個人で事業を行うこともあるが、多くの場合には法人(会社)を立ち上げる。一般的に営利会社の目的は儲けることだ。品良く言えば「利益」をあげることである。法人の多くは「株式会社」なので、会社が利益を上げることは、株式を持っている株主が利益を得ることになる。小企業の場合は、株主は事業者本人か身内の場合が大部分であり、利益は本人あるいは身内の利益となる。「地域のため」あるいは、「社会のため」とは言っても、利益が当面の目的であることは否定できない。利益を上げる目的でも、結果的に地域に貢献することがあることも確かである。が、株式会社が利益を度外視して地域貢献をすることは出来ないことも確かである。
会社が活動する場としては「市場」がある。「市場」では、悪辣なことを行えば、「信用」がなくなり、「市場」にとどまることが出来なくなる(と言われている)。「市場」は浄化作用を持っている。しかし、時には「カルテル」や「談合」が行われて、「市場」機能が損なわれることもある。従って、これらのルール破りに対しては、公的機関、例えば、「公正取引委員会」が監視しているが、時には監視の目をくぐって反市場的な行動をおこなう会社もある。いずれにしても、「市場」は取引を公正に行うように工夫し、それぞれが利益を得るように行動することを期待されている。営利会社は日本に、368万社存在する。アダム・スミスの唱えるように、皆が利益を追求することによって、市場が円滑にまわり、社会が繁栄することも事実である。
しかし、時には、「市場」機能が発揮出来ない場合もある。相手が対価を支払うことが出来ない場合である。貧困に陥った人たちが、教育を受けようと思っても、その対価を支払えない場合もある。この場合、公的な補助や民間からの寄付によって、対価を肩代わりする。また、障害を持ち援助が必要だが、十分その対価を支払えない場合、同じように公的補助や民間からの寄付によって支払いを代行することもある。この様な場合は、公的機関がサービス(教育や援助)を提供しても良いが、その代わりに業務を代行できる「非営利機関」が必要となる。これらの非営利機関は、公的機関の代わりに事業を行っているので、「利益」を目的とせず、行動(事業)を行うこと自体を目的とする。しかし、収支の帳尻が合わなければ、毎年事業を続けることは出来ない。従って、これらの非営利組織にも経営は必要だが、営利企業と異なり、その目的は行動(事業)であり、行動の優劣はその成果にあって、利益額にあるわけではない。非営利組織が毎年多額の利益を計上しても、誰のものにもならないし、無意味である。
日本に非営利組織は、医療法人58,005、学校法人7,806、社会福祉法人21,003、宗教法人179,952、NPO法人51,408、公益法人9,794と数多く存在する。これらの非営利法人は、利益を目的としないので、法人内に蓄積された利益(資産)は、誰にも属することはない。あえて言えば、資産が残れば再投資や事業の補充に使われるべきものである。資金源が政府の補助金であれば、溜め込むことは不当で、年度ごとの厳密な管理をしなければならない。資金源はその他に、公的保険からの支払い(医療保険や介護保険)がある。これも厳密な管理が必要だ。これに対して、民間資金つまり、民間からの寄付によるものは、公的資金よりも柔軟性を持って当然だ。しかし、そうであっても、税での優遇を受けている場合には、収支の公開、透明性が必要となる。
日本では、営利組織と非営利組織との違いが十分に認識されていないように思われる。ネット上には、「特養」を数千万円で売却するとの記事がある。つまり、「特養」単独では売却できないので、所属する社会福祉法人共に売却対象となっている。そうすると、売却して得た資金は誰に入るのだろうか? 持ち分がない法人であれば、解散すると政府に資金は帰属するので、理事あるいは個人が拝借することも出来ない。原理的には法人を買収すると、買収した法人が自分の金を自分で受けとることになるが、実際にはそうでなく、誰かが掠め取っているのだろう。
その他、非営利組織の資金を活動に投資するか、あるいは賃金に回すかしないで、トンネル会社を通じて、営利団体に回している場合もある。例えば、材料を高値でトンネル会社を通じ非営利法人に卸し、差額を営利会社が吸い取るなどの手法だ。公的監査では、資金が公正に使われていることを調べる必要があるが、一般的な収支と共に、トンネル会社への支払いを重点的に調査すべきだろう。
非営利法人の認識が不十分な日本では、営利法人と異なり、事業自体が目的であることが十分に経営に認識されていない。一定以上の資金が営利法人に溜まっていることは、日本経済の活性化を阻害する要因であるが、同様に非営利法人に資金が滞留することも、より一層マイナス要因になるだろう。
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