「最近デイサービスの新規申込みが低下している。まずいことだ! 系列の介護支援事業所(ケアマネジメントを行うところ)は、我々のデイサービス事業所にあまり紹介していない。」そこで、介護支援事業所のケアマネジャーに対して、「もっとケアプランでのデイサービスを増やすように、そして、我々のデイサービス事業所に多く紹介するように指示した。」これは、日常的に行われていることのように思われるが、間違ったやり方だ。ケアマネジメントは公的なものであり、私的利益のために使うことは許されない。介護の必要な何らかの障害を持つ高齢者は、それぞれ独自の身体的、精神的障害を持ち、その上で、自分が望むように生きたい、生活したいとの要望を持っているはずだ。そして、普通の生活を実現するためには、障害をどのように評価し、能力の向上を目指し、援助をどのように提供するかについて、公的な立場から評価しなければならない。どのようにすれば生活が維持出来るのかということには一般的な法則がある。これが「ケアアセスメント」である。その上で、高齢者本人(あるいは後見人)の希望を加味して「ケアプラン」を決めるもので、決して事業者が左右するものでも、本人や家族の願うようにするものでもない。ケアマネジャーに系列の在宅サービスを多く使うように指示するなど、もってのほかである。
上記のような指示が通用するのは、介護支援事業所が行うケアマネジメントが、公正に行われていない証拠である。このようなことが、日常的に行われているのは、ケアマネジメントと、サービス提供者が同じ事業会社あるいは法人の傘下にあるからである。つまり、ケアマネジメントの独立性、公益性が保たれていないのだ。
ケアマネジメントは下図のような過程を経て実行される。
竹内孝仁による
このうち、情報の公表からニーズの評価に相当するのが、いわゆる「ケアアセスメント」であり、それに基づき、「ケアプラン」の作成が行われる。ケア実践後、モニタリング(ケアが行われた結果どうなったか)、ケアプランの再評価を経てニーズの再評価が行われ、「ケアプラン」の修正がされる。「ケアアセスメント」は、医療や看護の知識、高齢者の心理、社会性などを「専門的」に考えて決めるものだ。「ケアアセスメント」に基づき、「ケアプラン」が決められる。
介護保険の逼迫(費用の増加)が進んでいる状態で、、ケアの効率化、あるいは生産性の向上は、このケアマネジメントの内容に大部分が委ねられる。その為には、第一に、ケアマネジメントを行う介護支援事業所と介護サービス提供事業所を切り離す必要がある。具体的にはケアマネジメントを行う介護支援事業所の公営化である。あるいは、経過的処置として同じ事業会社のケアマネジメントを行う介護支援事業所とサービス提供事業所の関係を制限することだ。もちろん、過疎地域ではこの制限を緩和してもよい。第二に、ケアマネジャーの研修の強化、質の向上と、資格の適正化である。特にケアアセスメントの強化が必要だ。ケアアセスメントを行う医師、看護師、理学・作業療法士、社会福祉士と、一般のケアマネジャーの振り分けである。第三に、ケアマネジメント過程の自動化、AI化である。これは第二の問題と関係する。ケアマネジメントの自動化は、さほど困難ではない。現在のケアマネジャーのアセスメント能力はさほど高くないので、それに匹敵する、あるいはそれを上回る電子化は可能である。ケアプランの作成は、さらにずっと簡単だ。モニタリングも、必要な項目を列記すれば、半自動的にケアプランの変更はできる。人間は、修正されたケアプランをチェックする業務が任される。
ケアマネジメントの改善は、介護保険発足当初からの課題であった。介護保険の発足当時、ケアマネジャーの不足から、サービス提供事業所との併設や、不十分な知識のケアマネジャーの登用を行わざるを得なかった。以後何回か、問題の改善が企画されたが、実現せずこの状態が続いている。現状を見ると、居宅サービスでのデイサービスの使い過ぎと、訪問サービスの合理性のなさ、サ高住などでの限度額いっぱいのサービス提供が行われていること、高齢者の自律性を軽視して、施設に入居させることが良いと考えている家族やケアマネジャーが多いことなど多数の問題がある。
介護報酬の引き上げと、介護保険料を維持することは両立しないように思われる。しかし、外部からの資金の導入(一般会計からの補助)は、「保険」の性格から考えて、適当ではない。しかし、現在の議論は、供給側の合理性を高める方法を、IT化、それも監視強化以外には、あまり考えていないように思われる。介護保険の場合、その基本はケアマネジメントにあり、この合理性を高めることが介護保険改革の主たる方法になる。
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