「移民」を認めていない日本の外国人労働者に対する施策は、必然的に「同化政策」となる。「同化政策」とは、日本の制度、習慣に、外国人を当てはめるような政策である。そのため、現在の「同化政策」では、外国人労働者の生活幸福感が少ない。これに対して「統合政策」は、次の3点を行うことによって、外国人労働者の生活を豊かにする。それは、①社会経済的政策、②文化的政策、③心理的政策である。この中で、政府が出来るのは、社会経済的政策と一部の文化的政策である。自国文化と異なる考えや習慣を持つ人たちを日本で受け入れる場合には、極めて慎重に事を進めなければならない。なぜなら、歴史上も、現在欧米で起こっている事態も、政治家が自国民の窮状を、「外国人のせいにする」動機づけを無視できないからである。
図1:ASIA to JAPAN 2023年7月、日本で就業中の外国人材171名対象アンケートより
図1に示されるアンケートでは、外国人労働者の問題の多くは、上位4項目に表されている仕事上の問題であることに気づく。日本人上司や同僚とのコミュニケーションが出来ないこと、相談する相手がないこと、給与水準が低いこと、仕事がつまらないこと、などが問題となっている。これに対して、宗教や文化の違いによる不満はあまり多くはない。そうすると、改善すべき問題は、第一に社会経済上の統合を重点的に考える必要がある。
その為には、労働上の差別をなくすために、同じ仕事をしている場合には、日本人との差異をなくすること、昇進に際しても一定の能力があれば日本人と同様にすることなどの差別禁止条項を法制化する必要がある。これらについては、「同一労働同一賃金」の原則で、すでにパートタイム・有期雇用労働法が、2020年4月1日から施行されているが、未だに日本人の間でも、この原則が徹底されているとは言えない。男女間、あるいは正規労働者と非正規労働者との間に生じていた差別は解消されてはいないのだ。従って、改めて外国人労働者に対して就業上の差別を禁止する法令を作ることも必要だ。労務上の差別をなくすためには、賃金や就労状態のきめ細かい調査が必要となる。この調査は、地方自治体単位で行うことが望ましいが、そのガイドラインは国が決めなければならない。
「統合政策」を具体的に行うための第二には、文化的な問題がある。外国人労働者に対する「同化政策」では、現在、日本の文化に外国人労働者を合わせる仕組みになっている。上記のアンケートでは、文化の違いや宗教に関する不満はあまりないが、今後出てくる問題に対して、迅速に対応する必要があるだろう。ただし、「多文化主義」は必要であるが、行き過ぎると住民との摩擦を生み、かえって逆効果となる。他国の文化の許容には一定のガイドラインが必要だ(ただし現在よりも許容度を広くする必要がある)。
そして、文化政策でもっとも重要なものは言語だ。言語はコミュニケーションを左右する最も大きな要素である。「統合政策」では、次の二つの問題を明らかにしなければならない。一つは認可試験を日本語と英語の選択にすること、あるいは日本語「ひらがな」での質問とするなどの、難しい日本語のバリアを少なくする対策だ。二つ目は、日本語を理解してもらうために、外国人労働者の人たちを対象とした日本語教育を無料で行う方法を考えなければならない。そのための予算も必要だ。企業に対しても外国人労働者の人達に対しての日本語教育を義務化する必要もある。
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