移民国家・日本の現実と選択

厚生労働省は2025年6月4日、2024年の人口動態統計を発表した。日本で生まれた日本人の子どもの数は前年比5.7%減の68万6061人で、出生予測(75.5万人)より15年ほど減少の時期が前倒しとなっている。それに対して2024年の死亡数は1.9%増の160万5298人、出生数と死亡数の差である日本人の自然減は91万9237人である。また、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は1.15だった。大まかに言えば、日本人は毎年100万人程度減少していることになる(図1)。


(図1)厚労省資料より筆者作成

出生数の減少は2020年時点での予測より先行して、すでに60万人台になっているが、このグラフで見ても、2030年代以降は、日本人の減少数は常に年間100万人に達し、その傾向(出生が50万人、死亡が150万人)が続く可能性が高い。一方で、出入国在留管理庁の記録を見ると、2024年には、新たに日本でビザを取った人の数は、40万人に達すると予測される。日本政府が何らかの形で規制しない限り、日本人の人口減少に伴って移民数の増加は続くと考えられる。

そこで、外国人労働者つまり移民の人達と、旧日本人の人口比率が逆転する日も来るだろう(図2)。


(図2)


この図のように、2100年代の早い時期には、外国人の数が旧日本人を上回ることが予測される(移民比率50%)。この状態は、移民で成り立つ、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドと同じようなものになる。ただこの国々と日本とが異なるのは、これらの国は、比較的少数の先住民族は居たとしても、数多くの移住者によって国が出来たことである。しかし、日本の場合は、先住民族(旧日本人)が多数存在しているということだ。このような状態は、現在のフランスに近いかもしれない。ただ、この状態が平穏に経過するのか(フランスの場合、長い年月にわたって移住者が少しずつ増加している)、あるいは、急速に移住者が増加して、大きな混乱が起きるかはわからない。現在のように移民を否定すること、つまり、外国人の定住の可能性を考えないようにすることが続けば、無秩序な移民人口の増加と、エスニックコミュニティの乱立が予想される。一刻も早く、移民庁あるいは移民省を作り、各種の規制を統合して、移民対策を確立する必要がある。そして、フランスを含め、多民族の移民国家には、中心となる理念が存在している(とされる)が、日本にも中心となり理念があるかどうかが問われるのだ。

公益財団法人橋本財団 理事長、医学博士橋本 俊明
1973年岡山大学医学部卒業。公益財団法人橋本財団 理事長。社会福祉法人敬友会 理事長。特定医療法人自由会 理事長。専門は、高齢者の住まい、高齢者ケア、老年医療問題など。その他、独自の視点で幅広く社会問題を探る。
1973年岡山大学医学部卒業。公益財団法人橋本財団 理事長。社会福祉法人敬友会 理事長。特定医療法人自由会 理事長。専門は、高齢者の住まい、高齢者ケア、老年医療問題など。その他、独自の視点で幅広く社会問題を探る。
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