先発医薬品とジェネリック医薬品について

いよいよ2024年10月1日から、後発医薬品(ジェネリック医薬品)がある先発医薬品の処方を希望する場合、特別の料金として自己負担が発生するようになりました。料金は、先発医薬品と後発医薬品の薬価の差額の4分の1相当です。

(図1)特別料金の計算方法

(参照:厚生労働省「令和6年10月からの医薬品の自己負担の新たな仕組み」)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001282666.pdf

例えば、先発医薬品の価格が1錠100円、後発医薬品の価格が1錠60円だとしたら差額40円の4分の1である10円を、通常の1〜3割の患者負担とは別に支払うことになります。「いつも飲んでいるお薬」は1年に365日飲むわけなので、1剤あたり3650円。3剤あれば年間1万円を超える出費になります。これは「先発医薬品でないと体調が悪くなる」人に取っては見過ごせない変更でしょう。

では、そもそもなんでここまで政府は「ジェネリック医薬品への切り替え」に躍起になっているのか。一重に「医療費の圧迫」を抑えることに他なりません。こちらを見てください。これは令和5年に発表された日本の医療費の推移です。

(図2)令和5年度 医療費の動向

ちなみに、約20年前の2005年あたりの医療費を見てみると、30兆円前後で安定していて、約10年前の2015年には医療費は39.3兆円です。高齢化とともに、最近医療費はどんどん膨れ上がっているのです。

そこでジェネリック医薬品の登場です。

(図3)ジェネリック医薬品の品質確保等について


実際、厚生労働省で行われている「第4期医療費適正化計画( 2024〜 2029年度)に向けた見直し」でも明確に「後発医薬品の使用促進」が課題にあげられていますね。

(図4)後発医薬品使用促進の推移・現状

これまでも厚生労働省がテレビCMや啓発ポスター、薬局でのジェネリック医薬品への切り替えのススメなどの対策を取り、ジェネリック医薬品の割合はどんどん進んでいます。約20年前の2005年には32.5%だったジェネリック医薬品の使用割合が、2011年あたりから上昇し始めていき、2023年には80.2%にまで上昇しています。しかしです。都道府県別に見てください。

(図5)後発医薬品使用促進の推移・現状 都道府県別

NDBデータで発表されている「都道府県別」の後発医薬品割合を見ると、都道府県で大きな格差があることがわかります。最もジェネリック医薬品の切り替えが大きいのは沖縄県ですね。9割近くでジェネリック医薬品が処方されています。一方、ジェネリック医薬品の切り替えが進んでいないのは徳島県であり、74%しかありません。そのため、厚生労働省は「全ての都道府県で8割以上のジェネリック医薬品の使用率」を目標の1つにかかげています。

しかし逆にいうと、直近では8割くらいで横ばいになっているので、ジェネリック医薬品はいまいち2割の方は正規品で出し続けていることになります。なぜ完全に切り替えられないのでしょうか。

(図6)新潟県の医療機関を対象にしたアンケート

新潟県の医療機関を対象としたアンケート調査によると、ジェネリック医薬品に積極的でない理由として、例えば以下を挙げています。

● メーカー側からの情報提供に不安
● 適応症が完全に一致しない
● 同等性および有効性に不安
● 品質および安全性に不安

この中で一番問題にすべきなのは、やはり「品質および安全性への不安」でしょう。場合によっては命に関わる問題ですからね。

(図7)ジェネリック医薬品の品質確保に向けたレギュラトリーサイエンス研究

(参照)国立医薬品食品衛生研究所 薬品部
https://www.nihs.go.jp/kanren/iyaku/20200729-drug.pdf

特に問題視されているのは純度です。ジェネリック医薬品を採用する際の試験によると、原薬の純度は保たれていますが、ジェネリック医薬品の純度は必ずしも完全に担保されているわけではありません。乾燥減量や水分量の試験、強熱残分などの試験の品質規格としては「△〜✖」と判断されています。

また、後発医薬品の品質評価を884品目40の有効成分に対して行った試験によると「不適合」と判定された確率は約0.3%とされています。この数字が高いかどうかはみなさんの評価にもゆだねたいと思いますが、私は「やや高い」と感じますね。もしその薬が不整脈などの命に関わるものだったらどうでしょう。先発品なら回避できたかもしれない「0.3%」が健康に左右するものかもしれません。しかし、一方でそこまで大きくない数字というのも事実です。これをもとに「ジェネリック医薬品絶対反対」というのも極端でしょう。

社会的にはジェネリック医薬品推進は絶対といいながらも、目の前の患者さんを一番に考えたいという医師のジレンマもあります。したがって、そこには「正解」はありません。仮に患者さんが「ジェネリック医薬品で体調が悪くなった」といわれたら「そういう可能性がある」として対処するでしょう。それは患者さんの本音であり、ジェネリック医薬品だからイヤという単なる意固地ではないと思います。

私としては、みなさんもこうした日本の医療事情を勘案してもらいながらジェネリック医薬品も手に取っていただき、ただ体調が悪くなるようでしたら遠慮なくかかりつけ医や医療機関にご相談いただけたら幸いです。

東京西徳洲会病院小児医療センター 小児神経科医師秋谷 進
1992年、桐蔭学園高等学校卒業。1999年、金沢医科大学卒。
金沢医科大学研修医、2001年、国立小児病院小児神経科、2004年6月、獨協医科大学越谷病院小児科、2016年、児玉中央クリニック児童精神科、三愛会総合病院小児科を経て、2020年5月から現職。
専門は小児神経学、児童精神科学。
1992年、桐蔭学園高等学校卒業。1999年、金沢医科大学卒。
金沢医科大学研修医、2001年、国立小児病院小児神経科、2004年6月、獨協医科大学越谷病院小児科、2016年、児玉中央クリニック児童精神科、三愛会総合病院小児科を経て、2020年5月から現職。
専門は小児神経学、児童精神科学。
  • 社会福祉法人敬友会 理事長、医学博士 橋本 俊明の記事一覧
  • ゲストライターの記事一覧
  • インタビューの記事一覧

Recently Popular最近よく読まれている記事

もっと記事を見る

Writer ライター