新型コロナ・ヒステリーから脱却し心と社会の健康を

新型コロナ「オミクロン株改」が大流行している。令和4年8月25日時点の本邦の累計感染者数は1780万人を超え、人口の一割以上が感染し現在感染者は200万人超、これまでの「波」が小さく見える。前後して8/2に「かかりつけ医」の学会であるプライマリケア連合学会ほか4学会合同の市民向け緊急声明(実質的ガイドライン)が発出された。新型コロナの特性や軽症化傾向を踏まえた理性的で冷静な内容である。また筆者は厚生労働省が公開するオープンデータを解析し、重症化率、死亡率とも激減していると確認した。新型コロナ死亡者の大半は天寿と言うべき高齢者であり、「コロナヒステリー」からの脱却を考えるべきだ。

まずガイドラインの要点を紹介する。
「Q. 新型コロナウイルスにかかったかも?と思った時にどうすればよいのか?
A. 症状が軽い(飲んだり食べたりできる,呼吸が苦しくない,乳幼児で顔色が良い)場合は,65歳未満で基礎疾患や妊娠がなければ,あわてて検査や受診をする必要はありません~検査や薬のためにあわてて医療機関を受診することは避けてください」
そして「自然経過」として下記のように説明している。
「オミクロン株への曝露があってから平均3日で急性期症状(発熱・喉の痛み・鼻水・咳・全身のだるさ)が出現しますが,そのほとんどが2~4日で軽くなります.順調に経過すれば,“かぜ”と大きな違いはありません」

まさに「風邪」と分かる。

医療ひっ迫の真実

医療ひっ迫と喧伝されているが、コロナ病床使用率は全国平均で60%程度が最大であり、重症病床は昨夏の50%超が最大、現在は30%台である。問題は 1)大都市圏と沖縄に患者が多く地域差が発生している 2)看護職員不足や感染のため病床がフル稼働できない場合がある ことである。広域搬送が言われていたが、全国的なシステムが整備されたとは聞かない。数値的な余裕はあるが「医療の偏在」が発生し、一部受け入れ病院に過大な負荷がかかっている可能性は否めない。

報道によれば「脳卒中や心臓病等の重症者」が「コロナ感染していたのでコロナ病床に入院」する例が多い、つまり隔離のためコロナ病床を使うが、コロナの治療ではない。2類感染症相当つまり結核同様の扱いのため、生命の危機を脱しても退院基準上10日間はコロナ病床を占有する。統計上も自殺者でもコロナ感染していたら「コロナ死亡者」にカウントするという。一方で有識者会議の尾身氏の地域医療機能推進機構(JCHO)の病床利用率が低く、132億円もの補助金を「ぼったくり」との報道すらあった。いささかちぐはぐナンセンスな感がある。

もしインフルエンザ等なら個室隔離か大部屋に感染者を集め、ドアを閉めPPE(個人防護具)を使用する「だけ」である。専用病床ではないから必要に応じ移動でき病床はフル稼働できる。コロナを2類特別扱いしたために問題が生じている。

発熱外来は施設と人員が整備された一部医療機関に限られ、患者が集中的に殺到しパンクしている。無症状でも接触可能性があれば検査する、職場等が陰性証明を求める、そのため余計に検査希望者が増大し、パンクを助長している。

さらに発熱外来からあぶれた人のために、民間のPCR検査センターや市民が自ら抗原検査するセルフテストまで始まった。民間PCR検査は精度管理や誤判定の問題が度々報道され、抗原検査キットの感度(感染者を陽性と正しく判定できること)は50%程度とも言われる上に素人の検体採取と操作では精度が下がり、実は陽性なのに陰性と誤認するリスクが大きい。目先の不安と要求、根拠のない安心感のために、行政までポピュリズム的施策に溺れている。

統計・疫学的真実

近代看護の祖ナイチンゲール女史が統計学を駆使し医療改革したように、医療は科学的検証が重要である。筆者は新型コロナは「そこまで恐怖の伝染病なのか」厚生労働省のオープンデータを検証した。

グラフの通り、第1波から第4波までは陽性者数は2万人~32万人に対し死亡率は2.02%から1.74%と、死亡率の低下傾向が見て取れる。第5波は78万人、第6波は603万人と陽性者が急増したが、死亡率は0.39%、0.20%と激減している。これには1)ウイルスが弱毒化した=新型コロナの脅威は低下 2)検査数が増えスクリーニング効果発生という二つの見方がある。

検査数は2020年5月第一週で50,827件に対して、本年7月第五週は222万1967件と激増している。当初は症状があるか濃厚接触者に検査を限っていたが、今や無症状でも検査している。これは福島原発事故後の小児甲状腺がんの全数検査に近い状況と言える。福島では一時的な異常の増加が観察されたが、大規模検査したために無視できる軽微な異常を捉えてしまう「スクリーニング効果」で問題無いと結論づけられた。

もう一つの視点は「真の感染者数」、無症状者含む全市民の抗体保有率、つまり発症・無症状問わず「新型コロナウイルス感染履歴がある」かどうかである。昨冬の厚労省調査では自然感染後を示すN抗体保有率は、東京都2.80%、大阪府3.78%、宮城県 1.18%、愛知県1.58%、福岡県1.45%となっている。現時点での累計感染者数は1400万人、国民の1割ほどであるが、調査時点での累計感染者数は170万人ほどで複数回感染者も居るため妥当に見える(感染者170万人/総人口=1.36%)。

これらから考えると、新型コロナは当初ハイリスクな者を中心に検査していたため死亡率が「高く見えた」が、無症状者まで調べるようになり真の感染者数に対して「死亡率は高くなかった」ことが判明、スクリーニング効果により大流行に見えるが死ぬことはほとんど無い、と言える。

死亡者の真実と意味すること

3万人余の新型コロナ死亡者の年代別割合を見ると、90代以上が24.72%、80代が40.42%合わせて65.14%つまり「新型コロナ死亡者は大半が80代以上」、70代まで合わせれば86.77%である。現役世代は基礎疾患が無ければ「まず死なない」。2022/8/25時点の我が国の累計新型コロナ死亡率は0.21%、死亡者数は2年半で38,000人ほど、我が国死因の5位前後である肺炎の年間約12万人に比してはるかに少ない。

日本人の平均寿命は男81.64歳、女87.74歳、「自立生活できる」健康寿命は男72.68歳、女75.38歳である。新型コロナも肺炎で死亡するので、80代以上なら天寿と言える。一方近年は入浴中の死亡が年間1万人以上、高齢者の自殺は年間1万人以上と問題視されている。ならば「本当の生命の脅威」は、なんであろうか。

クラスターの一割でしかない飲食店や宿泊施設にソンタク自粛させ史上最大の倒産廃業を招き、女性若者の自殺者増が報告されている。休校は子供たちの心身を害している。天寿を全うする高齢者を一時盲目的延命するために、コロナに限り特別にそれらの犠牲を払うべきなのか? 死にゆく高齢者は末期(まつご)に家族に会えず触れられず袋詰めにされ骨になってから面会、それは人間の最後にふさわしい尊厳あるものなのか?


現役世代は感染のリスクを冒して病院や検査センターで検査させなくとも、3,4日休めば通常回復する。茅ヶ崎市や相模原市はそのために独自の傷病手当金制度を制定したが、国として制度整備すべきだ。インフルエンザより多少多い程度の死亡率なら、インフルエンザ同様に5類感染症扱いで良いし、それならかかりつけ医で対応できる。

新型コロナで死亡する高齢者は天寿と言える。健康人なら数日で回復する。それが科学的に明白になった以上、ヒステリックな施策と行動は止めるべきだ。


参考

新型コロナウイルス感染症プライマリケアのための情報サイト
https://www.pc-covid19.jp/
4学会連盟緊急声明(ガイドライン)
https://www.pc-covid19.jp/files/protocol/jyushin-4seimei.pdf
厚生労働省 データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-
https://covid19.mhlw.go.jp/extensions/public/index.html
脳卒中で搬送の男性、感染判明「これで満床です」…コロナ軽症でも重症病床逼迫の事態 : 読売新聞オンライン
https://www.yomiuri.co.jp/national/20220802-OYT1T50282/
コロナ病床30~50%に空き、尾身茂氏が理事長の公的病院 132億円の補助金「ぼったくり」
https://dot.asahi.com/dot/2021083100080.html
日本疫学会 新型コロナウイルス感染予防対策についてのQ&A
https://jeaweb.jp/covid/qa/index.html
家庭用コロナ抗原検査の感度は発症4日後がピーク
https://www.m3.com/clinical/open/journal/26406
厚生労働省 新型コロナウイルス抗原検査の有用性・注意点,活用方法について
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000858746.pdf
群馬 PCR検査で200人を陽性と誤判定 民間の検査会社が実施 |NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210808/k10013188251000.html
PCR検査16%が精度確認せず 自費、診療所で誤判定目立つ 共同通信
https://nordot.app/900549083319697408?c=39546741839462401
新型コロナウイルス感染症対策 内閣官房
https://corona.go.jp/emergency/
新型コロナワクチンの接種スケジュールについて 首相官邸
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/vaccine_supply.html
長引くコロナ禍、時系列で振り返る アベノマスクにGoTo、オミクロン株「BA・5」登場…第7波に突入 | 河北新報オンラインニュース
https://kahoku.news/articles/20210901khn000034.html
厚生労働省 第3回抗体保有調査 速報結果
https://www.mhlw.go.jp/content/000945066.pdf
「健康寿命」男女ともに前回調査より伸びる 厚労省公表
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000239003.html
新型インフルエンザに関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/02.html
「インフルエンザ死亡数」は何を意味する? 感染が死因でなくても…:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASPD37GG6PD3TIPE016.html
令和2年中における自殺の状況 厚生労働省・警察庁
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/R03/R02_jisatuno_joukyou.pdf
年間自殺者がはじめて2万人を下回る。しかし自殺者の約4割が高齢者…孤立を防ぐ対策が必要
https://job.minnanokaigo.com/news/kaigogaku/no800
交通事故死の約2倍?!冬の入浴中の事故に要注意!
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202111/1.html
高齢者入浴中の事故、熱中症8割超 ヒートショックは1割未満
https://www.iza.ne.jp/article/20190708-XF6UFG2CIRNNLOBWZ7ACFHAL2A/
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症により亡くなられた方及びその疑いがある方の処置、搬送、葬儀、火葬等に関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/000653447.pdf
茅ヶ崎市 新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の支給制度
https://www.city.chigasaki.kanagawa.jp/kokuminkenkohoken/1039111.html

新西横浜街の医療ケア研究室 保健師・看護師・元先端バイオ創薬ベンチャー取締役五十嵐 直敬
1995年北里大学看護学部卒。
北里大学東病院、内科クリニックを経て1999年横浜市内で訪問看護ステーション新設、所長。難病ケア、リハビリ、在宅ホスピスに携わり介護保険制度発足時に横浜市介護認定審査委員。2000年に遺伝子治療の可能性を探求し先端バイオ創薬ベンチャー取締役。
その後救急病院、訪問看護所長、介護施設長等を経て外来看護の傍ら2017年より新西横浜街の医療ケア研究室としてコンサル等活動。
1995年北里大学看護学部卒。
北里大学東病院、内科クリニックを経て1999年横浜市内で訪問看護ステーション新設、所長。難病ケア、リハビリ、在宅ホスピスに携わり介護保険制度発足時に横浜市介護認定審査委員。2000年に遺伝子治療の可能性を探求し先端バイオ創薬ベンチャー取締役。
その後救急病院、訪問看護所長、介護施設長等を経て外来看護の傍ら2017年より新西横浜街の医療ケア研究室としてコンサル等活動。
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