SNSを使う選挙結果としての民主主義は、ポピュリズム政府とクライエンテリズム市民を生む。ポピュリズムとは、政治に関して理性的に判断するよりも、大衆の短期的な利益を優先して支持を求める手法、あるいはそうした大衆の基盤に立つ運動を指している。日本では、一時的な給付金の提供、減税、それに伴う赤字国債の大量発行の容認が相当する。クライエンテリズムは、人から受けた好意に対してはお返しをするという社会的交換の一種で、互酬的関係という。ある特定の人から何かを頼まれたときに、過去にその人から受けた好意に照らして断りきれないという感情だ。民衆が政府を構成する人たちを選ぶことが民主主義であるが、民衆が自分の利益のみを求める場合は、民主主義が機能しない。例えば、多くの人が支持した政治家に対し、自分の税を少なくし、補助金を増やすことを求めると、民主主義はクライエンテリズムとなる。
民衆がクライエンテリズム化すると、必然的にポピュリズム政府を生む。それまで権威主義的な世界の国々で民主化が進むとクライエンテリズムが盛んとなる。民主化は理念でなく、直接的な利益を要求するのだ。特に、経済的に困難な状態にある民衆は、理念よりも食料を要求するのである。
成熟した民主国家に、ポピュリズム政権が誕生しないわけではない。現代は次第に争いが少なくなっているが、中間所得層の数の低下によって、所得格差が大きくなっている。社会福祉は一時期を除いて、声の大きい方に偏りがちである。民主主義はこの傾向を後押しする。古来、封建的な政権においても、独裁的な政権においても、民衆の支持は必要なので、ポピュリズムは存在した。一度利権を得た人は、それを手放すことをしない。従って、利権は与える頻度が高くなると利権自体の政策に対する比重が大きくなっていく。この様な傾向は、どのようにして解決したらよいのか途方に暮れてしまう。
ポピュリズムを招かないようにしようとすれば、民衆の直接的要望に基づくのではなく、民衆から離れた政策決定をしなければならなくなる。つまり、官僚、エリート支配である。中国の科挙制度は官僚支配の典型であり、ポピュリズムに陥らないための制度であった。しかし、官僚支配にも難点はある。賄賂の横行であるし、政治が民衆からかけ離れることだ。つまり、民主主義を含むどのような政体にも難点はある。イギリスの政界で活躍したチャーチルの述べているように、「実際のところ、民主主義は最悪の政治形態と言うことが出来る。これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば、だが。」と言うことである。
クライエンテリズム市民とポピュリズム政府の組み合わせは、現在多くの民主主義国家の状態である。チャーチルの述べるように、民主主義が素晴らしいわけではない。他の王政や貴族制、官僚制に対して、「より良い」というだけである。しかし、人類が国家を作って以来5000年の歴史から見ても、民主主義以上の政治形態は見当たらないことも確かである。
最近でのヨーロッパにおいても、アメリカのトランプ政権と同じように、ポピュリズムの傾向は次第に強くなっている。多くの場合、その引き金を引いているのは移民問題である。自分たちとは異なる集団に対しての嫌悪感を強めることによって、ナショナリズムを強め、それを自分たち政党の支持につなげようとする傾向が強い。日本でも、移民が増加すると、それを利用しようとする勢力が現れ、ポピュリズムを強くするため注意する必要がある。
日本の予算でも、インフレに伴う一定程度の減税措置は仕方ないが、最近問題となっている、103万円の壁を改めて、所得控除を178万円まで拡張するなどの減税政策は、中間所得層から高所得層に対するバラマキであり、まさしくクライエンテリズム市民に対する、選挙での支持を狙ったポピュリズムの典型と言える
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