民」の国際的な定義は、1年以上国籍のない国に暮らす人になるが、自民党内での「移民」の定義では、永住を目的としている人となっているらしい。このような定義を持ち出して年間30万人以上増えている外国からの移住者の現状を見ないように、説明しないようにしているのだ。現在問題となっているのは、特定技能あるいは技能実習制度で日本に来ている3年または5年を目処にしている外国人労働者の処遇をどのようにするか、あるいは、一定の期間が過ぎて一定の能力・資格があれば、「定住者」として、永住者と同じような日本への居住を許可される人たちに対する処遇をどのようにするかなのである。それにもかかわらず「移民政策は取らない」と繰り返しても仕方がない。
「移民対策を取る」場合の本音を言えば、移住者の人達が、その国の文化に完全に「同化」し、同じような行動をしてくれるように願うだろう。しかし、幼少期から育った文化的な違いは簡単に解消することはない。その結果、労働力のみを期待していた受入国は戸惑ってしまう。そこで、移住者を受入国に同化させるのではなく、母国の文化を継承し、保存することを認めようとする考えも出てくる。なんとか、移住者の文化と受入国の文化とを融合させる試みを「統合」と称している。この違いによって以下のような分類が可能となる。
(図1)ジョン・W・ベリーの文化適応モデルによる分類
文化の継承問題は、(図1)のような関係で表される。受入国と移住者との関係では、「統合」が望ましい。つまり、一定範囲での出身国の文化を保持したうえで、受入国の異文化(移住者にとって)を受け入れる事ができれば、最も良い。しかし、このためには受入国の寛容さと、受入国の文化、特に言語を積極的に移住者に教える努力が必要となる。この過程は、地道な努力と予算が必要だ。
努力が少ないと、移住者は言語や習慣の違いに戸惑い、自分たちだけのコミュニティ(エスニックコミュニティ)を作り、それに過度に依存するようになる。そうすると、受入国の住民との関係は希薄になり、文化的にも混じり合うことがない。その結果は、「分離」から「周辺化」になってしまう。多くの国の外国人問題は、受入国が努力をしなかった結果、移住者の「周辺化」を招き、それが犯罪などに繋がる結果を呼んでいる。受入国は移住者を地域になじませる努力をする必要がある。それは決して移住者の側に責任があるのでなく、受け入れ側の責任なのである。







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