タンザニアに1年以上住んで感じること④〜人々編/考え方と時間〜

「タンザニア人はどんな人ですか?」と聞かれた際、「人によって違いますが、特徴はある気がします」と答えたことがある。これは、我々が外国人に、「日本人はどんな人ですか?」と聞かれて答える点と近いと思う。日本人は時間を守る、よく働く、年長者を敬う、和を大切にする、健康的な食事を好む・・・どれも正しい面はありつつ、日本人一人ひとりその実態は異なる。それでも、私が感じるタンザニア人の特徴は、様々な立場、年代の少なくとも1,000名以上のタンザニア人と接してきた中で、統計的なデータや学術的な裏付けはないものの、一定の意味があるように思う。例えば、タンザニアの男性(男子)とタンザニアの女性(女子)の陽気さを比べると女性陣に軍配が上がる。他方、両者いずれもダンス、歌は上手である。タンザニアに1年以上住んで感じることシリーズ、今回は、タンザニアの人々の考え方、時間の情報をお届けする。

タンザニアの人々をタンザニア人=タンザニア国籍を持つ人々と言い換え、話を進めていく。皆さんのイメージにもあるように、タンザニアに限らず、アフリカ各国は、国内に多くの民族・部族を有し、民族・部族の言葉や文化、商習慣と国のそれらが存在する。また、タンザニアは、インドを中心に移民が多く、タンザニアで生まれ、タンザニア国籍を持つ人も多い。タンザニア人は、所属する民族・部族、元々のルーツがある国の言葉を話しつつ、さらに国語であるスワヒリ語も話す。今のところ、スワヒリ語が話せない人とは出会ったことがなく、スワヒリ語はタンザニアに欠かせないアイデンティティである。

沓掛(2021)は、「マグフリ政権下のタンザニアのスワヒリ語振興政策―『虐げられた人々』の言語としてスワヒリ語を構築するディスコース―」で「スワヒリ語」がタンザニア人のアイデンティティに占める地位の高さは、1985年まで初代大統領を務め、植民地独立運動時代から中心的役割を果たしてきたニェレレ氏のリーダーシップによるところが大きいと整理している。ニェレレ氏以降の大統領時代は、経済と共にスワヒリ語の振興も停滞したが、2015年に大統領に就任したマグフリ氏は、ニェレレ氏を国父と呼ぶほど彼を敬愛し、スワヒリ語振興政策を強力に推進した(同氏に関心を持つ人は、粒良(2020)「タンザニアの『ブルドーザー』大統領―マグフリ政権の特徴―」参照のこと)。ただし、ニェレレ氏時代から「英語」は重要な地位を占め続け、今でも高等教育の言語であり、国の公用語ともなっている。

タンザニア人の考え方として、現在、関係、成り行きの3つを大切にしていると感じる。タンザニア人にとって過去や未来、特に未来は現在に比べて、価値を持ちにくい概念である。この時間軸の概念をもう少し説明する。タンザニアにいると、日本と比べて不確実性が大きいことに気づく。例えば、手続きを同じように行い、以前はそのやり方で良かったにもかかわらず、今回はなぜか別のやり方を求められることがある。その場合も別の人に聞けば不要と言われることもある。ルールが変わった場合もあるが、それ以上にそのルールの解釈が人によって異なる社会である。このようにいわば出たとこ勝負が普通な社会であると、予測が立てづらく、とりあえずやってみてうまくいけばそのまま、うまくいかなければ変えるべきところを確認し、変えようという考え方になる。そうなると、3年後、5年後、10年後を見据えて、目標から逆算し、ここは我慢しよう、ここまでは進めておこうという将来への投資を中心とした発想は持ちにくい。

しかし、お金の貯め方、使い方は、例外的だと言える。金額が大きいもの、例えば、家、車、携帯、TVなどを購入する場合、ローンではなく、現金一括で購入する人が圧倒的である。そのために、何年間も貯金をし、その額が貯まれば欲しいものを購入することが多いと皆、口を揃えて言う。「なぜ、ローンで買わないの?」と聞くと、タンザニアの文化・商習慣としてローンが主流ではないとの説明はあるものの、それ以外の明確な答えはない。ローンが主流ではない背景には、将来どうなるか分からない=継続的な返済が見通しにくい事情も存在すると想像する。実際、現地で見ていても日々の支払いは現金が多く、次いでM-PESAなどの電子マネーやデビットカードによるお金の移動が即時的な決済手段となる。タンザニアでは、返済が1ヶ月後以降になるクレジットカードをほとんど見ることはなく、ポイントや特典の観点で様々なクレジットカードがしのぎを削る日本とは状況が大きく異なる。

関係は、人と人を中心としたものである。もちろん、世界中で関係は大切であるが、タンザニア人は人との関係構築を無意識的に大切にしていることが分かる。一つには挨拶の頻度の高さである。朝、昼、夜の一言はもちろんだが、先ほどまで会っていた人とSNSや電話で会話を再開するときも互いの調子の確認から始まる。この挨拶は、会話のリズムを作り、本題に入るまでの準備を整える。これまでタンザニア人と接してきて感じるのは、会話の内容よりも会話を通じて、互いの関係を深めることが楽しみの一つになっている点である。その過程で笑いが生まれ、感謝が生まれ、気づきが生まれ、再会を願う。一度会って話した後は、友人関係となる。さらに、この段落の冒頭で人と人を中心とした関係と記したのは、人と動物、人と自然を含めて、みんなで同じ土地に共生しているという感覚が強い気がするためだ。

成り行きは、前回お伝えした「ハクナマタタ」という言葉とも関係する。「大丈夫だよ、心配ないよ、何とかなるよ」を意味するこの言葉、さらには「焦らないで、ゆっくりで大丈夫、少しずつだよ」という意味を持つ「ポレポレ」を含め、やれることをやった後は、その結果を待ち、どうなるにしても受け入れようとする姿勢が強いように思う。この点は、宗教も一定の影響力を持っている面はある。何名かの友人も、例えば今仕事がない、今後の進学に十分なお金がないという現状の中でも、いつか神様が良いタイミングで何とかしてくれるという話を私にしてくれている。現実を受け止めつつ、より良い状態のために願うという行為が人々の拠り所となり、生活の一部であるという点での身近さを実感できている。

時間に関しては、友人から面白い話を聞いた。日本以外の一部の国では、物事が時間通りに始まらないというイメージは確かにそうであり、タンザニアでは予定通りに始まることはほとんどない。しかし、時間通りに始まらないのは、予定通りに物事を始めてしまうと受け入れる側の準備が間に合わないこともあるので、あえて時間に遅れることがマナーという話である。その話の真偽はさておき、タンザニア人は待つことと上手く付き合っている。行政サービス、交通サービス、ホテル、レストラン、セミナー、ミーティングなど全ての場面で待つ覚悟が必要で、イベントが時間通りに始まることは奇跡に近い。それにもかかわらず、遅いという声が発せられた記憶はない。提供側に一定の時間が必要という感覚は社会的な合意としてあるようで、私もそれを受け入れている(さすがに1時間以上料理が提供されないのは遅いと思ってしまうが・・・笑)。この待つことへの寛容さが、顧客目線で便利になりすぎた日本社会にほんの少しでも広まると、働く人が今よりも楽に、安心して仕事がしやすくなり、より素敵な社会になると感じる。

JICA専門家足立 伸也
1987年兵庫生まれ。
立命館アジア太平洋大学卒業。法政大学大学院修了(公共政策学修士)。現在同大学院博士後期課程在籍中。
組織の人材育成、企業の海外展開、新興国の社会課題調査などのコンサルタント、ケアラー(家族介護者)向けの事業開発、カイゼン・アプローチのアフリカ展開戦略策定などを経て、現在はタンザニア在住。『シン・ニホン』アンバサダー。エシカル・コンシェルジュ。
1987年兵庫生まれ。
立命館アジア太平洋大学卒業。法政大学大学院修了(公共政策学修士)。現在同大学院博士後期課程在籍中。
組織の人材育成、企業の海外展開、新興国の社会課題調査などのコンサルタント、ケアラー(家族介護者)向けの事業開発、カイゼン・アプローチのアフリカ展開戦略策定などを経て、現在はタンザニア在住。『シン・ニホン』アンバサダー。エシカル・コンシェルジュ。
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