さて、皆さんはGISという言葉をご存じだろうか?「Geographic Information System」日本語に訳せば「地理情報システム」。地図データを基にして様々な情報やサービスを提供しようというものだが、これが実は色々な場面で用いられていて実に奥深いのだ。身近なところで言えばGoogle Mapなどもその一つだろう。最近は単なる道案内ツールというだけでなく、表示されているお店やランドスケープをクリックすればお店や施設の情報や食べログの口コミ情報まで見ることもできる。地図と言えばそもそも、ある特定の目的地へ行くための水先案内人だったはずだが、今やどこへ行けば良いかまで教えてくれる、先生の役割を果たしてくれている感さえある。近い将来、「今のあなたの気分なら、今日はこのレストランへ行ったほうがいいよ!予約は僕がしておくから!」と地図があなたにピッタリの行先を教えてくれる日が来るかもしれない。
一方で、普段目にすることはあまりないかもしれないが、私たちにとって大事な情報を提供するサービスも担っているのが、GISだ。例えば、最近耳にする、下水道の破裂による土地の陥没事故や、頻繁に発生し、中々鎮火せず長期間避難を強いられる山火事等の災害に関わるサービスだ。公共サービス行政の行き届いたこの日本で、なぜ突然そのようなことが起こるのか、誰もが疑問に思うはずだ。ところがこれにもGISが大きく絡んでいる。例えば、日本の水道普及率はほぼ100%、下水道も約93%と言われている。その水道管やマンホール等がいつ頃どこにどんな材料を使って敷設されているかなどの情報は、もともと紙の台帳や図面といったもので管理されてきた。しかし、現在では水道で約95%、下水道では約78%の自治体がこの情報を電子化している。簡単に言えば、ここに挙げた電子化されたデータの多くは、前述のGoogle Mapと同様に地図上に埋め込まれたシステムとして、多くの自治体や住民に提供されている。なので、私たちはその情報を日ごろからチェックしていれば、前述のような突然の事故にあうリスクを避けることができるかもしれない。
また、同様に頻繁に発生する山火事被害についても、実は既に山火事や土砂崩れに関するハザードマップが公開されているのだが、恐らく我々の多くは普段自ら進んでその情報を見に行くことどころか、目にすることすら殆どないのが実情だ。対岸の火事、自分には関係のない世界の話と思わず、何かの機会にでも是非覗いてみてほしい貴重な情報だ。
ただ、一方で例えば先ほど挙げた上下水道の普及率に対して、そこに携わる地方自治体の職員数は約7万4千人で、人口1万人未満の自治体に至っては平均2名の職員しか携わっていない。情報の電子化も実は人口1万人未満の自治体では、各々水道約49%と下水道は約32%と下落することになる。(データは上下水道DX推進検討会資料より)。また、全国の水道管の総延長は約74万kmで10年後には耐用年数40年を超えるものが約41%の30万kmとなり、下水道においても総延長49万kmのうち約19%の9万kmが耐用年数を超えることになる。情報の維持メンテナンスという意味で言えば、一つ大きな問題があるのは、人手不足や情報不足によりインフラもシステムも維持メンテナンスが十分になされていないということだ。コスト面に人材面、ご多分に漏れずこの分野でも、分かってはいても追いつかない、あるいはどこから手を付けていいのかわからないという普遍の課題が存在する。
実直な日本人は、そうは言っても粛々とこの辺りの仕事を地道に進めていくのだろう。一方でこれらの対応に、昨今はやりの生成AIなど用いて、情報の自動更新やインフラ設備更新の予測予知などが出来るようになると、自治体職員のみならず住民の満足度が一段とあがるとともに、事故災害の回避予防が格段に進むのではないかと期待している。ひいては、世界の地震大国である日本のそうした取組は、政府が唱える「デジタル化社会日本」の世界への模範へともなり得るのではないかと考えている。
と言うものの、現状でも私たちの生活や防災に繋がるGISサービスを多くの自治体が提供しているので、改めてご自身の住む自治体のホームページを覗いてみてはいかがだろうか。きっとあなたの身近に役立つ情報が見られるはずだ。
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