男女問わずタンザニア人と話して盛り上がるテーマに教育、結婚がある。このテーマは各人の考え方が多様であるという点で日本と近い面もありつつ、タンザニアらしさも垣間見える。タンザニアに1年以上住んで感じることシリーズの最終回にあたる今回は、タンザニアの人々の教育、結婚に関する情報をお届けする。タンザニア的な考え方をさらに深める機会として、お読みいただけるとありがたい。
タンザニアの教育制度は整っており、多くの人が学校に通え、少なくともスワヒリ語の読み書きはできる。国際連合教育科学文化機関(UNESCO)の2022年データによると、15-24歳の識字率は、男性88.81%、女性85.13%である。同じくUNESCOのデータを参照すると、アフリカでタンザニアよりも経済規模が大きいナイジェリアは、同2021年データで男性77.78%、女性69.05%であり、タンザニアの若者への教育が行き届いていると言える。参考までに外務省の両国基礎データから経済規模を比較すると、GDPは、タンザニア 678億米ドル(2021年:世銀)とナイジェリア3,628億米ドル(2023年:世銀)、一人当たりGNIは、タンザニア約1,200米ドル(2022年:世銀)とナイジェリア1,930米ドル(2023年:世銀)であり、ナイジェリアの経済規模の大きさが分かる。
公立の学校は、無償であるものの、学年やクラスの人数が多く、教育の質が私立と比べて低いイメージがある。給料が高くないという理由で公立の学校では先生が授業に来ないと言う話を聞いたことがあり、教育の質という点では、私立の学校の質が良いのはほぼ間違いない。そのため、低収入の家庭であっても、生活を切り詰めても子どもに良い教育を受けさせたいという親は多く、私立に通わせている知り合いも多い。タンザニアでは、成績優秀者が入学できるボーディングスクール(寄宿学校)も人気で、知り合いの子供も通っている。そこでは勉強に集中するため、携帯は禁止、親と会えるのも長期休みの期間のみである。日本の高校以上にあたる高等教育になると、授業が英語で行われることが基本となり、そのためタンザニアでは英語の読み書きができる人は多い。
結婚は、恋愛の延長線上にあることが多いと感じる。地元が同じ、学生時代の知り合い、友人からの紹介のいずれかで結婚したタンザニア人の友人が多い。一方で、親の紹介やお見合いもある。この自由恋愛が中心となっている点、また、外でのスキンシップは少ない点はいずれも日本と近い気がする。ただ、タンザニアと日本で大きく違うのは、子どもと結婚の関係性である。子どもはいるが、結婚をしていない状況のタンザニア人を数名知っている。彼らは今後、仕事が軌道に乗り、タイミングが来たら結婚しようと思っているとは話すものの、「そのタイミングっていつ?」と聞いてもいつもはぐらかされる。結婚し子どもを持つ、子どもができたら結婚するという考え方はタンザニアにもあるようだが、主流とは言い切れない。
なお、イスラム教徒(ムスリム)の結婚事情は異なる。ムスリムの男性は、経済的な状況が許せば、最大4名の女性と結婚ができる。「なぜ、4名の女性と結婚ができるの?」とムスリムの友人に聞くと、聖典であるコーランに書いてあるという答えが最初に来る。彼は、実際的な理由として、男性の数が女性と比べて少なくなるためだと語ってくれた。男性は家にいることの多い女性と比べて、外に働きに出る、仮に戦争が起きた場合にも戦うことになり、怪我や死のリスクが多いという説明であり、納得できた。なぜ3名、5名ではなく、4名なのかも聞いてみたがそれは不明であるという。一方で、複数の妻を持つ場合に、平等性が大切であり、住居やプレゼントなど複数の妻に同じ扱いが求められるとのこと。「それは、お金がかかりそう」とコメントをしたら、「そう、お金がないと難しいよ。だから私は妻一人で十分」と笑いながら話してくれた。今は妻一人だが、今後もう一人持ちたいとも語った別のムスリムのことを思い出し、憧れだけで突き進めるものではないと改めて感じた。
これまで5回にわたって、私が感じるタンザニアを伝えてきた。読者の皆さんが少しでもタンザニアを身近に感じていただければ幸いである。2年間タンザニアで生活しながらも、まだまだ面白い、興味深いことと出会う。その面白さや興味深さは必ずしも新しい経験を意味しない。日常の何気ないひとときに「あ、そういうことか」、「へー、そうなんだ」ということが潜んでいる。これからもそのような好奇心のアンテナを張り巡らせながら、タンザニア生活をゆるりと楽しんでいきたいと思う。まさにその今を楽しく生きる姿勢こそが、タンザニアの皆さんが大切にしているもので、私も深く共感している。
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