特定技能制度は、外国人労働者の受け入れシステムとして問題の多かった、技能実習制度の代替として考えられた。制度的には次のような特徴がある。技能実習制度の持つ「建前と本音」の使い分け(「発展途上国への技術移転と安価な労働力確保」―もちろん前者が建前で後者が本音)を改めたことである。特定技能制度(SSWP)は、2019年4月に創設され、日本国内で人手不足が深刻とされている特定産業分野(14業種)において、即戦力となる外国人材の就労を可能とした在留資格である。在留資格「特定技能」には、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があり、1号は14業種、2号は2業種が指定された。「特定技能1号」は「・・・・技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」とされている。この技能レベルは基本的には試験によって承認されるが、それほど難しいものではない。「特定技能1号」の在留期間は、上限が「5年」となっており、期限が来ると別の在留資格へ変更しない限りは帰国しなければならない。「特定技能2号」は、「特定技能1号」を修了した後に移行することができる外国人向けの在留資格である。現在は「建設業」「造船・船舶工業」の2分野のみであり、合格者は10名のみである。「特定技能1号」では在留期間の上限が「5年」なのに対し、「特定技能2号」の場合は上限がない。また「特定技能2号」の場合は、要件を満たすことで家族帯同もできる。「特定技能2号」は、永住権の要件を満たせる可能性がある。事実上の移民となるだろう。
上図は、出入国管理庁が示した、制度開始からの特定技能制度の対象外国人である。官公庁の統計と同じように、年が元号で表記されているので、極めて間違いやすいが、2019年(平成31年、令和1年)4月から始まったこの制度は、2023年4月で4年となり、2024年4月には「特定技能1号」の、開始から5年間の期限が終了する。特定技能に関する外国人労働者はコロナ収束後急速に増加している。グラフ上、緑棒は、国内で技能実習制度から移った人たちであり、オレンジ棒は、特定技能での海外からの移動である。現状では技能実習制度からの移行が多いが、特定技能に関する外国人労働者の増加は月に7%増加という急速なものであり、年間の増加率は100%以上となる。
来年4月までの「特定技能1号」の期限を受けて、「建設」「造船・舶用工業」以外の9分野で、新たに「特定技能2号」が追加され、「特定技能2号」は合計11分野となった。なお介護は、介護福祉士試験を合格すれば、定住権を得られるので、「特定技能2号」の対象外である。問題は、どの程度の外国人労働者を事実上の移民である、「特定技能2号」に合格させるかである。資格試験を難しくしたり、あるいは、反対に永住を希望しない人が多くなると、このルートが閉ざされる。
人口減少が甚だしく、さらに、生産年齢人口の減少がそれ以上に強い日本で、外国人労働者が、いわゆる「バックドア」(不法移民)や「サイドドア」(想定外の資格)でなく、正規のドアから入ることが出来るかどうかが試される。橋本財団が行ったアンケートでは、どの政党も、日本にとって最も重要な、移民の問題に対して政策的に明確な意見はなく、あいまいな状態に終始している。なし崩し的にこのような重要な政策が決まるのでなく、マスメディア等で活発な議論を通して、日本がコスモポリタン的開放的国家になるのか、あるいは、ナショナリズムの強い閉鎖的な国家になるのかが試される。
研究助成 成果報告の記事を見る
小林 天音の記事を見る
秋谷 進の記事を見る
坂本 誠の記事を見る
Auroraの記事を見る
竹村 仁量の記事を見る
長谷井 嬢の記事を見る
Karki Shyam Kumar (カルキ シャム クマル)の記事を見る
小林 智子の記事を見る
Opinions編集部の記事を見る
渡口 将生の記事を見る
ゆきの記事を見る
馬場 拓郎の記事を見る
ジョワキンの記事を見る
Andi Holik Ramdani(アンディ ホリック ラムダニ)の記事を見る
Waode Hanifah Istiqomah(ワオデ ハニファー イスティコマー)の記事を見る
芦田 航大の記事を見る
岡﨑 広樹の記事を見る
カーン エムディ マムンの記事を見る
板垣 岳人の記事を見る
蘇 暁辰(Xiaochen Su)の記事を見る
斉藤 善久の記事を見る
阿部プッシェル 薫の記事を見る
黒部 麻子の記事を見る
田尻 潤子の記事を見る
シャイカ・サレム・アル・ダヘリの記事を見る
散木洞人の記事を見る
パク ミンジョンの記事を見る
澤田まりあ、山形萌花、山領珊南の記事を見る
藤田 定司の記事を見る
橘 里香サニヤの記事を見る
坂入 悦子の記事を見る
山下裕司の記事を見る
Niklas Holzapfel ホルツ アッペル ニクラスの記事を見る
Emre・Ekici エムレ・エキジの記事を見る
岡山県国際団体協議会の記事を見る
東條 光彦の記事を見る
田村 和夫の記事を見る
相川 真穂の記事を見る
松村 道郎の記事を見る
加藤 侑子の記事を見る
竹島 潤の記事を見る
五十嵐 直敬の記事を見る
橋本俊明・秋吉湖音の記事を見る
菊池 洋勝の記事を見る
江崎 康弘の記事を見る
秋吉 湖音の記事を見る
足立 伸也の記事を見る
安留 義孝の記事を見る
田村 拓の記事を見る
湯浅 典子の記事を見る
山下 誠矢の記事を見る
池尻 達紀の記事を見る
堂野 博之の記事を見る
金 明中の記事を見る
畑山 博の記事を見る
妹尾 昌俊の記事を見る
中元 啓太郎の記事を見る
井上 登紀子の記事を見る
松田 郁乃の記事を見る
アイシェ・ウルグン・ソゼン Ayse Ilgin Sozenの記事を見る
久川 春菜の記事を見る
森分 志学の記事を見る
三村 喜久雄の記事を見る
黒木 洋一郎の記事を見る
河津 泉の記事を見る
林 直樹の記事を見る
安藤希代子の記事を見る
佐野俊二の記事を見る
江田 加代子の記事を見る
阪井 ひとみ・永松千恵 の記事を見る
上野 千鶴子 の記事を見る
鷲見 学の記事を見る
藤原(旧姓:川上)智貴の記事を見る
正高信男の記事を見る
大坂巌の記事を見る
上田 諭の記事を見る
宮村孝博の記事を見る
松本芳也・淳子夫妻の記事を見る
中山 遼の記事を見る
多田羅竜平の記事を見る
多田伸志の記事を見る
中川和子の記事を見る
小田 陽彦の記事を見る
岩垣博己・堀井城一朗・矢野 平の記事を見る
田中 共子の記事を見る
石田篤史の記事を見る
松山幸弘の記事を見る
舟橋 弘晃の記事を見る
浅野 直の記事を見る
鍵本忠尚の記事を見る
北中淳子の記事を見る
片山英樹の記事を見る
松岡克朗の記事を見る
青木康嘉の記事を見る
岩垣博己・長谷川利路・中島正勝の記事を見る
水野文一郎の記事を見る
石原 達也の記事を見る
野村泰介の記事を見る
神林 龍の記事を見る
橋本 健二の記事を見る
林 伸旨の記事を見る
渡辺嗣郎(わたなべ しろう)の記事を見る
横井 篤文の記事を見る
ドクターXの記事を見る
藤井裕也の記事を見る
桜井 なおみの記事を見る
菅波 茂の記事を見る
五島 朋幸の記事を見る
髙田 浩一の記事を見る
かえる ちからの記事を見る
慎 泰俊の記事を見る
三好 祐也の記事を見る
板野 聡の記事を見る
目黒 道生の記事を見る
足立 誠司の記事を見る
池井戸 高志の記事を見る
池田 出水の記事を見る
松岡 順治の記事を見る
田中 紀章の記事を見る
齋藤 信也の記事を見る
橋本 俊明の記事を見る