日本人がアニマルスピリッツをなくして、どれぐらい時間が経つだろうか。経済学は基本的には、人間を1つの無機質な存在として考え、精神的心理的には違いがなく、同じ刺激なら同じ行動を取るものとして扱っている。しかし、ローマを見ても、中国王朝を見ても、その時点での国民性によって、その勢いは違ってくる。これら巨大帝国は、内部が豊かになるにつれて、アニマルスピリッツが失われた。アニマルスピリッツが失われた人たちに対して、経済成長を促すような金銭や、政策を提供してもほとんど意味はない。国民に対する補助金などは、何らかの理由で生活に困っている人、災害や病気で生活していくことが困難な人に対して行うべきものであり、「普通」の人には何ら影響は及ぼさない。無節操に補助金を配り、減税を持ち出すのは、ポピュリズムに過ぎない。
しかし、現在のアニマルスピリッツの乏しい日本人が良くないと言うわけではない。平和を愛して、協調性が高い国民性は貴重なものである。このような状態を前提にして経済政策が行われなければならない。つまりそれは、物質的な豊かさではなく、精神的な基軸をどこに置くかなのである。「もっと、もっと欲しい」との渇望を刺激するのではなく、平和で協調性を重んじる国民の場合には、それに即応した政策が必要である。
協調性とアニマルスピリッツは相容れないと言われるが、そうとばかりも言えない。日本の経済的繁栄は、特に太平洋戦争後の悲惨な状態からの復興を手がかりにして、豊かさへの渇望がその原動力となっていた。ちょうどその時期に、科学的知見が大きく前進し、電化製品や車などのいわゆる三種の神器的なものがもたらされた。住宅事情も大幅に改善していった。このような豊かさを追い求め、日本人のアニマルスピリッツは大いに花開いた。それは経済的数値的な豊かさだったために、画一的な目標設定が有効になったのだ。その後の経済成長によって、豊かさへの渇望は満たされ、ある程度の生活満足感は達成された(もちろんすべての住民というわけではない)。その後のバブル崩壊は、日本人に大きなトラウマと積極性の減退を招いた。日本人からアニマルスピリッツは消えたのは、バブル崩壊のためだけではなく、ある程度の生活満足感を得た結果として、「もっともっと欲しい」という欲求が影を潜め、穏やかな生活を望む声が大きくなったことも大きな理由である。ただし、そうすると「日本人」が穏やかな民族であるかのように思いがちであるが、そうではない。日本の自然環境、歴史的環境によって現在の日本人の気質が生まれたのだ。
今の日本人に対する目標は、「もっともっと欲しい」との豊かさへの追求ではない。アニマルスピリッツはその性格を変えなければならない。他人と競争してよりよい地位や、報酬を獲得するのでなく、今生きている自分がやりたいことを行うこと、そして、自分の思いを実現できることに幸せを感じることでの達成感である。そして、自分がやりたいことは、大きくなって改めて問いかけをすることによって発見するのではなく、幼少期(3才頃)より自由な環境で生活することによって生まれるのだ。つまり、自分のやりたいことに向かって生きることがアニマルスピリッツであり、不足感からの渇望ではないのだ。
従って、日本の再興のために、日本の制度や環境を変えようとするときに第一に行うべきことは、幼少期に自由に選択出来る気質を育む事ができる環境を提供すること、その中で、自由に発想出来るようにすることだ。豊かになった世界では、競争は意味をなさない。自分自身の行動によって満足度を高めるには、どのような職業であろうと、どのような生活をしようとそれぞれが満足する道を探り出し、その道を進むべく努力することにある。道は無数にあり、どの道を選んでもよく、どの道を選ぼうとアニマルスピリッツを持ち行動すれば、満足が得られること、そして日本全体もより良い姿になることを目指すべきである。
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