108号室の下川様に、末期の肝臓がんが見つかったのが今年の7月初めとのこと。現在約2カ月が経っている。とても体がだるそうで動作の一つ一つがゆっくりであり、トイレに行く際にはふらつくため見守っていないと危険だ。
しかし「トイレだけは自分で行きたい」とおっしゃり、介助ができる雰囲気ではない。家族の希望でがんの告知はしておらず、今後の生活についての話し合いもできない状態だ。診断時に余命半年と言われており、それが正しいのならあと4カ月しかない!時間がないのだ!
主治医は、家族に告知を反対されてためらっているという。
増野リーダーの意見で、まずは主治医が私たちの味方になってもらえるような作戦を実行。主治医からは「がんを告知することは当たり前のことだが、こういう施設では家族に反対されると面倒だからな。家族が賛成するのならもちろん本人への説明はするよ」との返事で、少々もどかしい。
増野リーダーから、家族が告知に賛成できるような説明をして欲しいと依頼すると、「今後状態が悪くなった時に選択すべきことはいくつかあるから、告知をしていれば本人にその説明はしやすいってことくらいかな」と医師の都合ばかりのように聞こえる。
思わず「下川様は、80年以上生きてこられて最期かもしれないんですよ。誰だってどう締めくくるかは自分で考えたいはずです。家族にも話しておきたいことだってあると思います。家族であってもそれを受け止めるべきじゃないかと思います!」と言ってしまった。
増野リーダーが慌てて「先生、すみません。でもこれは先生にしかお願いできない事です。下川様も家族も先生を大変信頼していらっしゃいます。どうかよろしくお願いします」とフォローし、主治医も「わかったよ」と言ってくれた。「しかし、急にどうしたの?今までだって同じようなことがあったのに、今回に限ってすごい勢いじゃないか」との主治医の言葉に増野リーダーは「今までは家族の意向に沿って物事を決めていたように思います。そしてそんなものだと思い込んでいました。でも、やはり本人の気持ちに添わないとこの仕事は面白くありません。少し遅いですが最近そう思うのです」
いよいよ家族にこの思いを伝える日が来た。
主治医は家族に、以下のような説明をした。
*2カ月前の診断時に比べると、確実に病状は進行している
*診断時には余命半年と言ったが、いつ何があってもおかしくない状態である
*今後、身体の怠さは増し、食欲不振・黄疸・むくみ・腹水・下痢・痒みなどの様々な症状もひどくなる。そうなれば本人はどのような病気なのかと疑問に思うはず。呼吸が苦しくなることもあるので死の恐怖も感じるはず
*それぞれの症状にどう対処するかを選択しないといけない
以上のことから、きちんと病気の説明をして、本人と一緒に今後のことを考えた方が良い。悔いの無いように本人の思いを聴いてあげてください。苦しみが少ないように医師として最大限努力する。介護職員も支えてくれる。当然最初はショックを受けられるかもしれないが、一緒に支えていきましょう。
「潜入レポ!介護の現場から」全体像
*介護施設にパート職員として潜入した池田出水。そこで見聞きしたことから現場の問題を表現していく。職員の様子・入居者や家族の様子・ケアの状況・往診医や、時には受診の付き添いなどでの病院の様子など、レポートは多岐にわたる。
*登場人物
介護の現場体験者:池田出水
介護施設にパート(月曜~金曜の11時~15時)として入社。頻回コールで職員の中では問題になっている山田様の部屋を仕事終わりに尋ね、話をするようになる。コールは物忘れをする不安が一因にあると分かり対策を打ち出す。また、夜間職員にベッドを蹴られるという事実も判明した。山田様との話の中で身体拘束を疑い、夜間の様子を何としても知りたくなり、入社2ヶ月が近づく頃に夜勤(月に2回)をすることに決めた。身体拘束は山田様が以前居た施設でのことと分かり、山田様は過去のトラウマに悩まされ、そのことが頻回コールの一因でもあったことが分かった。
入社2ヶ月を過ぎ、山田様との会話の中から認知症に対する差別があるのではと感じ、認知症の勉強に意欲も燃やす。
施設責任者(施設長):渡辺
日々、忙しそうで相談事ができる様子はない。
パートの先輩:大村
目の前の仕事をこなすことで精いっぱい。面倒なことには巻き込まれたくない??
常勤ヘルパー(リーダー):若林
ぶっきらぼうで怒りっぽい。しかし自分の間違いは素直に認め、向上心も持っている
共感してくれる職員(もう一人のリーダー):増野
池田出水の行動をよく見ており、いつも冷静で公平な判断をしていて正義感が強い。
虐待疑惑職員:吉田
202号室入居者:山田
頻回にコールを押され職員間では問題となっている。
202号室入居者家族:娘
203号室入居者
308号室入居者:朝山
106号室入居者:岩井
108号室入居者:下川
常勤職員
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