現代社会は、家柄、権力、財産などの優劣によって地位が決まる社会から、メリトクラシー、つまり、能力によって地位や収入が決まる社会へと移行している。生まれつき商才に恵まれている人、理数系の学問が得意な人、これらは、普通科高校を経て有名大学へ進学し、現代社会で自分の能力に相当する高い地位を占める。また、美術の才能がある人、音楽の才能がある人、運動能力が秀でている人などは、小さい時から注目され、それぞれ専門学校に進学した上で、自分の才能を伸ばすことが出来る職業を選択できる。このように、メリトクラシーは、家柄や財産に左右されないで、自分の能力にあった職業を選択し、地位や収入を得ることが出来るようになった社会であり、近代の大きな進歩と言えるかもしれない。
しかし、ちょっと待ってくれ。メリトクラシーは万能か?はたして上記の能力がある人は国民全体のどれぐらいの割合なのだろうか。専門学校で技術を磨いて、それを職業に出来る人、作家、画家あるいは関連する職業、音楽家、プロスポーツ選手など地位と収入に恵まれる人は、社会を構成する大衆のごく一部だろう。また、一般的な商才、理数系の能力、あるいは対人コミュニケーションに秀でた人などは、前記の専門家よりも多いだろうが、それでも全体の三分の一程度に過ぎない。そうすると、多くの人は特に秀でた能力もなく、特異な才能もない人達だ。これらの人は、メリトクラシー万能の社会でどのように生きていけば良いのだろうか。
メリトクラシーは、その前提として、才能ばかりを取り上げているのではない。努力こそがメリトクラシーの世界では大きな要素となると言われている。しかし、一般的には、前記の専門的才能の豊かな人は、努力も人一倍行う傾向があり、普通の才能が高い人も、それなりに努力をする。つまり、秀でた結果が出れば、人間はその結果に発奮して、さらに努力するものなのだ。その反対に結果が出ない場合には、努力をする気が失せることも確かである。生まれつきの才能以外の努力を勘定に入れても、なお、メリトクラシーの社会で成功することが出来る人は少数派であると言える。
さらにメリトクラシーの欠点として、次第に能力以外の要素で地位や収入が決まる傾向になることが指摘されている。金持ちが、自分の子供を同じような高い地位につけようとした場合でも、貧乏な家庭が子供を高い地位につけようとしても、その子に能力がなければ失敗する。これは平等なのだが、金持ちと貧乏人で能力が同じであれば、成功する確率も同じとは言えない。成功するためには、能力以外の、金とか、人脈とかによって、金持ち階級が有利なことは疑えない。
メリトクラシーが全盛でない社会では、給与の格差は組織内でも見られたが、それほど大きくはなかった。しかし、メリトクラシー社会になると給与の格差はますます大きくなっていった。つまり、組織は能力のある人をなおさら優遇し、能力のない人を貶めるようになった。しかし不思議なことに、能力による給与の違いについての不満はあまり聞かれず、それは能力の差によって仕方がないと考えられた。むしろ、能力の差があるのに給与が変わらないことへの不満のほうが多い。
能力のある人に地位と権限を与える事はいいとしても、他の人と賃金の差をつけ、多くの金を支払うのは疑問がある。怠け者の弁護士と勤勉な掃除夫との関係、のんびり長生きする人と努力して早死にする人、自分の好きな仕事をしている人と好きでない仕事を我慢して仕事をしている人などを考えると、人生においてあまり大きな賃金の差異はそぐわないことがわかる。結局のところ、能力社会においては、給与の格差は少なくし、地位での差をつけるしかないだろう。仕事に関する指揮命令系統は十分配慮すると同時に、給与は差を大きく広げる必要はない。
賃金の差がある程度仕方がない時には、再分配でその差を縮めるようにすべきだ。その為には、最低賃金を引き上げて、生きていくための賃金を保証すること、高額な賃金に対する累進税率を高くするなどが必要となる。
秋谷 進の記事を見る
坂本 誠の記事を見る
片山佳代子・ルイス麻穂の記事を見る
Auroraの記事を見る
竹村 仁量の記事を見る
長谷井 嬢の記事を見る
Karki Shyam Kumar (カルキ シャム クマル)の記事を見る
小林 智子の記事を見る
Opinions編集部の記事を見る
渡口 将生の記事を見る
ゆきの記事を見る
馬場 拓郎の記事を見る
ジョワキンの記事を見る
Waode Hanifah Istiqomah(ワオデ ハニファー イスティコマー)の記事を見る
芦田 航大の記事を見る
岡﨑 広樹の記事を見る
カーン エムディ マムンの記事を見る
板垣 岳人の記事を見る
蘇 暁辰(Xiaochen Su)の記事を見る
斉藤 善久の記事を見る
阿部プッシェル 薫の記事を見る
黒部 麻子の記事を見る
田尻 潤子の記事を見る
シャイカ・サレム・アル・ダヘリの記事を見る
散木洞人の記事を見る
パク ミンジョンの記事を見る
澤田まりあ、山形萌花、山領珊南の記事を見る
藤田 定司の記事を見る
橘 里香サニヤの記事を見る
坂入 悦子の記事を見る
山下裕司の記事を見る
Niklas Holzapfel ホルツ アッペル ニクラスの記事を見る
Emre・Ekici エムレ・エキジの記事を見る
岡山県国際団体協議会の記事を見る
東條 光彦の記事を見る
田村 和夫の記事を見る
相川 真穂の記事を見る
松村 道郎の記事を見る
加藤 侑子の記事を見る
竹島 潤の記事を見る
五十嵐 直敬の記事を見る
橋本俊明・秋吉湖音の記事を見る
菊池 洋勝の記事を見る
江崎 康弘の記事を見る
秋吉 湖音の記事を見る
足立 伸也の記事を見る
安留 義孝の記事を見る
田村 拓の記事を見る
湯浅 典子の記事を見る
山下 誠矢の記事を見る
池尻 達紀の記事を見る
堂野 博之の記事を見る
金 明中の記事を見る
畑山 博の記事を見る
妹尾 昌俊の記事を見る
中元 啓太郎の記事を見る
井上 登紀子の記事を見る
松田 郁乃の記事を見る
アイシェ・ウルグン・ソゼン Ayse Ilgin Sozenの記事を見る
久川 春菜の記事を見る
森分 志学の記事を見る
三村 喜久雄の記事を見る
黒木 洋一郎の記事を見る
河津 泉の記事を見る
林 直樹の記事を見る
安藤希代子の記事を見る
佐野俊二の記事を見る
江田 加代子の記事を見る
阪井 ひとみ・永松千恵 の記事を見る
上野 千鶴子 の記事を見る
鷲見 学の記事を見る
藤原(旧姓:川上)智貴の記事を見る
正高信男の記事を見る
大坂巌の記事を見る
上田 諭の記事を見る
宮村孝博の記事を見る
松本芳也・淳子夫妻の記事を見る
中山 遼の記事を見る
多田羅竜平の記事を見る
多田伸志の記事を見る
中川和子の記事を見る
小田 陽彦の記事を見る
岩垣博己・堀井城一朗・矢野 平の記事を見る
田中 共子の記事を見る
石田篤史の記事を見る
松山幸弘の記事を見る
舟橋 弘晃の記事を見る
浅野 直の記事を見る
鍵本忠尚の記事を見る
北中淳子の記事を見る
片山英樹の記事を見る
松岡克朗の記事を見る
青木康嘉の記事を見る
岩垣博己・長谷川利路・中島正勝の記事を見る
水野文一郎の記事を見る
石原 達也の記事を見る
野村泰介の記事を見る
神林 龍の記事を見る
橋本 健二の記事を見る
林 伸旨の記事を見る
渡辺嗣郎(わたなべ しろう)の記事を見る
横井 篤文の記事を見る
ドクターXの記事を見る
藤井裕也の記事を見る
桜井 なおみの記事を見る
菅波 茂の記事を見る
五島 朋幸の記事を見る
髙田 浩一の記事を見る
かえる ちからの記事を見る
慎 泰俊の記事を見る
三好 祐也の記事を見る
板野 聡の記事を見る
目黒 道生の記事を見る
足立 誠司の記事を見る
池井戸 高志の記事を見る
池田 出水の記事を見る
松岡 順治の記事を見る
田中 紀章の記事を見る
齋藤 信也の記事を見る
橋本 俊明の記事を見る