以前、私の意思伝達装置・「伝の心」や分身ロボットの「オリヒメ」を紹介しました。これらの機器も、コロナの中注目されて来たICTです。今世紀に入り、ICTを活用した障害者の社会参加が言われ始めましたが、少し下火になって来た事を書きます。
まずICTとは「Information and Communication Technology(情報通信技術)」の略で、通信技術を活用したコミュニケーションを指します。情報処理だけではなく、インターネットのような通信技術を利用した産業やサービスなどの総称です。コロナの中、テレワークやリモートで人とのコミュニケーションをとる事が出来たこともICTの恩恵と言えるでしょう。
今世紀に入ってから、ICTを活用して重度障害者の在宅ワークを支援するNPOや団体が作られました。私も、「伝の心」で就労につなげるためにホームページ制作の勉強でいくつかの団体にお世話になりましたが、今は休止・解散する団体が多いのが現状です。
パソコンを使って働ける作業所は多少ありますが、重度障害者は家や施設から出る事が困難です。今の仕組みは、作業所に通わないと行政の支援が受け難いのが現状で、就労意欲がある重度障害者はデイサービスに通うぐらいしかやる事がないのです。
作業所はたくさんありますが、パン屋、農業、内職などの作業が多く、知的、精神、軽度障害など特定の障害者しか通えません。ICTを活用して何かを始めようとすると費用や設備の面から断念する事業所が多く、テレワークが推進される中でも作業所のテレワークが認められ難いので、通える障害者しか作業所を使えません。意思伝達装置・「伝の心」や分身ロボットの「オリヒメ」を使って、自宅や病院のベッドの上から作業所とコミュニケーションをとりながら働く事は、テクノロジーの力ではできるし、今はスマホ操作が出来れば家や施設に居ながら働ける時代なのに制度が追い付いていません。
日本の障害者福祉は、障害者は障害者だけの世界で明るく楽しく穏やかにという考え方が今もかなりあり、共に生きる・共生という考え方がまだまだ乏しいのが現状です。人とは少し違うだけで社会に受け入れられにくい人が沢山います。
最近、ICTの普及により様々な人と関係が持てる時代になり、共生という考えもようやく出て来ました。しかし、福祉制度に関しては昔のままです。ICTは障害者の暮らしを劇的に変えられる技術なのに活かしきれていません。これを変えられるでしょうか?
もう一つの問題は、重度障害者を一般企業で見かけますか?
国が定める障害者雇用率は2.2%~2.5%で、行政機関は高めに設定されています。約40人に1人が障害者ですが、あまり目立ちません。
車椅子に乗っている障害者と乗っていない障害者
目がぼんやり見える障害者と全く見えない障害者
耳が聞こえにくい障害者と全く聞こえない障害者
寝たきりで介助が欠かせない障害者と歩けて自立している障害者
すべて同じ障害者として雇用率に反映され、日本では軽度障害者しか働けない仕組みがあります。先進国の障害者雇用率はもう少し高く、ある程度の割合で重度障害者を雇用する義務があります。ひとくくりに障害者とされる日本とは違い、障害の重さに応じた支援をしてくれる国もあります。
ドイツは重度障害者の雇用が義務で、補助やサポートも多く、雇用率も民間が5%で公的機関が6.5%です。私が学生のころ日本の雇用率が1.6%でした。30年で0.6%向上しましたが、日本の人口における手帳を所持している障害者の割合は7.8%です。これを単純計算すると7人に2人しか働けない雇用制度です。今は、どんなに障害が重くてもテクノロジーの進化で瞬きや視線、指一本でも動けば何でもできる時代です。
仕組みさえ変えれば重度障害者も家や施設や病院から働く事が可能なのに、日本の障害者雇用は時計の針が動かずに昔のままです。働く意欲のある障害者が普通に働ける社会が誰もが暮らしやすい社会だと思います。
ICTは人の気持ちを変え、色んな人を知る事ができます。共生という考え方が広く言われ始めて、差別や偏見も徐々に減りました。私のようにICTを使いコミュニケーションをとって社会参加する重度障害者も多少は増えたものの、まだまだ不十分です。重度障害者には行政の力が必要ですが、作業所は知的、精神、軽度障害が主で、障害者雇用率も重度障害者にとっては働きにくい仕組みです。もう一度、ICTを活用した共生社会づくりに光が当たって欲しいです。
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