日本は太平洋戦争後、憲法で戦力を持たないと決めて以来、東西冷戦の時代は、ひたすらアメリカの傘の下にいて、非武装を建前として守ればよかった。ソ連崩壊後、世界は多極化し、日本でも次第に自衛隊は常備軍と認められた。国家予算に占める軍事費の割合も長い間のGDP1%以内から、2%と倍増を目指している。
ウクライナ戦争で、アメリカのトランプ政権は休戦を訴え、「ヨーロッパの戦争」とみなして、直接的な関与(武器支援も含む)を少なくしようとしている。そうすると、今までアメリカの傘のうちにいた、欧州諸国の覚悟が試される。日本でも仮に近隣で紛争が起きても、それが「アジアの戦争」とみなされる可能性もある。最も可能性が高いのは、中国の台湾侵攻、あるいは朝鮮半島での北朝鮮の韓国への侵略だ。このいずれの場合も、日本の戦略はアメリカの関与を前提として成り立っているので、アメリカがウクライナと同様に、「アジアの戦争」とみなし、関与を弱める場合にはどうなるのか?特に中国の台湾侵攻は現実味が高い。その場合、日本がどの様に紛争に巻き込まれるのか?そのために、今回ウクライナ戦争においての「ドイツ」の立場はどのようなものか。そして、翻って、その立場を参考として、日本が極東での状況にどのように振る舞うべきなのかについて考えをまとめてみたい。以下、ウクライナに対してアメリカが「ヨーロッパの戦争」とみなし、支援を中止した場合の状況は以下の通りになるだろう。いずれもドイツの立場を述べている。
1. ウクライナ寄りに位置して、今まで以上の支援を行う。場合によると他の欧州諸国と連携し戦力も提供する。
2. ウクライナの支援よりも、ロシアと協調し、あるいは停戦を促進する。その後はロシアとの対話を継続する。
3. 双方と距離をおいて「知らんふり」をする。
いずれも一方的な場合を想定しているので、すべてがそのとおりにはならないが、あくまで仮定の次元での話である。最も考えられるシナリオは、1と2の中間で、支援を継続しながら、ロシアとも交渉をして戦争の停止を画策する方法だろう。ウクライナと近いドイツは、フランス、イギリスとは違い、そして第二次大戦のロシアとの悲惨な独ソ戦の影響もあり、3の選択はとれないだろう。その上、1989年のベルリンの壁崩壊についで、東西ドイツ統一の際に、旧ソ連にも全面的な承認を得た借りもあり、1の選択も取りづらい。この場合にドイツの強みは、「近隣諸国との同盟関係」である。NATOやEUをはじめとして、欧州は第二次大戦後に長期間を経て作り上げられた同盟関係がある。これが大きな強みだ。
では、日本が極東での紛争に巻き込まれた場合、特に台湾に対して中国が侵攻した場合ドイツと同じように、選択肢は次のようになる。ウクライナと同様にアメリカが関与を弱めた場合である。
1. 台湾寄りに位置して、金銭的支援、武器支援、あるいは直接の戦力提供を行う。
2. 台湾への支援を少なくして、中国と協調あるいは話し合いをして、あくまでも停戦を促進する。その後は、中国との関係を緊密にする。
3. 双方と距離をおいて「知らんふり」をする。
この場合も、近隣での戦争に対して完全に「知らんふり」は難しい(「知らんふり」をしたい気分はあるが)。しかし、日本の今の状態では、1あるいは2は、いずれも想定外(考えていない)の事態である。つまり、現実的な事態に対して、アメリカの関与が小さくなった場合を想定していないのである。アメリカの関与がない場合、日本は何も準備がないので、行動することが出来ない。この状態はドイツと似ているようで全く異なる(ドイツはすでに想定しているが、日本は想定をしていない)。その上、アメリカの関与がない場合の日本の同盟国はアジアには見当たらないのである。アメリカがアジアへの関与を弱めた場合、「同盟国のない日本」は、非常に困難な立場に立たされるだろう。
日本の独立から74年が経過しようとしている。もうそろそろ、アメリカ一辺倒の姿勢を改めて、日本独自の外交を作っていく必要がある。もちろんそれは、軍事重点のものではなく、平和を起点としたものだろう。そして、近隣のアジア諸国(中国を含む)との協調だ。長期的な外交姿勢が必要となってくる。
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