現在行われている自民党と立憲民主党の党首選挙での争点について疑問がある。言うまでもなく、日本経済にとって大きな問題は、①人口減少 ②アニマルスピリッツの低下 の二つである。格差の問題もあるが、経済の低下が起こると格差は低位均衡になるので、経済の沈下を防ぐことが第一である。この経済対策が、かつてのように新自由主義的な格差を広めるような政策(法人税、所得税減税)や、補助金漬け、超金融緩和などの政策では「だめ」なことは当然である。これらはすべて一時的な対策だ。特に人口減少に対して、党首選挙に出る人たちが「まったく」意見を述べていないか、人口減少にはあまり寄与しない少子化対策に限られていることは不思議である。あたかも、移民あるいは外国人労働者問題はタブーであり、議論してはならないかのようだ。
人口減少に対して、少子化対策が登場することは当然だが、世界のどの国も少子化対策によって人口減少が緩和された例はない。数値でいうと日本の少子化対策によって上向く出生率は1.2(2023年)から、せいぜい一時的に1.5程度の増加を見るだけだろう。これでは人口減少は続くだけである。この傾向は、ヨーロッパの国ですでに実証されている。図1の2010年から2020年の西欧諸国での少子化対策の効果は、出生率で見ると、デンマーク1.5→2.0→1.5、フランス1.7→2.0→1.8、ノルウェー1.8→2.0→1.4等である。出生率は、少子化対策をやらないときと同等か、むしろ低下している。しかし、少子化対策は人口減少にはあまり効果がないからと言って、やらなくても良いわけではない。女性の負担を軽減する意味からも、社会保障政策として推進し、継続すべきである。ただ、再度言うが、少子化対策としては有効でないのだ。
(図1)西欧諸国の合計特殊出生率
金子隆一・明治大学特任教授作成
(資料: Human Fertility Database, Eurostat, Insee)
各国が、現在あるいは過去に、人口減少に対して取っている政策は「すべて」移民の促進である。ただ「移民」の促進は、大きな社会問題を引き起こす可能性がある。日本は最も人口減少が大きいにも関わらず「移民」問題の議論を避けている。しかし、現実には外国人労働者はコロナ以降、毎年20万人以上増加しているのだ。
国立社会保障・人口問題研究所の集計では、2020年日本の人口は1 億 2,615万人、そのうち日本人の人口は1 億 2,340 万 人である。従って、2020年時点での外国人は275万人程度となる。50年後、2070年の日本の人口は8,700 万人と推計されている。そのうち日本人の人口予測は7,761 万人である。従って、2070年時点での外国人の人口予測は939万人となる。その差は(つまり外国人の増加数)は、50年間で664万人、年平均で13.3万人と予測されている。外国人の人口比率は2020年の2%あまりに対して、2070年には総人口の 10.8%を占める。このような状態は、多少の上下はあっても、かなりの確率で生じるだろう。現実は、2023年にはこの数を遥かに上回り、年間22.6万人の増加となっている。今後さらにその数を増やしていくと考えられる。
外国人労働者は日本が好きなら日本に永住する。移民の基準を変えていても(日本政府は国際基準を採用していない)、多数の外国人が日本に永住することになる。つまり移民(永住外国人)が発生するのだ。外国人比率が10.8%になる将来に、ナショナリズムが強くなり、外国人の排斥運動が起こると国が二分され、非常に難しい状態となる。今から、やりたくなくても移民問題を取り上げる候補者が出てほしいものだ。
厚労省資料より
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