Opinions第2回エッセイ募集「台湾有事で日本はどう動く?」受賞作品②

寺田企画主宰 寺田高久(70歳)

中国の現体制下で2027年までに統一、反国家分裂法の制定、台湾は中国の革新的利益、力による一方的な現状変更やその試み、自由主義vs専制主義、不可分の領土、一つの中国の原則、などなど。台湾有事が起こることを予感させるコメントには、枚挙に暇はない。その表現は、煽動的とも感じるほどだ。

実際、複数回に及ぶ台湾周辺海域での軍事演習により、日本のEEZ内に数発の弾道ミサイルが落下。また尖閣諸島周辺海域における日本と中国の度重なる摩擦は、看過できないレベルにまで達している。偶発的な事故による、事態の勃発と拡大すら懸念される。他方、頼りにしている米国の対応は意図的な曖昧さに終始し、政治的にはコミットするが、軍事介入への明言は巧妙に避けている。ちなみに、近年の露ウの状況を鑑みると、どうしても台湾が、大国に翻弄されるウ国に重なって見えてしまう。このような流れもあって、自衛隊は与那国駐屯地を整備した。ただ、確かに台湾海峡がこのまま未来永劫、平和な海峡であり続けるという見方は楽観的だ。

もちろん台湾は独自の政治体制を構築しており、メインランドとは価値観も体制も大きく異なる。だが同時に、日本がとり得る行動にも限界がある。専守防衛が基本中の基本である日本。敵基地攻撃能力、反撃能力、先制攻撃には憲法上の高いハードルがあり、幅広い議論が必要だ。実際にできることは限られており、良い意味でも悪い意味でも米国頼み。せいぜい補給機能を担う後方支援をすることくらいしかない。冷静な判断、対応をしつつ、力対力、核対核の事態にならないことを祈るしかない。

かつて筆者は所用で台北を複数回、訪問したことがある。誰もが日本を良く知り、憧れを持った親日的雰囲気。日本の流通業者も数多く進出済みだ。下関条約で日本統治下であった頃、「次郎物語」の著者である下村湖人が台北高等学校校長であったことは良く知られており、年配者は日本語が堪能だ。またグルメ、タピオカやドーナツなどの台湾スイーツが日本に根付きつつある。その他にも、経済安全保障上の対応であろうが、世界的な半導体メーカーは九州に最先端工場を整備。現在開催中の大阪・関西万博では、国家としてではなく台湾企業としてパビリオンを出展している。私事であるが、親族の持つ都心のタワーマンションに、転売を希望するオファーが多数寄せられているが、その内の何人かは台湾系の人であると聞いている。

公式な国交はなくても、日台のサプライチェーンはしっかりと繋がっており、文化面・経済面での結びつきは強い。だから有事における日台の関係は微妙だ。本稿のテーマである台湾有事の際、文化・経済面での緊密さは大事にしつつ、安全保障面での対応はそれとは切り離して考えざるを得ない。

台湾有事の際には日本が対応すべき、もっと大事な役割がある。

台湾周辺海域は日本のシーレーンだ。そこでの自由航行は、加工貿易国として輸出入に励むことが求められている日本にとって命綱だ。日本の経済社会のサステナビリティとBCP(事業継続計画)、リダンダンシーの要であり、有事におけるシミュレーションをしておくことが重要だ。前述したが、日台は半導体のサプライチェーンで強く結ばれ、相互に第3位、第4位の貿易相手国である。国別のインバウンド観光客数は、台湾は第3位、年間600万人に上っている。その結果、台湾に在留する邦人は約2万人を数える。

だから当然、まずは台湾有事が起こらないようにすることが先決だ。それには普段の情報収集、対話の継続と緊密化、民間交流も含めた外交対応を絶やさないことが重要だ。日本が合憲的に堂々とできることは、いつまでも、どこまでも国際社会の中で協調性を保つこと。現在はこれしかない。

次に、もしも不幸にして台湾有事が勃発したとすると、邦人2万人の避難計画がまず求められる。また南西諸島の中で、影響を受けやすい人口は10万人に及ぶとされている。さらに、2400万人の台湾人が大量の難民となり、脱出しようとする事態が想定される。

それらの人々の保護と支援、必要に応じた受け入れは、一義的には国際社会で協力して対応すべきであろうが、最も近隣国である日本に期待される人道的な役割は、どうしても大きくならざるを得ない。

憲法できつく縛られている日本が、これ以上踏み込んで自由に語れ、行動できる領域はない。また具体的にコミットすることも、避けなければならない。煽動教唆されることなく、日本の立場を冷静に守り通すしかないのだ。煽られても、限界を超えてはならない。

台湾有事を日本の有事にまで拡大、発展させてはならない。決して煽られることなく、人道的な立場に立って慎重かつ丁寧に対応すること。このことを肝に銘じて、みんなの意識を醸成し、コンセンサスにすることを最後に訴えたい。

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