

高校生 宮﨑大輔(17歳)
台湾有事という言葉を、初めて意識したのは半年以上前のことだ。台湾を訪れ、現地の政府機関を訪問し、外交に携わる職員の方と意見交換する機会を得た。もともと政治や安全保障に詳しかったわけではない。ただ、互いに真剣に言葉を交わすうち、ある種の緊張と責任が、少しずつ自分の中に芽生えていくのを感じた。
その場で、何か強く訴えかけられたわけではない。むしろ丁寧で冷静な説明の連続だった。けれど私は、そこに立ち会っただけで、自分自身が何かを問われているような気がした。日本に戻った今も、あの空気を思い出すとき、自分はもう「関係ない」とは言えないのだと思う。
台湾で何かが起きたとき、日本はどう動くべきなのか。この問いに正解はない。だが、私はあえて答えを出すなら、「軍事力によらず、支える」ことだと考えている。
もちろん、日本がまったく巻き込まれないという考えは現実的ではない。台湾と日本は海を隔てた近隣同士であり、経済的な結びつきも強い。与那国島や石垣島など、台湾に近い地域に住む人々にとって、有事は「自分の町の話」でもある。加えて、日米安全保障条約のもと、日本はアメリカとの協力を迫られる場面も出てくるだろう。
だが、だからといって、武力による応酬を選ぶべきではないと私は思う。どんな理由があれ、戦火の下に置かれるのはいつも「暮らしている人々」だからだ。私は台湾で出会った多くの人たち――街の店員、学生、バスの運転手、地元の家族を思い出す。彼らの顔を思い浮かべるとき、私は抽象的な「台湾有事」ではなく、「日常が壊れる瞬間」について考えずにはいられない。
日本には、軍事に頼らず行動する余地がある。たとえば、有事の際に台湾の人々が避難を迫られるなら、日本はまず人道的な支援体制を整えるべきだ。避難民の受け入れ、医療体制、通信の確保、そして滞在や就学の法的支援。武器ではなく、安心できる場所を提供すること。それが、国家としての責任ではないだろうか。
さらに、日本は国際社会に対して、台湾をめぐる対立が戦争に発展しないよう、対話の場を保ち続ける努力ができる。アジアの中で日本は、中国、アメリカ、台湾それぞれと一定の関係を持っている国だ。もし緊張が高まっても、「すぐにどちらかに加担する国」ではなく、「対話の余地を残す国」であることは、むしろ誇りにすべきことだと私は思う。
実際、外交に関わる人々の姿を間近で見たとき、私は初めて「言葉で守る」という仕事の重みを知った。相手の意見を受け止め、立場の異なる者同士が橋を架けようとするその努力は、時に見えにくく、評価もされにくい。けれどそれがなければ、世界はもっと早く争いに巻き込まれてしまうのだと、私は確信している。
そして今、私が強く感じているのは、このような問題を「自分の暮らしとは関係ない」と思わないことの大切さだ。私の学校では、台湾や安全保障について学ぶ授業はない。テレビやインターネットでも、正確な情報を探すのは簡単ではない。でも、それでも、「知る努力」はできる。知ってしまった以上、何もしないことの方が、よほど無責任だと思う。
私はまだ高校生だ。選挙権もなければ、政策に影響を与える力もない。でも、それでも考えたい。考えて、伝えたい。たとえ小さくても、自分の声を届けたい。そうすることが、未来に責任を持つ第一歩になると信じている。
台湾有事は、どこか遠い場所の戦争ではない。それは、「私たちは、これからどんな社会を選ぶのか」という問いかけそのものだ。戦わないという選択が、非現実的だと笑われる世の中にしないために、私は言葉を選び続けたい。
これからも私はとどまらずに進んでいきたい。







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