生産年齢人口(15才から65才までの人口)が、毎年50万人から100万人減少する日本にとって、移民(外国人労働者)を導入するか否か、あるいはどの程度導入するかは、今後の日本の行く末にとって最も大きな問題だ。現在、外国人は出入国管理庁の集計で、2022年6月時点で2,961,969人であり、人口の2.35%を占めている。今後の労働人口(生産年齢人口)の減少を考えると、減少を補うために年間50万人程度の外国人労働者を受け入れる必要があると思われるが、そうすると10年後には、外国人比率は現在の2%強から6%以上になる。そこで、受け入れることが必須であるとの前提で、日本社会を移民にとってよりよい状態にするために、どうすればよいのか考えてみると、つぎの3つの条件が必要となる。
① 移民政策は計画的に行う
② 移民に対して国内労働者と同様(同一労働同一賃金)の労働条件を確保する
③ 移民に対する社会福祉政策は日本人と同じようにする
第一に、移民政策は場当たり的でなく、計画的に行う必要があることだ。日本政府は、2018年の安倍内閣で「国民の人口に比して一定程度の規模の外国人や家族を期限を設けず受け入れることで、国家を維持する政策をとることは考えていない」、つまり、移民政策は考えないとの立場を表明している。これが大きな問題だ。「考えていない」のでは、大きな混乱が生じる。考えなければならないのだ。安倍内閣のこの時期でも実質的には140万人程度の外国人労働者を受け入れているが、これらの外国人労働者は移民ではないと言い張っている。その結果、移民政策が立てられないのだ。まず、この立場を変更することが必要だ。そのうえで、今後の人口減少に対して、どの程度の移民を、どの様な方法で受け入れるのかを考える必要がある。
第二に、移民労働者に対して、国内労働者と同じ労働条件を与える必要があることだ。移民労働者は「賃金が安いので」受け入れるという間違った認識を持っている経営者が非常に多い。確かに過去には世界中で移民はこのように扱われた。しかし、現在ではこの認識を変えなければならない。さらには、もともと賃金が低い日本で、さらに賃金を値切ったのでは、誰が日本で働こうという気になるのだろうか? サービス業では、日本語の習得が必要となるため、おそらく日本人労働者よりも費用は更にかかるだろう。それでも、移民を受け入れるかどうかの選択をせざるを得なくなる。さらには、移民に賃金の交渉権を持たせるために、労働組合への加入、団体交渉権の付与を行う必要がある。
第三に、移民に対する社会福祉政策は日本人と同じでなければならない。つまり、医療保険、雇用保険(失業保険)、生活保護などのセイフティネットは日本人と同じように提供しなければならない。この政策は、一方的に与えるのではなく、保険料や税を支払った移民が、その代償として福祉を受ける当然の権利を持つことを意味している。以上の基準を持って移民の受け入れを宣言すべきである。この条件を満たせば、移民に対する対処は他国よりも先を行っている。
このような基準があって初めて、移民政策が単なる搾取ではないと判断できる。この基準が満たせない企業は、移民を採用しないほうが良いだろう。その意味で、従来の技能実習制度は、いわゆる「ゲストワーカー制度」と同じと考えられるので早期に廃止すべきだ。「ゲストワーカー制度」とは、外国で働くための条件として、労働者を単一の雇用主に縛り付ける制度であり、雇用主の虐待や低賃金に対しても、仕事を辞める権利を認めない制度である。日本での技能実習制度で、まさしくこのような事例が見られる。
欧米の移民に対する考えも、進歩的であるとはいえない。いまだに、移民には自国労働者がやりたがらない仕事を与えるべきと考えている人が多い。しかし、このような考えが、二重の労働階層を生み、移民問題を難しくして、ポピュリストに付け入る余地を与える。日本のように、人口減少が著しく、移民に依存しなければ国自体が持たない状態になっていては、今までの世界の移民政策より先を行かなければならない。遅れてきた日本には、既存の移民がまだ少ないので、移民政策を最も進んだものに作り変えることが出来る可能性がある。移民が自国の労働者と「全く同じ」権利や義務を持つと考えなければ、日本が移民によって、現在の状態を保つか、あるいは、今以上の繁栄をもたらす可能性はないだろう。
移民による問題は、犯罪や風紀の乱れでなく、国内労働者との競合が起こることにある。その点で、欧米と異なり、移民労働者と国内労働者の競合は、労働者の絶対数が足りない日本では起こる可能性が少ない。従って、最先端の移民政策と福祉政策を矛盾なく行い、なおかつ、色々の民族が「共生」出来る可能性も高いのだ。
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