2023年の国民負担率は、46.7%に達すると言う。ちなみに、1975年(50年前)の国民負担率は25.7%だった。これを江戸時代になぞらえ、江戸初期の4公6民(国民負担40%)から、江戸幕府の財政悪化によって、5公5民(国民負担50%)になったことから、現代も江戸時代と同じように、5公5民である、つまり負担が多すぎると言う。しかし、当然ながら現代と江戸時代とでは、負担の内容には大きな違いがある。
ちなみに、国民負担率とは、税金と社会保障費の支払いを、国民所得(NI)で割ったものだ。下式のようである。国民負担率(%)=(租税負担+社会保障負担)÷ 国民所得(個人や企業の所得)となる。国民所得とは国内総生産(GDP)から、減価償却費を差し引き、間接税から補助金を引いたものである。ちなみに、2022年のGDPは560兆円、国民所得は410兆円である。
かつての民主党は2009年のマニフェストで、総予算を組み替えて16.8兆円の財源を生み出すとしたが、2011年度予算編成では事業仕分けで生み出した財源はわずかに約3000億円で、「埋蔵金」など7.2兆円の税外収入に頼らざるを得なかった。これらは本来別の用途にあてるべきものだった。
上図は、国民負担率(税と社会保険/国民所得)の国ごとの比較である。日本の国民負担率は、米国やオーストラリアより高いが、欧米諸国よりも低い。ちなみにルクセンブルグは多くの労働者が外国から通勤しているので、比較にならない(国民所得が低く出るため)。比較対象として、フランスやデンマークを取り上げると、60%台後半となる。それでは、なぜフランスやデンマークで国民負担率の不満が表面化しないのだろうか? 日本は負担に対する不満が高いせいで、政策のための増税が出来ない状態となっている。
上のグラフで見ると、予算の三分の一が社会保障費、つまり、集めた税金や保険料を再び国民に配分しているわけで、さらには、その他の予算も、国債費と地方交付税交付金などの政府が使えない資金が大きな割合を占めている。政府の使えるその他の費用(防衛費、教育費、公共事業費など)は予算全体の三分の一強に過ぎない。江戸時代の50%の租税のうち、住民に還元される資金はごくわずかであり、大部分は生産性の低い武士の生活費に当てられたのである。現在のように、社会保障や公共工事のように住民に還元されわけではなかった。
欧米の多くの国で、国民負担率が日本よりも高い割には、日本のマスメディアのように負担の拡大に反対しないのは、多くの予算が再び国民に還元されているとの前提に立っているからだ。日本政府が予算の使い道に自信があるのなら、その内容を説明し、負担を国民にお願いすべきだろう。しかし、現在の政府は、国民への負担の増加をひたすら回避しようとする姿勢が目立つ。防衛費にしろ、こども予算にしろ、国民に必要でその使い道に信念があれば、たとえ選挙の前でも、堂々と増税を主張すべきだろう。それをしないで(個々の議員は選挙での落選が怖いからだろうが)、予算の執行を先行させ、その財源をあまった財源や予備費からこっそり抽出し、あるいは、既存の費用を圧縮し(医療や介護、保育に関する予算など)、あげくは赤字国債の発行を目論み、増税の議論を先送りするのは、責任ある政府とは到底言えない。仮に、追加負担に国民が反対するなら、事業自体(防衛費の拡大、こども予算の増額)に反対すべきである。事業を容認し、負担に反対する国民は、お上のやることには逆らわない、江戸時代の感覚と変わっていないと言える。
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