人間は本来「異種恐怖―xenophobia」を持っている。姿形の違いや、言語での交流ができない存在に対しては、恐怖を感じるようだ。移動手段が歩く、走るのみであれば、移動距離は限られているので、時には言葉での交流ができない場合はあっただろうが、さほど異種恐怖を感じることは少なかっただろう。移動手段が発達すると、姿形が自分たちとは大きく違う存在や、言葉でコミュニケーションが出来ない存在に出会った場合、どのように接したら良いのか戸惑ってしまう。この現象は、昔から数多く見られた。移民に対する感情も、この様な異種恐怖に分類される。そして、異種恐怖の先にあるのは、異種の集団が自分たちを圧倒する危険である。人々は極めて少数の異種集団ではあまり恐怖は感じないが、それが急に大きな集団に遭遇すると、恐怖を覚えるようになる。つまり、急速な多数の異集団との遭遇は、あまり良い効果はもたらさない。このような人間が自然に持っている性質を、理性でどの程度変えることが出来るのかが試されるし、政策によってこの様な事態を引き起こさないようにすることも出来る。
(図1)は、1990年から2023年までの日本の登録外国人数の推移である。1990年から穏やかに増加しているが、2008年のリーマン・ショック後の一時的な減少はあったが、その後急速に増加している。その原因はもちろん、日本の労働力不足である。
(図1)
今後の移民に関する問題を考えるときに、欧州の状態は参考にすべきである。第二次大戦後、日本と同じように荒廃した欧州は、再建を必要として多くの移民が流入した。ドイツは中東諸国から、イギリス・フランスなどは、旧植民地からの移民を受け入れた。次の事件は、ソ連崩壊である。その後、旧ソ連圏の東欧諸国からの移民が増加し、1993年のEU設立とその後の東欧諸国のEU加盟によって、より多くの移民が発生した。しかし、これらに伴う混乱は多少見られたが大きなものではない。
(図2)
ドイツの例を見てみよう。2010年頃からのリーマン・ショックの回復期から、ドイツへの移民は年間50万人程度に落ち着いていたが、2010年頃から急速に増加をはじめ、2015年には年間200万人を数えるようになった(図2)。これと同時期、2010年頃に誕生した移民排斥を唱え、ナチスの習慣を否定しないAfD(ドイツのための選択肢)が生まれた。AfDは、2025年2月の総選挙で得票数20.5%を獲得し議席が倍増した。政権に入るまでにはなっていないが、危険な状態ではある。同じ様に移民排斥を唱える、マリーヌ・ルペン率いる、フランス国民戦線も同様にポピュリスト政党と言える。これらに共通している政策は「移民排斥」である。同じような動きが日本でも現れる可能性がある。
日本の状態が、ドイツやEUと似通っていること、従って、政策的な対処をすべきであることを指摘したい。日本への外国人労働者(移民)の流入は以下のとおりである。
(図3)
出入国管理庁データより筆者作成
新規外国人入国者(長期)は、2022年から2024年にかけて40万人から50万人である。これは、1995年から2010年までのドイツと同じ様な数である。ドイツと同じ様に、現在大きな混乱は起こっていない。今後の見通しだが、日本の生産年齢人口は現在のところ毎年50万人前後の減少であり、外国人労働者の日本への流入と見合っている。しかし、生産年齢人口は今後2040年までの15年間にかけて年間110万人減少のピークへと急速に進行する(図4)。過去の傾向から見ると、今後の外国人労働者の流入は最大年間100万人へと増加する可能性が高い(そうならなければ、生産は大幅に減少する)。
移民の急速な増加は、ドイツの例で示したように、社会的混乱を生じる。早急に、増加する外国人に対する対策を立てなければならないのである。
(図4)
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