2025年度日本の税収予測は、「78.1兆円」となる見込みだ。ちなみに、2024年の税収は73.4兆円程度であり、2024年度のみの定額減税2.3兆円(国税分)の影響を除いたベースでは、税収見込み額は「75.7兆円」となる。つまり、2024年度から2025年度への税収の伸びは、78.1―75.7=2.4兆円上回る予想だ(この前提は、トランプ関税が発表される前の予測)。この税収の伸びを何に使うかで、意見が分かれているようだ。もちろん税収の予測は景気次第で変化するので、多少のずれはある。しかし、問題はその様な多少のズレではなく、税収が増えたときにはその増加分を何に使うのかの問題だ。
多くの政党は、増加した税金は減税によって国民に返すべきであると言っている。しかし、少し待ってほしい。2025年度予算は、支出予定が115.5兆円に対して、税収が78.4兆円、その他の収入が8.5兆円、収入が合計86.9兆円しかなく、公債の発行、つまり借金が28.6兆円もあり、収支を計算すると、支出が25%もの借金で成り立っている。
普通に考えると余った収入は少しでも借金額を減らすために使うのが普通である。例えば給料が40万円で、支出が45万円の家計の場合、10万円の借金ができるからと言って、借金を加えて50万円の収入を喜んで、45万円の支出を更に増やすのは「たわけ者」に違いない。借金ができるからと言って、ただでさえ赤字の支出を50万円に増やそうとは誰も考えない。
このように、考えられないことを堂々と主張するのは、政治家をはじめ国民の我々が借金に慣れてしまったためだと思われる。近代の政府による経済政策の多くは、「ケインズ」の発案による政策だ。つまり、不況の場合、政府は大きな役割を果たすべきであり、財政赤字でもいいから公共事業などへの財政の投入、あるいは、減税などによって、有効需要を喚起する。政府の追加支出は国債発行を伴う場合が多いが、失業を減らし、景気回復のための財政出動、国債の発行は一時的なものである。前提として景気が回復すれば、税収が増加して財政は黒字になるので、債務は返済可能になると考えていた。
しかし、現在はそうなってはいない。不況の場合、大量の国債を発行して財政出動を行うが、景気が良くなって税収が増加しても今回のように、相変わらず、国債の減額あるいは借金の返済は行わず、むしろさらなる財政出動(臨時の給付金)やさらなる減税を唱えている政党が多い。
現在の景気について、分野ごとに景気が良い分野、悪い分野があると思われるが、インフレであり、金利が上昇して、企業業績が良く、法人税収が増えているところから見ると、全般的には「好景気」と言えるだろう。しかし、「好景気」時においても、さらなる財政出動や減税の話が出てくるとは、ケインズも「まさか」考えなかっただろう。ポピュリズム政党は、常に「現在」人気が出て選挙に勝てる政策とはなにかを探している。将来のことは全く考えてはいない。
このようなポピュリズム政党が選挙で勝利することになるのは、「国民の責任」でもある。責任を政治家や官僚に転嫁して、現在の利得のみを期待し、将来の社会の問題に目をつむることは、責任ある態度とは言えない。
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