資本主義が、今までの市場と異なるのは、資本自体が意味を持つからだ。資本主義は、市場が昔から存在したように、古くから存在しているとも言われるが、市場での取引と資本主義は同じではない。市場取引では、りんご10個と、椅子を交換する。貨幣がある場合には、りんご10個を買うときに1000円を支払う。りんご10個と交換した椅子は、りんご10個の価値と同じとなり、りんご10個の価値が1000円なら、椅子の価値も同様に1000円である。これらを「使用価値」(人間の必要を満たす有用性)と言う。長い間、人間の歴史を通じて、経済は「使用価値」で動いていた。果物を収穫するのは、その美味しさが価値を持つからであり、職人が椅子を作ったのは、疲れた時に座るための価値を持つからである。
資本家は、このような「使用価値」の世界には存在せず、資本家にとって価値の意味は異なる。資本家は、果物や椅子の「使用価値」を一応は認めるだろうが、資本家がこれらを作ったり売買したりするのは、人間の必要性を満たすためでなく、また、売ったお金で他に使用すべきものを買うためでもない。目的は利益を生むためである。これを「交換価値」(ある種類の使用価値をもつ商品と、他の種類の使用価値をもつ商品との交換比率の世界)という。資本家の世界では、あらゆる物は使用することが目的でなく、利益を得る為のものだ。この場合、果物や椅子は物の「使用価値」でなく、「交換価値」を意味することになる。
ある人が、物を作り、自分の生活費を得ている場合、それを生活に使った後、多少の貯金が出来たとする。貯金が少しずつ溜まったとしても、その貯金を新たな事業に使わない限り、その人は「使用価値」で生きている。しかし、その利益を新たな店の投資に用い、さらに利益を得るようになると、それは資本主義と言えるのだ。このプロセスは拡大する。「交換価値」は蓄積されるのである。このように、利益を再投資するシステムが「資本主義」の本質である。従って、資本主義は増殖し成長を促す。そして、資本主義は地球上のあらゆるものを材料として、あるいは、エネルギーとして消費する。近年、地球の環境に負荷がかかって、温暖化あるいはその他の環境問題が起こるようになったのは、資本主義の再投資する性質から生まれたものが大部分である。
資本主義を続けながら、成長を止めることは難しい。第一に、人間は自分の生理的及び承認欲求があり、それを満たす必要があるからである。科学の進歩は、今まで「宿命」とされていた感染症や飢餓を克服する力の原動力となった。欲求に基礎を置く成長は文明に貢献した。そして第二は、成長は今や政治的な問題を解決するための手段ともなっているからだ。と言うのは、いろいろの人の要求を満たすためには、限られた予算の配分をしなければならないが、予算を削られて割を食う人たちの支持を失わないために、予算を削ることなく、必要なものに分配しなければならない。そうすると、予算は縮小することなく、拡大していくが、これには、成長が必須となる。成長があれば、ある部門の予算を削減することなく、必要なものに予算をつけることが出来るのだ。予算の削減を拒否するのは、民衆の力がついた為であるとも言えるが、反面では政治がポピュリズム(大衆迎合主義)に陥っているためでもある。
このような成長を必要とする資本主義社会で、日本はバブル崩壊以降、特異な地位を占めている。つまり、資本主義政策を続けながら成長のない状態に陥っているのである。この原因は大幅な人口減少だと思われるが、これに対して日本政府は、財政や金融政策を用いて、成長を促すべく努力をしている。その結果、膨大な債務を負う羽目になり、現在も引き続き債務の膨張が続いている。今や日本は、成長の縮小を認めるのか、あるいは、今まで通りの成長を目指すのかが問われている。資本主義を続け、同時に成長がない世界は、ある部門から他の部門へと、資金の再分配(移動)を必要とする。それは日本の経済構造を変えることでもある。はたして、成長をこれ以上望まず、不必要な予算を削り、予算の再分配や、税や社会保険料の考えを変えることが日本に出来るのだろうか? 今や後戻りの出来ない分岐点に差し掛かっている。
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