何かを考える(推論する)場合、演繹的推論と帰納的推論とが考えられる。演繹的推論とは、論理だけで結論に達する方法である。例えば、AさんはBさんより金持ちだ、BさんはCさんよりも金持ちだ、従って、AさんはCさんよりも金持ちだ。このように前提条件が正しく、論理規則に従うなら、演繹的推論は正しいことが保証される。日本が1200兆円の借金をしている、借金が増えると、そのうち貸し手が少なくなる、貸し手が少なくなると利息を多く取られる、その結果金利が上昇しインフレになる。従って、1200兆円の借金をしている日本は金利が上がる(インフレになる)だろう。このようなものも演繹的推論だ。
これに対して、帰納的推論は、一連の観察から正しいことを推定する。多額の借金をした国が20カ国あった、そのうち19カ国がインフレ(利率が高くなった)になった。従って1200兆円借金をしている日本はインフレになる確率が高いと推論する。これは帰納的推論だ。ただし、それでも日本はさほどインフレになっていない。この事実は、1200兆円借金があっても、インフレになるわけではないという、正反対の推論も導くことが出来る。帰納的推論にはこのような弱点もある。
注意すべき点は、現代の多くの推論がデータに基づく推定で、これらはすべて帰納的推論だ。しかし、必ずしもそれが正しいことを示しているわけではない。3人続けて女の子が生まれても、4人目が男の子である割合が高いわけではない(男の子の割合は相変わらず50%)。日本が1200兆円借金をしてインフレになっていなくても、この先インフレにならないと決まっているわけではない。1万羽の白鳥がすべて白いからと言って、1羽の黒い白鳥がいる可能性は否定できない。これらはすべてデータに基づく推論(帰納的推論)の弱点だ。
データに基づく帰納的推論の弱点は他にもある。データを用いる推論の多くは、お互いの相関性を示しているが、必ずしも相関性が因果関係を示しているわけではないことに注意すべきだ。鶏が鳴くと、夜が明けることが多い。それらの間には「相関性」はあるが、「因果性」はないと考えるとよい。鶏の体調が悪く、その日に鳴かなかったら夜が明けないわけではない。アイスクリームの売上と犯罪の多さの間には相関性はあるが、因果関係はない(多分、暑さによってアイスクリームの売上が増え、犯罪も多くなった)。推論をするためには、相関性は無用で、因果性のみが役に立つ。データの相関性だけでは、両者の因果関係は分からない。
これに対して、試行錯誤しながら正しい答えを見つけていこうという方法もある。実際の推論を使って何かを実行する場合、多くはこの方法を使う。まず、何かを実行してその結果を評価し、その内容によって新しい方法を考え実行することを繰り返す方法である。この方法は手堅いし、うまくやれば成功出来る可能性も高い。企業ではPDCAサイクル(P=プラン、D=実行、C=検証、A=改善)とも呼ばれているが、この場合、実行した後の行動が「結果によって変更される可能性がある」ことが前提となる。行動に変化を促すためには、結果の評価(検証)が大切だ。しかし、この結果の評価(検証)がうまくいかないことも多い。
検証を行うためには、結果を提示する必要がある。結果を提示することに時間を取られる(例えば厚労省の医療データは2年前のものである)、あるいは不正確なデータしか提示できない場合には、PDCAサイクルはうまく回らない。Cの検証が出来ないのだ。しかし、PDCAサイクルが回らないのは、データの確認が遅いこと、不正確なデータであること以外にも、いくつか要因がある。最初のプランで示される考え方に固執し、検証結果を見ようとしないこと、あるいは検証結果が持つ意味を誤って解釈する場合もある。あるいは、そもそも結果によって検証を行う気が無いことも多い。政治資金規正法を作って政治に金がかからないようにしようとしたが、あまり効果がなく、相変わらず金のかかる政治が行われているとすれば、結果を検証し、頻回に再度政治資金規正法を改正しないといけないが、その機運は無いようだ。
研究助成 成果報告の記事を見る
小林 天音の記事を見る
秋谷 進の記事を見る
坂本 誠の記事を見る
Auroraの記事を見る
竹村 仁量の記事を見る
長谷井 嬢の記事を見る
Karki Shyam Kumar (カルキ シャム クマル)の記事を見る
小林 智子の記事を見る
Opinions編集部の記事を見る
渡口 将生の記事を見る
ゆきの記事を見る
馬場 拓郎の記事を見る
ジョワキンの記事を見る
Andi Holik Ramdani(アンディ ホリック ラムダニ)の記事を見る
Waode Hanifah Istiqomah(ワオデ ハニファー イスティコマー)の記事を見る
芦田 航大の記事を見る
岡﨑 広樹の記事を見る
カーン エムディ マムンの記事を見る
板垣 岳人の記事を見る
蘇 暁辰(Xiaochen Su)の記事を見る
斉藤 善久の記事を見る
阿部プッシェル 薫の記事を見る
黒部 麻子の記事を見る
田尻 潤子の記事を見る
シャイカ・サレム・アル・ダヘリの記事を見る
散木洞人の記事を見る
パク ミンジョンの記事を見る
澤田まりあ、山形萌花、山領珊南の記事を見る
藤田 定司の記事を見る
橘 里香サニヤの記事を見る
坂入 悦子の記事を見る
山下裕司の記事を見る
Niklas Holzapfel ホルツ アッペル ニクラスの記事を見る
Emre・Ekici エムレ・エキジの記事を見る
岡山県国際団体協議会の記事を見る
東條 光彦の記事を見る
田村 和夫の記事を見る
相川 真穂の記事を見る
松村 道郎の記事を見る
加藤 侑子の記事を見る
竹島 潤の記事を見る
五十嵐 直敬の記事を見る
橋本俊明・秋吉湖音の記事を見る
菊池 洋勝の記事を見る
江崎 康弘の記事を見る
秋吉 湖音の記事を見る
足立 伸也の記事を見る
安留 義孝の記事を見る
田村 拓の記事を見る
湯浅 典子の記事を見る
山下 誠矢の記事を見る
池尻 達紀の記事を見る
堂野 博之の記事を見る
金 明中の記事を見る
畑山 博の記事を見る
妹尾 昌俊の記事を見る
中元 啓太郎の記事を見る
井上 登紀子の記事を見る
松田 郁乃の記事を見る
アイシェ・ウルグン・ソゼン Ayse Ilgin Sozenの記事を見る
久川 春菜の記事を見る
森分 志学の記事を見る
三村 喜久雄の記事を見る
黒木 洋一郎の記事を見る
河津 泉の記事を見る
林 直樹の記事を見る
安藤希代子の記事を見る
佐野俊二の記事を見る
江田 加代子の記事を見る
阪井 ひとみ・永松千恵 の記事を見る
上野 千鶴子 の記事を見る
鷲見 学の記事を見る
藤原(旧姓:川上)智貴の記事を見る
正高信男の記事を見る
大坂巌の記事を見る
上田 諭の記事を見る
宮村孝博の記事を見る
松本芳也・淳子夫妻の記事を見る
中山 遼の記事を見る
多田羅竜平の記事を見る
多田伸志の記事を見る
中川和子の記事を見る
小田 陽彦の記事を見る
岩垣博己・堀井城一朗・矢野 平の記事を見る
田中 共子の記事を見る
石田篤史の記事を見る
松山幸弘の記事を見る
舟橋 弘晃の記事を見る
浅野 直の記事を見る
鍵本忠尚の記事を見る
北中淳子の記事を見る
片山英樹の記事を見る
松岡克朗の記事を見る
青木康嘉の記事を見る
岩垣博己・長谷川利路・中島正勝の記事を見る
水野文一郎の記事を見る
石原 達也の記事を見る
野村泰介の記事を見る
神林 龍の記事を見る
橋本 健二の記事を見る
林 伸旨の記事を見る
渡辺嗣郎(わたなべ しろう)の記事を見る
横井 篤文の記事を見る
ドクターXの記事を見る
藤井裕也の記事を見る
桜井 なおみの記事を見る
菅波 茂の記事を見る
五島 朋幸の記事を見る
髙田 浩一の記事を見る
かえる ちからの記事を見る
慎 泰俊の記事を見る
三好 祐也の記事を見る
板野 聡の記事を見る
目黒 道生の記事を見る
足立 誠司の記事を見る
池井戸 高志の記事を見る
池田 出水の記事を見る
松岡 順治の記事を見る
田中 紀章の記事を見る
齋藤 信也の記事を見る
橋本 俊明の記事を見る