外国人労働者は日本への永住・定住を望むのか?

「移民」を認めていない日本では、短期間の労働で日本の労働力不足を解消してもらった後、「できるだけ早く出身国へお帰りください」という政策だった。しかし、人口減少が顕著となるに従って、外国人労働者は生産工程に対する寄与のみでなく、消費者としての日本経済に対する効果としても重要になっている。その意味で、「特定技能」制度には、一定の基準を満たした場合、日本への永住を認める仕組みが加わったのは望ましい。ただ、日本で「過酷」な「低賃金」での労働を行った後に、日本への永住を希望する外国人労働者がどの程度存在するのかが問題となる。一般的な日本の評価とは別に、実際に3~5年間の日本での在住、労働を経験した後に、外国人労働者が日本で暮らしたいかどうかが日本への定住の要となる。ただし、日本が定住政策を取らず、変わらず「できるだけ早く出身国へお帰りください」政策を続ければ、人口減少は加速し、日本で働く人はいなくなるだろう。早期帰国を促すような政策は、円高と送り出し国と日本との賃金格差が前提となっているが、この状況は次第に失われていくのだから。

外国人労働者に対して、日本での生活を続けてもらいたいのなら、何をすればよいのか、どのような制度が必要となるのかについて考えてみたい。鍵になるのは、「同化政策」から「統合政策」への移行である。その為には、第一に国際的な基準である「移民」を認める、あるいは、「移民」を歓迎する意志を示さなければならない。積極的に移民を受け入れるのであれば、その仕組みを送り出し国と協議しなければならない。再度言えば、協議する際に最も必要なことは、「移民を歓迎する意思」である。従って、日本国内での「移民」に対する賛否を明確にする必要がある。多くの人(特に政治家)が「移民」に対して言及することを避けている状態から、積極的に「移民」の可否を議論する雰囲気を作らなければならない。その結果、「移民」を最小限に制限する政策が取られても、それによって、大幅な人口減少が引き起こされても、日本国民の「意思」が示されたためであり、仕方がないことである。最も悪いシナリオは、議論をせず、何となく外国人労働者が増加していった後に、外国人に対する反感が強くなって、国内が二分されることである。これは、現在の欧米の状態であるが、このような失敗を繰り返さないように、日本の人口減少に対してどのような対処方法を取るかを、まだ議論の余地のあるうちに行わなければならない。この点で、政党や政治家が外国人労働者の「移民」問題を避けているのは良くない態度である。

さて、外国人労働者を受け入れると言っても、日本に喜んで永住してもらうためにはどのような条件が必要になるのだろうか。永吉(※1)によると、日本に居住する外国人の日本への永住希望は「意外」に多いことに気付く(図1)。永住者がこれからも住み続けたいと思うのは当然だが、仕事に関わる在住資格(多くは特定技能、技能実習生)でも、帰国希望者が22.5%に対し、永住予定者が39.7%と、定住者と同等に近い永住希望者が存在することに驚く。


(図1)在留資格による日本への滞在予定(『日本の移民統合』永吉希久子編より)

この結果から、日本に留まる動機付けは一般的な状況ではなく、個人が実際に日本で滞在し、労働した結果「日本をどう感じたか」に依存するということだ。

このことは、現在進行中の海外から受け入れた労働者に対する日本政府の対策に大きな影響を与える。外国人に対する「同化政策」ではなく、「統合政策」を進めるためには、文化的寛容性を持つことは当然としても、日本人と同じ労働政策を推進しなければならない。具体的には、日本への在留を期待するのであれば、労働環境を管理し、日本人と同等の給与、労働時間、昇進を行わなければならないのである。


※1:永吉希久子編『日本の移民統合』(明石書店)

公益財団法人橋本財団 理事長、医学博士橋本 俊明
1973年岡山大学医学部卒業。公益財団法人橋本財団 理事長。社会福祉法人敬友会 理事長。特定医療法人自由会 理事長。専門は、高齢者の住まい、高齢者ケア、老年医療問題など。その他、独自の視点で幅広く社会問題を探る。
1973年岡山大学医学部卒業。公益財団法人橋本財団 理事長。社会福祉法人敬友会 理事長。特定医療法人自由会 理事長。専門は、高齢者の住まい、高齢者ケア、老年医療問題など。その他、独自の視点で幅広く社会問題を探る。
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