SNSとの適度な距離感と子どもの心を大切に
小学校非常勤講師・塾講師 原若菜(31歳)
こわい。大人になった今だってこわい。
私がSNSに対するイメージだ。
私は学生の頃、SNSを活用していなかったことで、除け者扱いをされたことがあった。
「え、高校生にもなってLINEやってないの?」
「連絡手段LINEじゃないの?今時?やばぁ。」
「めっちゃ不便やん。既読とか未読とかわからんやん。」
「うちらさぁ、グループLINEでやり取りしてるんだけど。」
「LINEって楽で便利だよ。やってないとか損してるよ。」
ガラパゴス携帯しか持っていなかった私は、LINEのアプリを入れていなかった。そのことが原因で私はクラス内で浮いた存在になってしまった。クラスの大半が放課後にLINEでやりとりをしていた。SNSを使いこなしている人は流行にも敏感で、LINEを含めたSNSをやっていなかった私は話題についていけないことも多々あった。
学生にとって、SNSは必要なものであり、小さな社会だと思い知った。
そんな経験から数年後、私は教員になった。子どもたちは素直でかわいかった。友だち同士学び合ったり遊んだり、毎日元気に過ごしているように見えた。時には喧嘩をすることもあったが、話し合ったり慰め合ったり少しずつ成長する姿が見られた。そんな姿を見て安心していたが、事件は裏で起こっていた。
放課後、LINEでクラスメイトの悪口が回ってきた。性的な画像が送られてきた。等といった内容の苦情の電話が学校にかかってきたのだ。学校内で起こったことではなかったが、どういう教育をしているんだと非難された。実際に目撃したわけではなかったため、対処も難しい。総合や道徳の授業で外部講師を呼んでまでSNSの指導はするが、やはり目の届かないところでは、指導が困難だった。
子どもにとってSNSは危険なものだと思い知った。
SNSをやっていなければ、除け者扱いをされる。
SNSをやっていれば、悪用する人が出てくる。
SNSをやっていても、やっていなくても、どちらにせよ人間関係で危険が伴う場合が出てくる。私はこれを身をもって体験している。
だからこそ、子どもからSNSを禁止することも、SNSを積極的に活用することも推奨できない。どちらが正しいとも正しくないとも言い切れないからだ。白黒はっきりできない難しい問題である。何を大事にするか。何を基準とするか。ルール化できることなのか。ルール化したら解決するのか。私にはわからなかった。でも、私は学校の授業を通して感じたことがあった。子どもたちの優しい心は大事にしたいということだ。
私は国語の授業でディベートをやった。国語の教科書をもとにディベート内容を決めていった。制服か私服か。給食か弁当か。旅行するなら海か山か。数あるテーマの中で1つ目を引くものがあった。
「気持ちを伝えるのはメールか手紙か」
私は圧倒的にメールが多いと思った。しかし結果は意外なものだった。クラスの8割ほどが手紙を選んでいた。
メールの方が良いと選んだ子どもは、はっきりと自分の意見を述べていた。手軽で簡単だ。便利だし緊張しなさそう。紙や鉛筆がいらないからいつでもできる。といったものだった。もっともな意見だと思った。
手紙の方が良いと選んだ子どもたちは手紙の良さを語っていた。
メールだと文字が同じで気持ちが伝わりにくいけど、手紙だと自分で書いたやつだから気持ちも込められる。メールだと簡単だけど、手紙の方がもらった時に嬉しいし喜んでもらえると思う。メールより手紙の方がドキドキする気持ちとかワクワクする気持ちとかがあっていいと思った。どんな紙に書くかとか、どんな色のペンで書くかとか、そうやって考えてやるから、気持ちを伝えるのにいいと思った。
子どもたちから出てくるステキな意見に私は感動した。
そうか。子どもたちは便利さだけで考えているのではないんだ。
SNSは今では多くの人とやりとりをするために必要不可欠なものになった。
でも、子どもたちだけのやりとりは危険が伴う。学校だけの指導では不十分な面も多い。
身近な大人のサポートが必要である。とはいえ、ニュースを見れば大人でもSNS関係の事件が起こる場合も多々ある。
まずは大人がSNSの危険性を十分に理解し、把握することが大切である。そして、素直で優しい心を持つ子どもたちの良さを大切に育て、SNSとの適度な距離感を保つことを心がけることが必要だと感じた。
私はSNSを使ってやりとりをするが、大人になった今でも手紙を書いたり葉書を書いたりしている。子どもたちが言っていたように、その方が喜んでもらえる気がするから。
ただの自己満足かもしれないが、SNSばかりにとらわれない生活をしていきたいと思っている。
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