“スマホ“なる略語が登場したのは2011年。アップルがiPhoneを発売したのが2007年、そして日本上陸は2008年7月11日。この日の朝日新聞夕刊(東京本社版)では、「国内で先行発売したソフトバンクモバイル表参道店(東京都渋谷区)前では、購入希望者の列が約1キロ、1500人を超えた」と伝えた。2023年の世界のスマートフォン出荷台数は約12億台(日本では約0.3億台)。このうちアップルが約2.4億台、サムスン電子が約2.3億台となっており、2社で世界シェアの4割を占める。
スマホという略語は定着し、老若男女を問わず多くに普及している。総務省の調査(2023.5)によると、スマホの世帯保有割合は9割を超えるとともに、個人の保有割合でもほぼ8割となっている。21世紀に入って最大のイノベーションの一つがスマホであるが、日本の電機メーカーではシャープ、FNCT(旧 富士通)、ソニーの3社を残してスマホビジネスから撤退した。国内では、この3社合計のシェアは約30%だが、国内市場に限定されるガラパゴススマホである。
一方、スマホの日本上陸の2年前の2006年に地上波テレビ放送のデジタル化に伴ってスタートした携帯電話・カーナビ向けの放送サービスが“ワンセグ”である。既存電波塔の東京タワーが位置する都心部では、超高層ビルが林立して影となる部分が多く、ワンセグなどの携帯機器向けの放送を快適に視聴できるようにすることを主な目的として634メートルの高さを持つ東京スカイツリーが作られた。NHKと在京民放5社が600メートル級の新しい電波塔を求めて「在京6社新タワー推進プロジェクト」を発足させたことで、新タワー構想推進計画が具体化したとされる。しかし、“ワンセグ”は今や死語になりつつある。iPhoneには元々ワンセグチューナーがない上に、国内3社やサムスン電子などのスマホにはもともとワンセグチューナーが搭載されていたが、この数年で搭載機種はゼロになりつつある。スマホの普及と通信インフラの高速化によって、今ではテレビ自体もインターネット配信に移行しているのが大きな要因である。
携帯電話通信規格の2G(第2世代)通信規格は、ほぼ全世界が欧州発のGSM方式で統一された。しかし、日本は当時の郵政省の政策で国内はPDC方式で統一された上に、当時のNTT法の縛りである“国外進出の原則禁止”などの関係でPDC方式が海外で採用されることもなかった。これは、通信のグローバル化の流れを見誤った結果であり、日本企業がスマホ開発に遅れを取ることにも繋がったと考えられる。
この反省を踏まえ、地デジ放送分野においては、官民連携で日本方式(ISDB-T)の普及に取り組んできた。総務省公開資料では、「2006年に日本方式を採用したブラジルと協力しながら、日本方式採用を各国に働きかけてきた。日本方式には、(1)国民の命を守る緊急警報放送、(2)携帯端末でのテレビ受信(ワンセグ)、(3)データ放送による多様なサービスといった、他方式にはない強みがある。日本方式の地デジ放送の海外展開では、この強みを相手国に示してきたことで、合計20か国(2023年3月現在)が日本方式を採用している。」と発表している。
しかし、ブラジルが日本方式を採用したのは、技術面というより外資系携帯キャリアと内資・民族系テレビ放送局との主権争いによるともされており、総務省の正式見解とは異なるのである。さらに、前述のように“ワンセグ”が世界標準のスマホに搭載されておらず、スマホという略語が普通に使われる一方、ワンセグと言う略語が死語になっているのである。ワンセグ放送良好化のための電波塔という目的ではなく観光地化している東京スカイツリー。“ものづくり日本”が凋落したのは、もちろん日本企業、特に経営幹部の経営戦略の見誤りが大きいが、政府(携帯電話通信や地デジでは総務省、半導体や液晶パネルなどでは経産省)のミスリードがあったことは否めないのである。米国では、政府当局とアップルが反トラスト法(独禁法)で訴訟沙汰になったと報道されているが、官民連携・国策・日の丸〇〇に象徴される日本と温度差を感じる。「政府が介入すれば企業の力は弱まる。(中略)良品に国境なし。良い製品は売れる。自由競争こそが産業を育てる」という考えを示し、国産四輪車開発などで中央官庁と正面から対立したのが本田宗一郎。このDNAこそが日本企業の国際競争力回復の源流であろう。
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