2070年(今から約50年後)には、日本人の人口は7,761 万人で、現在よりも4490万人(36%)減少する。これほど大きな人口減少であれば、相当数の外国人労働者を必要とする。それに伴って、外国人を短期労働者でなく、移民(定住して過ごす人たち)として考える必要がある。なぜなら、外国人労働者を労働の供給者のみでなく、消費する人たちであることも想定に入れなければならないからである。単なる賃金の稼ぎ手で、その大半を本国に送金する対象でなく、日本に腰を落ち着け、生活者として振る舞う存在となってもらわなければならないのだ。その為には、労働者単独でなく、家族単位としての外国人受け入れを推進しなければならない。
外国人を移民として受け入れる場合、2つの選択肢がある。統合政策(integration policy)と同化政策(assimilation policy)だ。統合政策は、外国人固有の文化を容認し、多様性に富む社会を新たに作り上げることである(この選択は難しい)。同化政策とは、日本の習慣や文化を変えないで、移民の人達に日本流のやり方に合わせてもらう方法だ(現在行っているやり方だ)。
移民政策で大切なことは、外国人を「周辺化(marginalization)」させないようにすることだ。「周辺化」とは、社会の隅の方に外国人を追いやることである。「周辺化」することは、外国人の犯罪や貧困化を促進する。「周辺化」は、多様性の乏しい「同化政策」から生まれる。つまり、「同化政策」と「周辺化」は同時に起こりうるのである。この様な状態を防ぐには、「同化政策」ではなく「統合政策」が必要となる。外国人のそれぞれの文化習慣も尊重しながら、同じ社会で暮らすことを「統合化」をいう。
「統合化」するためには、違う習慣を許容する必要がある。普遍的な倫理性があるもの(殺人や盗みなどの犯罪はいけないこと、交通ルールを守ること、ごみの分別など)は、変える必要はないが、多くの習慣は何となく行われているものが多い。例えば、学校での制服やランドセルの半強制、町内会に入るかどうか、PTAなどへの参加の有無、入浴の習慣(体にタトゥを入れている人は公共のお風呂に入れない)、あるいは自分の意見を素直に表明しないことなど、強い横並び意識から生じた習慣をどのように扱うかだ。これらの習慣は長い間日本に根付いているので、簡単に放棄することが出来ないものが多いが、すべての人に強制する必要もない。個人の選択を重視して、一律に強制しないことが重要だ。このように、同化政策でなく、統合政策を使う場合は、日本文化の一部変化を許容することも必要となる。
移民統合政策指数(MIPEX)にての日本の項目別点数(https://www.mipex.eu/japanより引用)
移民統合政策指数(MIPEX)は、外国人の権利保障を指数化したものだ。「労働参加」「家族結合」「教育」「保健医療」「政治参加」「永住許可」「国籍取得」「差別禁止」の8の政策分野について、各国の移民政策の専門家がそれぞれを数値化している。移民統合政策指数(MIPEX)は、統合化が高い国と、そうでない国とを区別する指標になる。加盟56カ国中、上位5位は、スウェーデン、フィンランド、ポルトガル、カナダ、ニュージーランドであり、下位は、サウジアラビア、ヨルダン、インド、インドネシアなどである。日本のスコアは100点満点中47点で、MIPEXの平均(100点満点中49点)をわずかに下回っている。これは日本が移民を受け入れる国であることをいまだに認めていないことが原因となっている。移民統合政策指数(MIPEX)において、日本が低い点数の分野は、教育33点、政治参加30点、そして最も問題となるのは差別の禁止で16点しかない。先に述べた、日本独特の習慣に外国人を合わせようとする試みは、同化政策だ。しかし一方で、日本人の習慣に合わせない外国人を表面的には容認しつつ、差別する(仲間に入れない)ことはもっとたちが悪い。ちなみに、日本人同士でも習慣に従わない人に対して差別することが行われている。
改革すべき分野で言えば、「家族結合」=日本では家族を呼び寄せることができない場合が多い、「教育」=外国人の子供向けの教育システムがつくられていないなど、その他各項目について不十分な点があるが、最も点数が低い「差別禁止」の場合、日本政府が「移民」を認めていない影響もあり、「差別」に対する法制度が不十分で徹底しないことは、外国人にとって多くの障害を生み出す政策につながる。日本は差別禁止政策が不十分なために、この分野では下位3カ国にはいり、韓国、北米、欧州の基準に大きく遅れをとっている。
総合的な、移民統合政策指数(MIPEX)の順位(https://www.mipex.eu/sites/default/files/downloads/pdf/MIPEX_results_infograph.pdfより引用)
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