日本の人口減少の脅威は徐々に現実の問題となっている。人口減少が経済や生活に及ぼす影響は、実際に消費し、就労する人の減少だけではなく、国民全体の心理状態の変化にも現れる。人口減少に伴う国民の心理状態は、保守的になり、安全・安心を心がけ、大胆さが失われ、保身に走る傾向である。アニマルスピリッツの低下も明らかだ。
現在の経済や生活に与える人口減少の変化とは別に、将来人口減少が続くと日本という国はどうなるのだろう。このまま人口減少が続いた場合の予測は(図1)のようになる。
(図1)
(図1)は、国連の2022年推計の世界の人口をもとに、日本と韓国の2100年までの推計を表わしている。この推計の延長線上では、2150年から2200年に韓国の人口が消滅し、2250年から2300年には日本の人口が消滅する可能性を示している(図上赤点線は現在の状態)。現在は人口減少の入り口に入ったばかりなので、この先の人口減少によって引き起こされる状態、あるいは、人口消滅になる社会はどのようになるかは、想像もできないだろう。この様子は、現在進行している日本の過疎地域の消滅状態に近い。
ヨーロッパの状態は次の(図2)に表される。
(図2)
ヨーロッパにおいて、スペインやイタリアは、日本や韓国と同様に2200年から2300年に人口が消滅する。これに対して、イギリス、フランス、ドイツは減少が緩やかで人口が消滅するような傾向はない。
アジアではどうだろうか?
(図3)
中国は現在の14億人をピークとして2100年には8億人以下にまで、人口が減少する。それに対し、インドは、2100年に16億人程度の人口を抱える。それに伴っての経済成長も顕著だ。パキスタンの人口は5億人にまで増加する。インドネシアは現在2.3億人の人口であるが、3億人にまで増加することが見込まれる。
(図4)
発展途上国では、ナイジェリア、コンゴ、エチオピアなどが、著しい人口増加が起こり、いずれも3億人以上の人口となる。これは大きな強みとなるだろう。
先進国で唯一人口が増加するのはアメリカ合衆国だ。現在アメリカ合衆国は3億人あまりだが、2100年にかけて1億人増加し、4億人に増える。
(図5)
先進国では人口増加が止まり、むしろ人口減少対策が問題となっている。マルサスは「人口論」の中で、自然人口の増加は生活資源を生産する土地の能力(つまり食料生産)よりも大きいと主張し、人口増加が続くと、生活資源は必ず不足し、破滅的な状態になると予告した。しかし、近年の「緑の革命」つまり、食料生産の大幅な増加によって、世界的な食料の不足は起こらず、むしろ人口増加は産業に対する「ボーナス」と考えられている。発展途上国は、現在の食料不足から離脱し、豊富な労働力によって、あるいは教育の進歩によって、産業の拡大が期待できるようだ。従って、人口問題は、国の勢いを左右する最も大きな要素となっている。しかし、人口は意図的な政策によって左右できない(減少や増加をコントロール出来ない)ものである。
現在の状態が続けば、2300年に日本が消失するまでの期間、いろいろの難しい状態が続くだろう。意図的な人口増加は難しい。唯一の方法は多量の移民を受け入れることだが、はたして日本にその能力があるのだろうか?
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