啓蒙思想は18世紀に、フランスを中心としたヨーロッパに広まった思想である。啓蒙とは英語でEnlightenment、つまり、光をあてるという意味だ。17世紀からの近代科学の知見を得て、それまでのキリスト教的、不合理な思想から「合理性」を持った考えに変えるべきだと主張する思想である。つまり古い思想に「光をあてる」と言うものだ。最近著された、ジョセフ・ヒースの「啓蒙思想2.0」は、最近の非合理主義的(反理性主義的)考え(トランプをはじめとしたポピュリズム)に対するアンチテーゼとして、啓蒙思想の考えに再び「光をあてよう」というものである。
人間の認知形式には2種類あることが知られている。ノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者であるダニエル・カーネマンが、この理論を発展させた。
※ヒューリスティック;必ずしも正しい答えではないが、経験や先入観によって直感的に、ある程度正解に近い答えを得ることができる思考法。「経験則」と同義である。
人間の認知方式には、直感的に感じる「システム1」と分析的な「システム2」があるという。「システム1」は直感的、経験的な認知方式であり、「システム2」は分析的、合理的な認識方法だ。非合理主義的(反理性主義的)考えは、「システム1」を刺激するものだし、啓蒙主義は「システム2」を活動させたものだ。動物に「システム1」は存在するが(脳の大きさによって範囲は異なるが)、「システム2」の大部分は人間にしかない、きわめて人間的な部分である。人種的偏見、外国人に対する不信感、あるいは、LGBTの人たちに対する嫌悪感などは、「異種恐怖(xenophobia)」として、おそらく生物的に「システム1」の認知により、本能的に備わったものだろう。しかし、人間は「システム2」の能力を磨き、他人を思いやる心をもとに「人権」という概念を発達させ、自分とは違う人達を思想信条は異なっても、対話によって受け入れる知恵を発達させたのだ。
理念を大切にする「啓蒙思想」は、大切に育てないと、本能的に共感を得る「システム1」によって乗っ取られる危険が大きい。それを防ぐ原動力は、教育である。戦後からの日本の教育は、企業の求めに応じ、仕事を行うための「職業準備教育」の色彩が強い。つまり、企業のための技能教育だったのだ。しかし、技能は何時でも(何歳になっても)教えることはできるが、対話能力、交渉能力は、人間が本来持つ「システム1」方式の認知形式に対して、「システム2」が持つ、合理的、理念的な考え方を育てるものとして、幼いときから身につけさせなければならない。「システム2」の能力は、自然には身につかない。何もしなければ、人間はホッブスの唱える「万人の万人に対する闘争」→「リバイアサン」の誕生に至るのは、歴史上何度も起こった事実である。
現代の非合理主義的(反理性主義的)な動き、あるいは、ポピュリズムを蔓延らせないためには、もう一度教育を根本的に見直す必要がある。もし、非合理主義的(反理性主義的)あるいはポピュリズム的考えが一般的になったときには、政治は悲惨な状態に陥り、国家は統一的秩序が失われるかもしれないのだ。
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