効率が幸福か?施設介護から在宅介護へ

一般企業では、「効率性」「生産性」「利益率」などが最も重視されますが、人と人との関係性に支えられている福祉の分野ではどうでしょうか。私は重度障害者なので暮らしていく上でヘルパーさんが欠かせない存在です。ヘルパーさんがいなかったら施設入所しか生きる選択肢がなかったでしょう。私にとって、訪問介護は命綱です。

ところが、2023年には訪問介護事業所の倒産件数が262件と過去最高となりました。これは、私にとって死活問題です。倒産の理由には、コロナの影響や人員不足もありますが、最も大きな要因は2024年度の介護報酬改定による「報酬引き下げ」です。訪問介護の基本報酬が引き下げられた主な理由は、「訪問介護事業所の経営状況が良好である」と判断されたからです。しかし、施設のように利用者が集まっている場合は効率が良く利益もでますが、在宅を一軒一軒回る訪問介護は、移動に時間がかかり赤字になるのが現実です。結果として、訪問介護事業所が経営難に陥っています。障害者の介護制度は介護保険とは別ですが、実際には介護保険を主な収入源とする訪問介護事業所が多く、障がい者も影響を受けます。

国の障害者政策では、これまでのような大規模な入所施設の新設をやめ、グループホームやデイサービス、ヘルパーによる地域生活を支える方針に転換しています。また、精神障害者の長期入院も原則3カ月以内と定められています。

それにも関わらず、報酬削減によって現場では真逆の現象が起きています。地域で暮らすには訪問介護事業所が欠かせません。「サービス付き高齢者住宅」や「グループホーム」は施設に近い考え方です。効率性や利益性が重視され、障害者や高齢者が社会から切り離されて、限られた世界で生活する構造が強まっています。施設名に「園」「苑」「荘」といった文字が使われるのも、その象徴でしょう。しかし本当に、家族や友人と切り離されて施設で暮らすことが楽園なのでしょうか?

イギリスでは、1960年代は今の日本と同じように施設介護が中心でしたが、徐々に在宅介護に移行してきて、「ゆりかごから墓場まで」という福祉国家モデルを築きました。スウェーデンなどの北欧諸国でも、施設にかかるコストを減らし、在宅介護を基本とする社会が実現しています。一方、日本は過疎化や人口減少が進んで空き家が増える中でも、あえて新しい施設を建てて効率性を優先する流れが続いています。もし自宅で生活しながら介護を受けることができたら、街に人が来て活気が出るし就労の機会にもつながります。なにより、介護の必要な人が街に出られることにより色んな人が住みやすい多様な社会が実現できます。

最後に先日亡くなった世界一貧しい大統領として知られるウルグアイのホセ・ムヒカ氏の言葉を紹介します。


「貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ。富に執着して生きることはしないでほしい。私たちは発展するために生まれてきたのではなく幸福になるために生まれてきた。愛情をはぐくむことや子供、友人人生にとってかわらない価値があるものに時間を使ってほしい。」

「夢を叶える145」ライター宮村孝博
1974年10月22日 誕生
1980年 城山養護学校小学部(現在城山特別支援学校)に入学(丁度その前年に、障害者の義務教育が開始)
1992年 城山養護学校高等部商業科卒業。と同時に、父が運営する関金型に就職。母の手を借りながら、部品加工のプログラムを作成。
2003年 父が亡くなり失業。母も足の難病に罹り、障害者二人暮らしが始まる。
2006年 「伝の心」と出会う。
2017年 「夢を叶える145」ライターデビュー 「チャレンジド145」プロデュース
趣味、囲碁、高校野球観戦
春と夏の甲子園の時期はテレビ観戦のため部屋に引き篭もる
1974年10月22日 誕生
1980年 城山養護学校小学部(現在城山特別支援学校)に入学(丁度その前年に、障害者の義務教育が開始)
1992年 城山養護学校高等部商業科卒業。と同時に、父が運営する関金型に就職。母の手を借りながら、部品加工のプログラムを作成。
2003年 父が亡くなり失業。母も足の難病に罹り、障害者二人暮らしが始まる。
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