産業構造が変化し、今までの製造業は縮小し、コミュニケーションを主体とする産業が盛んになっている。例えば、ITを使ったコミュニケーション、各種の対人サービス等だ。製造業は確実に機械化され、人間の登場する余地はなくなるだろう。しかし、その反面、コミュニケーションを主とする仕事が飛躍的に増えてくる。例えば、医療では、診断や治療を行う今までの医師像から、説明を行い、病人に寄り添う医師像へと変わってくるだろう。診断や治療は、大幅にAI化され、従来の医師が行っていたアナログ的な診断や治療がなくなるからだ。その一方で、看護師の役割は今よりずっと重要になる。同様に、介護士も身体的な介護の比重は減少し、コミュニケーションを行う主体としての介護の重要性が増してくる。ただし、身体的介護が無くなるわけではなく、自律性の増した、あるいは、自律性を促進する、PT(Physical Therapy―理学療法)、OT(Occupational Therapy―作業療法)の考えに則った介護が、個別性を尊重して行われるようになるだろう。これらは、ITを使用するが、ITが主役なのではなく、自律性を尊重することに基づく介護への移行によってなされる。
この様な傾向を持つ社会に対して、今までの教育や仕事が合わないようになるが、仕事を変えるための教育訓練は目標が無いために、何を目指すべきかがはっきりしない状態だ。例えば、看護技術や介護技術を向上させようとするときに、ただ、なんとなく研修を行うだけでは効果が薄い。目標が必要だ。目標を明確にするためには、「公的資格」が重要となる。現在ある職種別公的資格は、医師、看護師、介護福祉士、弁護士、会計士、税理士等々多数あるが、弁護士、会計士や税理士などのように、個別に仕事をする人たちは、日常的な仕事の中で、その能力は明らかになる。従って、弁護士1級、弁護士2級・・・のような弁護士内での等級は必要なさそうだ。しかし、これに対して、集団での仕事が大半で、そして技術が必要となる、看護師や介護福祉士は、一旦それぞれの資格を取ると個別の能力がよくわからない。ジョブ型の採用を現在行っているにも関わらず、どの程度のジョブ能力かが不明確なのである。
看護師と、介護福祉士についての階級的な資格制度は、諸外国にもよく見られる。諸外国に見習って、技術に加えて、コミュニケーション能力、社会性を表現することが出来るような資格制度を作るべきである。看護の分野ではこの能力資格が部分的に採用されている。いわゆる専門看護師である。看護協会は、専門看護師・認定看護師・認定看護管理者の認定を行っている。しかし、これらの資格は看護協会が認定するもので、公的資格となっていない。従って、専門看護師や認定看護師の給与が上がることは少ない。必要なものは、看護師1級、看護師2級・・・・看護師7級となるような、公的資格制度だ。それによって、給与が連動する仕組みが必要となる。さいわい、日本の医療は、大部分公的医療制度に基づいているので、診療報酬を看護師資格の上下によって変えることにより、資格を意識した給与が実現できる可能性が大きい。介護福祉士も同様であり、現在のような勤続年数によっての給与の上下は、組織間の移動を促進するものではなく、むしろ減少させるもので不適当である。介護福祉士の等級の場合、資格の段階は、当初少なくして、次第に増やしていくほうが良い。例えば、介護福祉士の段階は3段階程度に留め、それは経験年数ではなく、コミュニケーション能力をも含め、PT、OT等の技術、あるいは社会性など、単なる知識に留まらない方法が必要だ。この様な資格の段階をつけるためには、それ相応の費用が必要となる。全国で統一した資格になる場合は、年に1回か2回の資格試験(所属事業所の推薦も必要となるだろう)に対して、その研修が必須となり、それに関する講師も養成しなければならないし、資格を取得した後の更新手続きに関する費用も必要だ。ただし、これらの資格は国が全面に出て、公的資格とする必要がある。
今までのこれらの資格取得後の給与は、大部分が年功給であり、部分的に能力給が採用されているが、その基準は人当たりの良さや、仕事の手際良さが中心となり、知識や新しい技術の取得に関するものは欠けている(その結果、介護技術はこの20年間ほとんど進歩していない)。公的資格は、この様な事業所単位での個人の能力を測るだけでなく、公的な視点から、能力の判定を行うことが生じるので、個別の事業所に留まらず、幅広い適応が可能となる技術が求められる。その結果、よりよい看護や介護技術の向上が可能となるのではないか。
最初は、公的資格の基準に対して不公平が続出するが、このような混乱を経て、公的資格の重要性と重みが初めて明らかになるはずである。日本政府がこれらを行う能力があるかどうかが試される。
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