コロナ禍で顕在化した生理の貧困。経済的困難に陥った女性が生理用品を買えないという問題がたくさんメディアに取り上げられてきました。生理のことを話せる雰囲気が以前より広がってはいるものの、「貧困」という言葉が持つイメージが、多くの人の誤解を招いている現実があります。
私たち生理革命委員会は岡山後楽館高校の授業・総合的な探究の時間の中で、2022年の2月頃から生理の貧困をテーマとし、3人で探究活動をしてきました。グループ決めの際に、関心があるジャンルごとの教室に分けられ、私たちがいたのはジェンダーの教室でした。たまたま3人で話していたときに山領が、「私、トイレにナプキン置くのやりたいんよ」とポロっと言い、それに山形と澤田で「それいいじゃん!」と乗っかるようにテーマが決まりました。
生理の貧困に取り組んでいる団体は日本にも世界にもたくさんあります。でもその中でも、私たちにしかない独自性があると考えています。それはイメージカラーとしてポスターやインスタグラムにも使っているオレンジ色にあります。
ネットで生理の貧困を検索し、画像一覧を見てみると、ほとんどがピンク色や赤色です。もちろん生理は女性のものという考え方が一般的で、間違いではありません。しかしピンクや赤が女性専用の色と決まっているわけではなくても、ピンクのチラシやグッズを手にすることに抵抗感を感じる男性がいないとも言い切れません。
体は女性であっても心は違う。トランスジェンダーやノンバイナリーの人々の生理を考えます。生理の貧困を女性の問題として全面に押し出すことで、本当は困っているのにアクセスしにくくなってしまうかもしれません。支援が必要な人全員に届くように、また、生理がない人も抵抗感なくのぞけるように。一人ひとりの生理についての条件を一切問わず、アクセスしやすい色を使うことが必須条件でした。
さて、ここで改めて、生理の貧困の定義についてですが、一般的には「生理に関する衛生的な手段や教育が十分に行き届いていない状態」とされています。ただ単に生理用品がないことだけではなく、なんとなく話しにくいタブーな雰囲気、教育現場での不十分な性教育も生理の貧困であると言えます。
この定義をもとに、私たちはまず、私たちの学校・岡山後楽館高校の中に、実際に生理の貧困の状態があるのではないかと仮定し、1年生から3年生にアンケートを取り、合計333人から回答を得ることができました。私たちが実際に用意したアンケート用紙です。生理を経験したことがない人用のアンケートを回答してくれた生徒の中には、まだ生理がきていなくてこれから経験する人も含まれている可能性が十分にあります。
生理を経験したことがない人が持っている生理のイメージや、生理についての理解度、関心などもアンケートによって知ることができました。たとえば、1番経血が多い日でも、1日に使う生理用ナプキンは1枚で済むと思っていたり、使い終わったナプキンはトイレに流せると思っているひともいました。
そして、1つ驚いたものがあります。グラフは全て3学年の合計から平均を出したものですが、これだけは学年別に見ると明らかな差がわかります。1年生に注目してください。
「学校の保健室ではナプキンをもらうことができますが知っていましたか?」の問いに対して、「知らなかった」と答えた生徒が3割を超えています。つまり、入学時に、学校側が新入生全員に保健室ではナプキンをもらえるという事を伝えなければ、4月に入学して10月末になっても、その情報を得られているのはたったの7割にも届かないのです。
このように、岡山後楽館高校内でのアンケート結果から、校内にはたしかに生理の貧困の問題があると確認できました。実際に生理用品が必要なときに得られていない、かつ、生理用品をもらえるという情報にアクセスできていないということです。
そこで私たちは、トイレの個室にトイレットペーパーのように生理用ナプキンが常備されていたら、質問1から6のように、生理になって生理用品が必要になったときに手元にないという状況を改善できるのではないかと考えました。この仮説を証明するために、実際に校内のトイレにナプキンを置いてみる実験をしました。
岡山後楽館は中高一貫校ですが高等部のホームルームがあるのは5階から7階なので、高等部の3フロアで実証実験をすることにしました。各階の女子トイレには個室が5つずつあります。各個室に5枚ずつナプキンが入った箱を置き、「ご自由にお使いください」と書きました。そして、放課後に箱に残っているナプキンの数を記録し、毎日各個室5枚ずつになるように補充しました。
期間は2022年11月1日から30日の1ヶ月間とし、正確には土日などを抜いて合計で20日間の記録をとることができました。
そして、10月の1ヶ月間に保健室に生徒がもらいにきたナプキンの数を保健室の先生に記録していただき、今回の実証実験の数と比較しました。10月に保健室で提供したナプキンは合計20枚だったそうです。一方、11月に私たちが実証実験用に準備した個室トイレのナプキンの使用は506枚と、約25倍の結果となりました。
また、実証実験が終わった後にもアンケートを実施し、実際に個室トイレにナプキンが置いてあるのはどうだったかなどを尋ねました。今回は、Classiという生徒全員が入れているアプリでGoogleフォームのアンケートを配信しました。回答率は下がり合計113人となりましたが、その結果がこちらです。
やはり、保健室にナプキンがあるとは言っても、6階、7階から1階に下りる間に服に血が付いてしまうかもしれないし、休み時間も限られている中ではなかなか取りに行くよりも、他のことを優先してしまう。もしくは保健室でもらえることさえも知らない、という状況が分かりました。
このように後楽館高校内に生理の貧困があったように、その他の岡山県や日本中の高校でも同じような状況があることは確かな事実です。しかしそれと同じように、個室トイレにナプキンを置くことでその状況を改善できることも確かです。
私たちの目の前の目標は、学校などの公共施設の個室トイレに、トイレットペーパーと同じように生理用品が設置されることです。まずは1年間、岡山県内の公立高校の女子トイレの個室に生理用ナプキンを設置することを目指して、署名とクラウドファンディングを始めました。
しかし!個室トイレに生理用品を設置することははじめの一歩にすぎません。このことをきっかけに生理のことをもっとオープンに語り合える雰囲気を作る必要があります。自分の生理周期を管理したり、自分の体質に合った生理用品を選んだりするための学びも必要になってきます。そこから生理の尊厳が認められ、いのちが生まれるという奇跡にたくさんのひとが気づくことがゴールです。
生理革命を起こします!!
最後に、実証実験のためにナプキンを仕入れる方法を悩んでいたところ、さんかくナビさんが力を貸してくださいました。さんかくナビさんは、後楽館の食堂で放課後ユースカフェというのを開いてくださっていて、その際にナプキンを持ち帰り用に置いてくださったり、保健室にもナプキンを寄付してくださったりしています。ユースカフェがあった日に思い切って貝原理事長に相談してみたところ、快く実証実験のために特別にナプキンを寄付すると言ってくださいました。さんかくナビさんの協力なしには実験を始められなかった可能性もあるので、本当に感謝してもしきれません。ありがとうございました。
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