政治地図をわかりやすく分類する

政党の分類は、左派、右派、どちらか? あるいは保守か革新か? などの分類が一般的である。しかし現代では、左派は昔のように、マルクス主義を信仰しているわけではなく、革新と称される政党が必ずしも、社会の改革をやろうとしているわけでもない。最近では、保守政党と目される自民党も、労働組合である連合と話し合いを行っている。実現不可能な、思いつきだけの思想を除くと、資本主義社会を左右あるいは保守革新の対立でなく、3つのタイプに分類することが効果的である。この分類は、現代の考え方を反映するために役に立つ。3つのタイプとは、保守主義、新自由主義、社会民主主義である。日本のそれぞれの政党も、このような3つのタイプに沿って分類すれば良い。ただし政党を単純に3タイプのどれかに分類出来るわけではなく、どの政党も3つのタイプのいずれかに軸足を起きつつ、それぞれから少しずつ影響を受けている。

(エスピンアンデルセン、福祉資本主義3つの世界)

保守主義は、コーポラティズム(またはコミュニティ主義)とも言われ、伝統と社会の連帯を重視する。伝統を重視することは、急激な社会制度の変化を望まないことである。ただし、改めなければならない制度は変更する。この場合も、保守主義は社会の連帯を重視するので、改革はゆっくり行われる。保守主義の場合、社会の構成単位として個人よりもコミュニティを重視する。コミュニティの最小単位は家族であり、地域である。日本社会は表面的に、あるいは、法的には、個人が社会の構成単位であるかのように言われるが、マスコミを含め根底には、家族単位、あるいは地域単位の考えが強い。そして、伝統を重んじる考えも強い。自民党はこのような勢力を代表している。反面、自民党は小泉内閣が行ったように、個人の自由が最も大切であるとの、新自由主義的考えも持っているようだ。さらには、色々の社会保障(こども予算など)に対しては、社会民主主義的側面もある。このように幅広い政策を持つ政党は、政権に近づきやすいが、その核心がどこにあるのか不鮮明であり、その場限りの都合によって、立ち位置を変化させる。結果的に政策は短期的利益を伴う政権維持のためのみになりやすい。つまり、ポピュリズム的な政策に陥りやすく、長期的視野が欠ける傾向がある。そして政策を貫く倫理的視点が少ない。

これに対して、新自由主義は、個人の自立を目指し、個人の自由を第一とする。そして、政府の役割は限定的なものとする。どちらかと言うと、企業家に受け入れられやすい考え方である。自由こそが最も重要であり、自由を阻害するものは、伝統であろうと、社会保障制度であろうと、良くないものと考える。自由が基本なので、能力によって報酬や地位に格差が生じることは、ある程度仕方ないと考える。しかし、スタート時点の差異、つまり、親からの資金相続、あるいは地位を継承することは、機会の平等を阻害するものと考えられている。かつての「小泉-竹中」路線はこの勢力の代表だ。いまでも、各政党の中に、新自由主義的考えをもつ政治家は多い。

社会民主主義は、個人単位の社会を目指し、個別的考えを元にしている点では、新自由主義と同じであるが、国家の関与を多く求め、自由よりも平等に力点を置く考え方である。平等を実現するために、社会保障の充実をはかり、企業の活動に対して一定の制限をかけることなどが必要と考える。そして、格差解消を目指し、市場での行動規制(独占的取引、あるいは優越的取引の規制)、あるいは労働規制(解雇、労働環境など)が必要と考える。それでも残る格差を再分配にて緩和する。従って、特に貧困層に対して手厚い補償が必要であると考える。例えば、最低賃金を引き上げること、生活保護の拡充などである。この点では、日本に合った考え方のように思えるが、近年、補償はするが、財源については沈黙する傾向が高まっている。社会民主主義的に大きな国家が必要であるとすれば、所得税とともに消費税は必須である。かつての民主党、あるいは現在の立憲民主党がこの勢力に相当するが、税に関して消極的な点が問題となるだろう。

日本維新の会は、基本は保守政党のようだが、新自由主義的側面も強く持っている。新自由主義政党なら自律的生活を目標として、余分な支援は切り捨てる必要があるが、現在の日本で支持を伸ばすには、社会民主主義的要素が必要になるので、どのような判断をするのかが問題だ。

共通しているのは、どの政党も、国民に不人気な増税には反対のようである。財源に関する悪役を官僚に押し付けて、良いとこ取りをする事はできない。

 

福祉資本主義3つの世界の中での各政党の位置

公益財団法人橋本財団 理事長、医学博士橋本 俊明
1973年岡山大学医学部卒業。公益財団法人橋本財団 理事長。社会福祉法人敬友会 理事長。特定医療法人自由会 理事長。専門は、高齢者の住まい、高齢者ケア、老年医療問題など。その他、独自の視点で幅広く社会問題を探る。
1973年岡山大学医学部卒業。公益財団法人橋本財団 理事長。社会福祉法人敬友会 理事長。特定医療法人自由会 理事長。専門は、高齢者の住まい、高齢者ケア、老年医療問題など。その他、独自の視点で幅広く社会問題を探る。
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