現代は情報に溢れているが、そのまま鵜呑みにすると、情報は政府や政府機関、あるいは独裁者が、思いのままに、国民をコントロールする道具となる。フェイクニュースとまでいかなくても、世の中には偏見に満ちた情報にあふれている。われわれはどのように情報を区別していけばよいのか?
情報には「実存的情報」と「観客的情報」がある。そして、情報を受け取る脳には、前もって蓄えられた考え(偏見とも言える)がある。この関係をまずしっかりと認識しよう。
「実存的情報」とは、自分の生活に直接関連がある情報で、自分が観察し、直接見聞きするものである。食事を摂ること、眠ること、運動すること、仕事をすることなどは、自分が体験し、その状態を直接観察できる。それゆえ、日常生活において、情報が正しいかどうか、あるいは、自分がその情報をどの程度信用すればよいかなどを、自分自身で判断することが出来る。時には、間違う場合もあるが(自分の考えに偏見が混じっている場合)、間違っても自分自身で責任も引き受けることが出来る情報だ。従って、「実存的情報」から引き起こされる行動は、他者に左右されることが少ない。例えば、自分の知っている人間が、ニュースなどで非難されている場合でも、その人の人となりや、過去の態度をよく知っていれば、報道されている人物像とは違ったイメージを持つことが出来る。ただし、この様な「実存的情報」も、その現象自体は正しい情報となるが、個人の「思い込み・偏見」が加わると情報が歪んでくる。例えば、過去に外国人から被害を受けた人は、「〇〇国人は信用できない」と考える場合もあることに注意。
これに対して「観客的情報」とは、自分の生活と遠い分野の情報で、真偽の程は自分自身では確かめられない。他人から受ける情報に頼っている場合だ。例えば、テレビで報道される高齢者の自動車事故は、多くの人にとっては「観客的情報」である。つまり、高齢者でない人や、車を頻繁に利用しない人にとっては、自分の生活とはとりあえず全く関係のない情報である。同様に外交問題についての情報は「観客的情報」の代表格である。これは贔屓の芸能人と同じようなものであり、近隣アジアの状況でも、それより遠い中東や欧州、あるいはアメリカの状況は自分で確かめようがない。
テレビでは、視聴率が重要であり、それによってもたらされるのは「観客的情報」のみである。仕事をやめたり、何らかの理由で引きこもっているなど、実社会との交流が浅ければ、なおさら多くの「観客的情報」が優位となる。一般に外国は自国にとって敵対的な位置づけを持たされる場合が多いが(そのほうが政権の人気が出る)、国によってその違いは大きい。例えば、北朝鮮・中国等は常に敵対的国の代表格であり、韓国も最近その仲間に入ったかもしれない。これに対してアメリカや西欧諸国は敵対的とは言えない。これらは個人の主観的感情の上に立っている。これらの情報はすべて「非実存的」であるために、確かめようがない。他者の情報に頼るしかないのだ。この様な「観客的情報」は権力側が操作することが出来る。このように考えると「実存的情報」ではなく「観客的情報」が注意すべき対象となる。従って「観客的情報」ははじめから疑ってかかることが大切だ。情報としては受け取るが、本当かどうかわからないと、考えるべきである。不確かな情報によって、近い人との意見が割れるのも不適当である。
情報に限らず、この様な実存的関係と観客的関係をハイデッガーは次のように述べている。それは「手許にあるもの=道具的」存在と、単に「眺めやる」存在の違いである。例えば、「ハンマー」を例にしてハイデッガーは以下のように述べる。「ハンマー」はその人にとっては、釘を打ち付けたり、物を叩いたりする用途を持っている。「ハンマー」に精通しているのだ。従って、「ハンマー」など、そうした存在様式をハイデッガーは「手許にあること-道具的存在性」と名づけるのだが、これは「眺めやる」だけでは存在の内容を決めることが出来ない。従って、ハンマーは「実存的存在」となるが、テレビで報道される問題は、手元にないので、「眺めやる存在」にしかならない。
事故・犯罪や外交などの観客的情報の場合、警察や外務省などは、色々の問題が「手元にある」存在であるのに対して、一般の国民はそれらの問題が「眺めやる」存在に過ぎないのだ。「眺めやる」存在は、「観客的情報」なので、感情的にならず、情報はあまり信用しないで、一観客として楽しんで見ていればよいのではないか。確実性が高い「実存的情報」をもとにして生きて行くためには、身近な問題に参加する事が必要だ。具体的には地域の問題に関与すべきだろう。それによって真の地方自治が生まれるのだ。
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