外国人受け入れは多様性を認めること

コロナが落ち着くと、以前にまして外国人人材が日本に必要となるし、流入が加速する。2019年からの「特定技能」制度では、今までの「技能実習」制度に代わり、実質的に期間限定でなく、移民と同様に、日本で「生活」する外国人人材を受け入れることになった。ところで、外国人人材の受け入れを考えるさいに、①今後の外国人人材の受け入れに関する議論と、②すでに日本で就労している人たちに関する議論、とに分ける必要がある。保守主義的勢力は、そもそも外国人人材の受け入れ自体に対して消極的であり、労働者不足は認めるにしても、短期間の滞在を原則として、早々に本国へ帰ってほしい。日本の文化を乱すような要因を排除したいと思っている。つまり、外国人の生活に関するもろもろの権利(選挙権を含め)は排除すべきであると思っている。これに対して、社会民主主義的な勢力は、②すでに日本で就労している外国人については、その権利拡張、生活上の相談は積極的に受けるべきであると考えているが、①外国人の受け入れについては保守主義者と同じ様に消極的だ。

まとめて言えば、保守革新双方とも、外国人人材の日本への導入については、「消極的」であり、それに伴って発生する、多様性の問題、つまり多数の外国人と日本人とが混合して、新しい社会を作ることに対して及び腰なのである。勇気がないのだ。「多様性の尊重」というが、その核心は、小さな違いでなく、人種、民族、宗教などの異なる人たちがいかにして、共同して社会を作り上げるかなのである。日本のように、これらの土壌がない社会では、必然的に「多様性」が育まれないことになる。

現在の日本での外国人数は283万人程度、つまり人口の2%なのである。人口の2%程度だと、集積の偏りがあるために、外国人との接触がまったくない地域もある。現代の日本でどの様な意味においても「多様性」があるとはとても言えない。それに対して、外国人が10%の社会を想像してみると多様性の視点がよく分かる。生活習慣の異なる人が多くいる場合、それまでの慣習が無効になる。従って、「言語」でのコミュニケーションが必要となるのだ。日本において、人口の10%といえば、1200万人だ。現在の5倍程度となる。それは、日本の慣習、常識を変える可能性を持っている。

ただし、現在の日本の慣習を変えたくないと思う人が多ければ、政府の政策も外国人の導入とは変わってくる。政府は国民の意向に非常に敏感になっている。政府がどのように政策を行うか、保守・革新に関わらず、その方向を決めるのは、我々国民なのである。

公益財団法人橋本財団 理事長、医学博士橋本 俊明
1973年岡山大学医学部卒業。公益財団法人橋本財団 理事長。社会福祉法人敬友会 理事長。特定医療法人自由会 理事長。専門は、高齢者の住まい、高齢者ケア、老年医療問題など。その他、独自の視点で幅広く社会問題を探る。
1973年岡山大学医学部卒業。公益財団法人橋本財団 理事長。社会福祉法人敬友会 理事長。特定医療法人自由会 理事長。専門は、高齢者の住まい、高齢者ケア、老年医療問題など。その他、独自の視点で幅広く社会問題を探る。
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