最近の日本においては、正規社員と非正規社員との区別(差別)が問題となっている。正規社員は「無期雇用」であり、非正規社員は「有期雇用」である以上に、正規社員は週40時間のフルタイム労働を行い、定期昇給があり、転勤を受け入れ、会社の重要な部分を任され、ともすれば過剰労働になる人達を指している。非正規社員は、週30時間あるいは20時間程度の短時間勤務が多く、定期昇給は少ないが、その代わりに転勤はなく、仕事は補助的なもので、会社の重要な部分は任されないとされる。給与の支払いでは、正規社員は月給制あるいは年俸制であり、非正規社員は時給制が多い。
この30年間の日本の給与水準を引き下げている要因の一つに、労働需要が多くなると、非正規労働者(有期雇用、短時間労働)を雇用する傾向が強くなっていることがある。図のように、非正規労働者の労働者全体に占める割合は年々上昇し38%に達している。非正規労働者は一般に正規労働者よりも時間あたりの給与が低く、不当な待遇を受けやすい。その差は他の先進国よりも日本において顕著である。
(どの国も、一般労働者よりも賃金は低いが、特に日本は差が著しい。一般労働者に対して50%から60%程度の賃金だ。-小前和智による)
そこで、「同一労働同一賃金」の原則が登場する。この考えは、同じ価値(種類)の労働を行えば、賃金は同じにしなければならないというものだ。至極尤ものように見えるがそうとも言えない。日本の慣習は、長い期間同じ企業に勤めれば、年功給の仕組みによって、転職を繰り返す人よりも給与が高くなり、同じ会社で同じ技術があっても年齢の差によって給与は違う(若者は会社への忠誠心を教えられ、忠誠心を身に付けると昇進することも多い)。また、男女の差によっても、雇用形態の差(有期雇用か無期雇用か)によっても、一定時間の給与には差があることが「当然」だと思われていた。
「同一労働同一賃金」の原則は、これら日本の慣習に反対し、同じ労働をすれば、同じ給与を支払うべきであると定めたものである。そのためのガイドラインもある。この原則は正規雇用の人も、非正規雇用の人も「時間給」に換算すれば明瞭となる。例えば、年俸500万円の人(労働時間は平均的に年間2000時間)は、時間給に換算すると、2500円になる。年俸制でなくても、月給30万円で賞与5ヶ月の場合、360万円+30万円×5=510万円でほぼ同じようになる。一方で、非正規雇用者は同じ労働をしても時給1000円あるいは1500円程度が多い。この差は歴然としている。この差をなくすには、企業に正規雇用者と非正規雇用者との時間給を出させ、その違いが労働の種類あるいは質の差異によるものであることを「企業側」に証明させる必要がある。非正規労働者は自由に給与の差異を訴えることができることを前提とし、給与に差異があるのなら、企業側が労働の種類や質に差があることを証明しなければならない。
非正規雇用を正規雇用に「格上げ」すべきだとの議論もある。しかし、それはまったく見当違いだ。非正規労働と正規労働との格差を解消する方法として「パートタイム・有期雇用労働法」が出来たのだから、同じ内容、同じ質なら、時間あたりの賃金を非正規労働、正規労働どちらも同じようにすべきだ。「会社」という組織に拘束されず、一定時間のみ働きたい人も多いはずなので、非正規社員を正規社員に「格上げ」し、一律に週40時間労働を強いることはない。その代償は、会社への忠誠心、転属、転勤なども求められる。転属や転勤がないので、給与が正規社員よりも低いという考えは、そもそも発想が逆になっている。会社が転属や転勤を強要し、正規社員はそれを無条件で受け入れなければならないという慣習がおかしいと考えるべきだろう。経営側としても、すべての人が週に40時間の労働をする前提でなく、必要な労働を部分的に埋めるような勤務形態のほうが好ましいはずだ。それには、会社側の仕事に対する細かい分析が必要となる。
従って、勤務時間の多少の部分は、労働者側の都合と、会社側の効率的な仕事分析によって決定されるべきだ。ただし、その場合の給与が、正規労働者は時間あたり2500円であり、非正規労働者が1000円から1500円であるこの格差を是正すべきなのだ。行政は法律に則り、基本給以外の手当、賞与の有無、その他労働条件の違いなどの周辺的手当でなく、時間あたりの賃金格差を調査して、是正するように企業に対して働きかけるべきである。それが「同一労働同一賃金」の原則となる。
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