潜入レポ!介護の現場から 第14話 「認知症差別‐続編‐」

「差別」をしている意識もなく、気づかないままいつのまにかしている差別。何もできない分からない人と勝手に思い込んでの差別。理解力も判断力も無いのだから、施設に入居するのは当たり前であるし、子供同然と思っている真の差別。
いずれにしても、その差別を受けている人にとっては、施設に入居したからには自分の方がお世話をされている下の立場なので職員に従わないといけないと感じてはいるものの、子供扱いされることはやはり悔しいのだ。

 

増野リーダーは、山田様に勉強会で話をしてもらえるように施設長を説得した。増野リーダーと二人で山田様にお願いに行き状況を説明したところ、少し悩んでいらっしゃったが、「自分が役に立つのなら・・」と引き受けて下さった。

3回目の勉強会の冒頭で、増野リーダーが山田様の頻回コールの原因と対策を説明した。
現在はコールがほとんど無いことも職員数人に確認し、このことをどう考えるべきかをディスカッションした。「認知症差別」についても話題にした。

原因が分からないコールはイライラする、認知症の診断がついていれば、何もできない人というイメージを何となく持ってしまう、認知症の人は理解力もなく判断もできないから、何でも援助が必要だ、朝山様のように認知症の重度の方はやはり何も分からないのではないか、一生懸命援助をしているのに何が悪いのか、などの意見。

原因が分かり、対策があればこんなに上手くいくとは思わなかった、正直なところ山田様は認知症でコールの意味も分からず押す困った人と思っていたが、コールをする理由があると分かると悪いことをしたと反省している、コールだけでなく援助拒否などにも原因があるのではないか、認知症が重度か軽度かは関係ないのではないか、などの意見が噴出した。

中には、このような内容は考えたことも無かったが大事なことだ、自分の身内が認知症になったら介護が大変で入居を考えるかもしれないが、今の施設の状況では入居をさせたくない、などの意見もあった。

ここで山田様に登場していただき、職員より立場が下であると感じたり、子供扱いされ悔しいと感じたりしていることを話してくださった。

一同静まり返り、中には泣いている職員もいた。
山田様が退室された後、増野リーダーが山田様も朝山様もそして私たちも同等の人間であり、楽しい感情や嫌な感情も同じだ・・・・・と熱弁を奮った。
そして、全会一致で差別を無くすこと、コールや援助拒否の理由を一人一人探っていくという結論に行き着いた。

いろいろな状況で差別はあると思うし、個別の分析も大変かと思うが今後の視点として行こう。
 

 

 

 「潜入レポ!介護の現場から」全体像
*介護施設にパート職員として潜入した池田出水。そこで見聞きしたことから現場の問題を表現していく。職員の様子・入居者や家族の様子・ケアの状況・往診医や時には受診付き添いなどでの病院の様子などレポートは多岐にわたる。

 

*登場人物
介護の現場体験者:池田出水
介護施設にパート(月曜~金曜の11時~15時)として入社。頻回コールで職員の中では問題になっている山田様の部屋を、仕事終わりに尋ねて話をするようになる。コールは物忘れをする不安が一因にあると分かり、対策を打ち出す。また、夜間職員にベッドを蹴られるという事実も判明した。山田様との話の中で身体拘束を疑い、夜間の様子を何としても知りたくなり、入社2ヶ月が近づくころ夜勤(月に2回)をすることに決めた。身体拘束は山田様が以前居た施設でのことと分かり、山田様は過去のトラウマに悩まされ、そのことがコールの一因でもあったことが分かった。
入社2ヶ月を過ぎ、山田様との会話の中から、認知症に対する差別があるのではと感じて認知症の勉強に意欲も燃やす。

 

施設責任者(施設長):渡辺
 日々、忙しそうで相談事ができる様子はない。

 

パートの先輩:大村
 目の前の仕事をこなすことで精いっぱい。面倒なことには巻き込まれたくない??

 

常勤ヘルパー(リーダー):若林
 ぶっきらぼうで怒りっぽい。しかし自分の間違いは素直に認め向上心も持っている。

 

共感してくれる職員(もう一人のリーダー):増野
 池田出水の行動をよく見ており、いつも冷静で公平な判断をしてくれ正義感が強い。

 

虐待疑惑職員:吉田

 

202号入居者:山田様
頻回にコールを押され職員間では問題となっている。

 

202号室入居者家族:娘
203号室入居者
308号室入居者:朝山様
106号室入居者:岩井様
常勤職員
往診医

ペンネーム池田 出水
「これからの日本には介護サービス業界こそが必要!これぞ社会の根幹!」と考え、それを支えるべくこの業界に飛び込む。
昨今の介護サービスの現状を憂う大和撫子。
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